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ベトナムの15歳以上60歳未満の労働人口が全人口に占める割合は70%弱であり、若い人口が経済成長を牽引しています。労働者は常に良い労働環境を求めて就職活動を行っています。
国によって労働者と会社の権利・義務は様々に異なっています。その違いを知らなかったためにトラブルが起きたということが無いよう、事前に労働に関する法律をある程度は把握することが必要です。ベトナムに会社や駐在員事務所を設立し、外国人が赴任するにあたり必要な手続、また人材を採用するにあたって注意しなければならない点等、労務管理についてみていきましょう。



1 労働許可証の取得

ベトナムにある企業、組織で連続3ヶ月以上働く外国人は、原則として労働許可証を取得しなければなりません。労働許可証の期限は最長36ヶ月です。なお、一人有限会社の所有者である外国人、二人以上有限会社の出資者である外国人等は労働許可証の取得を免除されています。
申請者は、勤務開始日から少なくとも20日以上前に勤務先の管轄である労働傷病兵社会局に申請を行います。申請には、労働許可証申請書や履歴書等、規定フォームによる申請書以外に、以下の書類を準備する必要があります。
  1. 警察証明書(無犯罪証明書)
  2. 健康診断証明書
  3. 大学・大学院卒業証明書
  4. 証明写真
1. の警察証明は、ベトナム滞在が6ヶ月未満の場合、ベトナムの日本大使館あるいは日本総領事館で申請取得することができます。ただし申請してから取得するまでに1~2ヶ月かかりますので、早めに取得申請手続きを行ったほうがいいでしょう。なお、ベトナム滞在が6ヶ月以上の場合は、ベトナムの司法局から取得します。
2. の健康診断証明書は、ベトナムにある指定病院で労働許可証申請用の健康診断を受診し発行してもらいます。
また最終学歴が中学・高校卒業場合、5年以上同職種での勤務経験が必要となり、本社から、勤務経験を証明する文書を提出します。
全ての書類を準備し、その書類に不備が無い場合、申請後約1ヶ月で労働許可証を取得することができます。
更新手続は、労働許可証の期限の30日前であれば、更新用の申請書、労働許可書原本及び本社からの任命書を提出します。しかし、30日前を過ぎると更新手続ができず、新規申請として再び申請し直さなければなりません。書類をまた一から用意しなければならず時間もかかりますので注意が必要です。
なお、近年労働許可証を取得せず、不法に就労している外国人が増加しています。ベトナム当局も厳しく取り締まっており、最悪のケースでは強制退去もありえますので、就労する場合は、必ず労働許可証を取得しましょう。

2 スタッフの雇用

従来は、外国人への雇用規制があり、外国人の雇用は総従業員数の3%までしか認められていませんでした。しかし、2008年3月にこの規制は撤廃され、現在は雇用人数に規制はありません。
また、法人及び駐在員事務所ともにベトナム人雇用義務はありませんので、外国人のみで運営することも可能です。
スタッフの雇用に関し、試用期間を設けることができます。労働法第32条によると、高度な技術を持つ者(短期大学卒業以上の学歴レベル)に対しては最長60日間、技能を持つ者(専門学校卒業レベル)に対しては最長30日間、その他の者については6日間となっています。
試用期間の給与は、少なくとも正規雇用時の給与の70%でなければなりません。また試用期間中は、会社側、労働者側の双方とも、事前通告無しにいつでも契約解除をすることができます。

3 労働契約書

スタッフの雇用に伴い、雇用条件、給与、権利及び義務についての合意書である労働契約書を締結します。労働契約書には以下の3種類があります。
  1. 期限の定めの無い労働契約書
  2. 12ヶ月から36ヶ月までの期限を定めた労働契約書
  3. 季節労働または特定業務従事のため12ヶ月未満で期限を定めた労働契約書
ベトナムでの定年は、男性60歳、女性55歳となっています。従って①の労働契約書を締結した場合は定年となる歳までの契約となります。
内容は、契約期間、勤務時間、給与、勤務地等労働条件となります。以前は、労働契約書のフォームを労働局で購入しなければなりませんでしたが、現在は、フォームに沿ってワード等で作成するケースが殆どです。労働者側による署名、会社側による署名及び社判押印後、それぞれ一部ずつ保有します。
また、労働契約書はベトナム語でなければなりませんが、参考として日本語あるいは英語などベトナム語以外の外国語で作成することもできます。
 

4 労働契約の終了

労働法第36条によると、労働契約の終了は以下のケースで認められるとされています。

(1)通常の契約終了

  1. 契約期間の終了
  2. 契約に基づく業務の終了
  3. 当事者間の合意による終了
  4. 労働者に裁判所より懲役処分が下された、あるいは裁判所から業務の禁止宣告を受けた。
  5. 労働者の死亡あるいは裁判所から失踪宣告を受けた。
 この場合、契約終了について双方とも事前予告等する必要はありません。

(2)会社側からの契約の終了

  1. 労働者が、契約した業務を終了させることができない。
  2. 懲戒解雇
  3. 病気等により長期で休職した
  4. 天災等の不可抗力により事業を行うことができない
  5. 会社の閉鎖
会社側は、2. の懲戒解雇のケースを除き、事前に契約終了の旨を労働者に通知しなければなりません。期限の定めの無い労働契約の場合は45日前に、12ヶ月から36ヶ月の労働契約の場合は30日前、季節労働又は12ヶ月未満の労働契約の場合は3日前までに通知が必要です。

(3)労働者側からの契約の終了

  1. 労働契約書で合意された労働条件が満たされていない。
  2. 給与が未払い
  3. 病気等の時に労働を強制させられた。
  4. 労働者本人あるいは家族に何らかの困難が生じ業務の継続ができない。
  5. 労働者が選挙あるいは指名により国家の要職に就いた。
  6. 労働者が妊娠しており、医師の診断により業務の継続ができない。
  7. 病気等により長期で休職せざる得ない。
期限の定めの無い労働契約の場合、労働者側から契約を終了させる場合は、基本的には45日以内に会社側に通知しなければなりません。
12ヶ月から36ヶ月までの労働契約で、1 、2 、3 、7. の理由のために労働契約を終了させる場合は、会社側に少なくとも3日前までに、4. と5. の理由は30日前までに会社側に契約終了の旨を通知する必要があります。季節労働又は12ヶ月未満の労働契約の場合は、6. を除き3日前までに通知が必要です。
いずれの場合も6. を理由とする場合は、医師の指示に従います。

(4)懲戒解雇

労働者が以下の行為を行った場合、会社側は懲戒解雇をすることができます。 
  1. 企業内部情報を外部に漏洩させた、資産を窃盗した等会社に損害を与えた。
  2. 懲罰期間中に、再度同じ行為を行った。
  3. 1ヶ月に5回以上、又は年間で20日以上無断欠勤をした。
懲戒解雇を受けた場合、その労働者は退職金を受けることができません。

5 退職金

会社は、試用期間を含み1年以上勤務した労働者が退職をする場合、勤務年数1年につき0.5ヶ月の給与を、退職金として支払うことが定められています。会社都合により退職をする場合は、勤務年数1年につき1ヶ月分の給与を支払います。
一方で、2009年1月1日より失業保険制度が始まりました。10人以上を雇用する会社は、給与の1%を会社及び労働者それぞれが毎月負担し失業保険を支払います。
12ヶ月以上失業保険を支払った労働者が退職後、15日経過しても新しい職を得られない場合に、失業保険基金より失業手当を受給することができます。つまり、2008年末までのの勤務の対価への退職金は会社が負担し、2009年1月1日以降の勤務の対価は失業保険基金が支払う形となります。なお、失業保険基金からの失業手当は、自己都合あるいは会社都合で支払額に違いはありません。

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