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前回までは、特定の営業活動から発生する利益に係る税務上の取扱いについて、解説してきました。他の業界に係る税務上の取扱いを気にされることはあまりないかもしれませんが、香港税務局解釈実務指針(DIPN, Departmental Interpretation and Practice Notes)21号「利益の源泉地(Locality of Profits)」は、「その他の利益(Other Profits)」と題し、複数の項目に係る一般的な税務上の取扱いについて言及しており、その中には香港に長く居住されている方々にとって身近なものや興味を持って頂けるものがいくつかあるかと思います。ここでは「源泉主義(Territorial Source Principle of Taxation)」という概念が、如何に属地主義の範疇の中でも異色を放っているかを感じとって頂けるのではと考えています。


1. その他の利益に係る税務上の取扱い

香港税務局(IRD, Inland Revenue Department)が利益の源泉を決定するために、目下認識している一般原則がDIPN21号に明記されています。一つはHang Seng Bank及びHK-TVBI International Limitedの案件での判決、並びにING Baring Securities (Hong Kong) Limitedの案件で是認された「納税者が、問題となっている利益を稼得するために何をどこで行ったのか」という原則であり、もう一つのKwong Mile Services Limitedの案件より引用されている「先例や偶発的事象は利益の源泉地を確定しない」という原則で、それらによってさらに一つ一つの営業活動の事実関係を掴む必要があることが強調されました。その一方でDIPN21号では、ある一定の利益の税務上の取扱いについて、表1の通り基本的な解釈が要約されています。
その他の活動利益 税務上の取扱い
不動産賃貸収入 貸し出している不動産のある国・地域に利益の源泉
不動産売却益 売却した不動産のある国・地域に利益の源泉
上場株や証券の売却益 実際に取引されている証券取引所がある国・地域に利益の源泉(ただし、店頭株については売買契約が締結された国・地域に利益の源泉)
未上場株や証券の売却益 売買契約が締結された国・地域に利益の源泉があると推定(香港で事業活動している金融機関に利益がもたらされる場合、香港が利益の源泉地)
サービス収入※1 役務を提供した国・地域に利益の源泉
個人の貸付金利息収入 借り手に信用供与された国・地域に利益の源泉
ロイヤリティ ライセンスの取得地、承認地または使用権が行使される国・地域に利益の源泉
多国間にわたる輸送収入※2 原則として積載地に利益の源泉
※1サービス収入について、組織及び業務が香港のみに存在する投資アドバイザーの場合、クライアントの資金管理から発生する利益は、香港に源泉があるとされます。資金管理手数料だけではなく、運用成果報酬はもちろん、ブローカーからのリベート、コミッション及び割引料も上述した利益に含まれます。ブローカーがクライアントのために金融取引を行う場所はどこであろうと関係ありません。

※2多国間にわたる輸送収入について、租税協定等では特別な取扱いとなっており、例えば、中国香港二重課税防止協定より、香港の航空会社によって稼得された利益は、原則香港のみで課税されます(ただし、中国本土内の恒久的施設(PE、Permanent Establishment)を通じて行った多国間にわたる輸送業務以外の収入や中国本土内だけでの輸送収入は除く)。この他、香港税務条例(IRO, Inland Revenue Ordinances)第23B条の下、香港で免税となる「関連利益(Relevant Sums)」等の考え方がありますが、ここでは詳細については省略します。

2. 販売または購買コミッション収入に係る税務上の取扱い

通常コミッション収入は、商品の請求書価格のある一定の歩合によって決定されます。香港税務局は、コミッション収入を創出する活動は、依頼人とその顧客との間で取引される商品やビジネスの手配であるとしており、その収入の源泉は、依頼人より委任を受けた代理人の営業活動(手配)が遂行される場所にあるとしています(図1参照)。

上述した依頼人と顧客がどこにいるか、代理人が彼らをどのように認識しているか、及びコミッション収入の稼得の前後に遂行された付随的な活動かどうかについて、一般的にその収入の源泉に関連しないとされていますが、特に所得税が発生しない、または税率が非常に低い国や地域に設立されている海外法人のために、代理人によって香港で相当な営業活動が遂行された場合、香港税務局は該当する案件を厳格に調査し、香港税務条例第14条の下、依頼人とその顧客に納税義務があるかどうかを判断します。

コミッション収入は、あるビジネスが香港で実行されることから発生する可能性がありますが、そのコミッション収入を創出する営業活動が香港域外で実施された場合、税務上非課税として取り扱われます。


余談ですが、株式ブローカーが携わる営業活動に係る利益の源泉ついては、利益を創出した取引が、香港の納税者(依頼者)自身またはその法定代理人によって行使されたことを法的に立証する必要はなく、納税者の指示の下、納税者のためにある代理人(法定代理人かどうかは要件ではない)によって行使されていれば、香港税務局の査定対象となり得るに十分とされています。

しかしながら、現在香港域外で取引を行使した場合、あらゆる代理人の活動が直ちに香港の納税者によるものと判断されるわけではありません。ING Baring Securities (Hong Kong) Limitedの案件では、海外市場で株式取引を完遂することに係る役務提供やコミッション収入に言及しており、それらについては、ある法人のあるグループのある一員の利益の源泉が、他の一員の活動に起因する場合があるとした「商品化(Commercial Reality)」の概念(前段落参照)は退けられています。

3. グループ間サービス収入に係る税務上の取扱い

グループ間サービスとは、通常多国籍企業グループの一員である香港法人が、アジア太平洋地域に拠点を構えているグループ内企業に、マーケティングやトレーニング等の支援活動を行うことです。ここではそのような役務提供が実質香港にて行われているとします。グループ間の手数料は、合意された原価の利幅(5~10%が一般的)で設定され、香港法人が使用した経費の100%を加えた、提供された役務の独立企業間価格を表しています。

上述に係る利益は、香港法人が香港にて役務提供したことによるものであり、香港税務局の100%査定対象となりますが、役務提供を受けるグループ内企業が、ある国や地域の居住者で、その国や地域で受ける手数料の源泉課税を反映し、手数料にグロスアップする(源泉課税分を組込む)場合があります。このような場合、香港税務局は、香港法人が支払った外国での源泉課税を、請求した手数料から差引くことを認めています。すなわち、香港税務局は、結果としてネット(源泉課税分を差引いた)金額を査定対象とすることとなります。

連載4回に分けて香港の税務について解説してきましたが、如何でしたでしょうか。一見シンプルだと思われている香港の税務ですが、解釈については、これまで見てきた通り大変細かく規定されており、判断を誤ると税務リスクが発生する可能性があることを感じて頂けたと思います。繰り返しとなりますが、ウェブサイトで公開されている情報等をそのまま鵜呑みにせず、専門家への相談は必須であることは是非ご留意頂ければと思います。とはいえ香港の低税率や税務上認識される益金と損金の仕組みを考慮すると、やはり香港は居住者冥利に尽きると言って過言ではないと考えている今日この頃です。

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