中国 企業所得税

[全訳] 企業再編業務における企業所得税処理の若干の問題に関する通知

財政部 国家税務総局
企業再編業務における企業所得税処理の若干の問題に関する通知
財税[2009]59号(原文

各省、自治区、直轄市、計画単列市財政庁(局)、国家税務局、地方税務局、新疆生産建設兵団財務局:

≪中華人民共和国企業所得税法≫第20条、及び≪中華人民共和国企業所得税法実施条例(国務院令第512 号)≫第75条の規定に基づき、ここに企業再編に関連する企業所得税の具体的処理の問題について以下の通り通知する。

一、本通知でいう企業再編とは、企業の日常経営活動以外で発生する法律的構造や経済的構造に大きな変更をもたらす取引を指し、企業の法律形式の変更、債務再編、持分買収、資産買収、合併、分割等を含むものである。
(一)企業の法律形式の変更とは、企業登録名称、住所および企業組織形態等の単純な変更を指す。なお、本通知で規定するその他再編類型は除くものとする。
(二)債務再編とは、債務者の財務状態に困難な状況が発生した際に、債権者が債務者との間で合意した協議書面、或いは裁判所の裁定書に基づいて、債務者の債務について譲歩を行う事態を指す。
(三)持分買収とは、一企業(以下、「買収企業」という)が他の一企業(以下、「被買収企業」という)の持分を購入することを以て、被買収企業に対する支配を実現する取引を指す。買収企業からの対価支払方法には、持分による支払、持分以外での支払、又は両者を組み合わせる方法がある。
(四)資産買収とは、一企業(以下、「譲受企業」という)が他の一企業(以下、「譲渡企業」という)の実質的経営性資産を購入する取引を指す。譲受企業の対価支払方法には、持分による支払、持分以外での支払、又は両者を組み合わせる方法がある。
(五)合併とは、一企業または複数の企業(以下、「被合併企業」という)の全ての資産と全ての負債を、他の現存する一企業、或いは新たに設立する企業(以下、「合併企業」という)に譲渡することを指し、被合併企業の所有者は合併企業の持分を手に入れるか、或いは持分に依らない支払いが実施されることで、二企業または二以上の企業の合法的合併が実現する。
(六)分割とは、一企業(以下、「被分割企業」という)が資産の一部分、或いは資産の全てを現存する企業、或いは新たに設立する企業(以下、「分割企業」という)に分離譲渡することを指し、被分割企業の所有者は分割企業の持分を手に入れるか、或いは持分に依らない支払いが実施されることで、企業の合法的分割が実現する。

二、本通知でいう持分による支払とは、企業再編での資産購入や譲渡を受ける一方が支払う対価について、当該企業かその支配下企業の持分や株式を以て支払う形式をいう。持分以外での支払とは、当該企業の現金、銀行預金、売掛金、当該企業やその支配下企業の持分や株式以外の有価証券、棚卸資産、固定資産、その他資産、及び債務引受等を以て支払う形式をいう。

三、企業再編の税務処理は、その条件に従って、一般性税務処理規定と特殊性税務処理規定をそれぞれ適用する。

四、企業再編が、本通知の規定に合致して特殊性税務処理規定が適用される場合を除き、以下の規定に基づいて税務処理を行う。
(一)企業が、法人から個人独資企業や合名企業等の非法人組織に変更する、或いは登記登録地を中華人民共和国国外(香港、マカオ、台湾地区を含む)に移転する場合には、企業が清算と配当を行い、所有者の再投資による新たな企業が設立されたと看做なす。企業の全資産と所有者投資の課税基礎額は、いずれも公正価値を以てその基礎として決定しなければならない。
企業で発生するその他法律形式の単純な変更は、直接に税務登記を変更することが認められる。他に規定がある場合を除き、企業所得税納税関連事項(繰越欠損や税収優遇等の権益と義務を含む)は変更後の企業に承継されるが、住所が変更されることより税収優遇条件に合致しなくなる場合は除かれる。
(二)企業債務再編に関連する取引は、以下の規定に基づいて処理を行う。

  1. 非貨幣資産による債務弁済は、関連非貨幣性資産譲渡と非貨幣性資産の公正価値による債務弁済の異なる二業務に分類して、関連資産の所得と損失を認識しなければならない。
  2. 債権から持分への交換が発生する場合、債務弁済と持分投資の異なる二業務に分類して、債務弁済に関する所得と損失を認識しなければならない。
  3. 債務者は、支払う債務弁済額が債務課税基礎額を下回る部分の差額を基に、債務再編所得を認識しなければならない。債権者は、受け取る債務弁済が債権税額計算基礎を下回る部分の差額を基に、債務再編損失を認識しなければならない。
  4. 債務者の所得税納税関連事項は、原則として元の状況を継続する。

(三)企業の持分買収、資産買収による再編取引は、以下の規定に基づいて処理を行う。

  1. 被買収方は、持分や資産の譲渡所得、又は損失を認識しなければならない。
  2. 買収方が取得する持分や資産の課税基礎額は、公正価値を以てその基礎として決定しなければならない。
  3. 被買収企業の所得税関連事項は、原則として元の状況を継続する。

(四)企業合併の当事者各位は、以下の規定に基づいて処理を行う。

  1. 合併企業は、公正価値に基づいて受け入れる被合併企業の各種資産と負債の課税基礎額を決定しなければならない。
  2. 被合併企業、及びその所有者は、いずれも清算に倣った所得税処理を実行しなければならない。
  3. 被合併企業の欠損を合併企業に振り替えて填補してはならない。

(五)企業分割の当事者各位は、以下の規定に基づいて処理を行う。

  1. 被分割企業の分割資産は、公正価値を以て資産譲渡所得や損失を認識しなければならない。
  2. 分割企業は公正価値を以て受け入れる資産の課税基礎額を認識しなければならない。
  3. 被分割企業が存続する場合、その所有者が取得する対価は被分立企業の配当と看做して処理しなければならない。
  4. 被分割企業が存続しない場合、被分割企業とその所有者は清算に倣った所得税処理を実行しなければならない。
  5. 企業分割に関連する企業の欠損を、相互に振り替えて補填してはならない。

五、企業再編が同時に以下の条件に符合する場合、特殊性税務処理規定を適用する。
(一)合理的な商業目的を有し、納付税額の減少や免除、延払いを主要な目的としない
(二)被買収や合併、分割される部分の資産や持分比率が、本通知が規定する比率に合致する
(三)企業再編後の連続する12ヵ月において、再編資産の元の実質性経営活動が変化をしない
(四)再編取引対価における持分による支払金額が、本通知が規定する比率に合致する
(五)企業再編において持分による支払を取得した元の主要株主が、再編後の連続する12ヵ月以内に、取得した持分を譲渡しない

六、企業再編が本通知第5条に規定する条件に合致する場合、取引に係る各位は当該取引における持分による支払部分に対して、以下の規定に基づいた特殊性税務処理を執行することが認められる。
(一)企業債務再編で認識する課税所得額が当該企業の当年度課税所得額の50%以上を占める場合、五納税年度期間に渡って、各年度の課税所得額に均等に計上することができる。
企業で債権から持分への交換業務が発生する場合、債務返済と持分投資の二業務について暫定的に債務弁済に係る所得や損失を認識せず、持分投資の課税基礎額は元の債権課税基礎額を以て決定する。企業のその他関連所得税事項は、元の状況を継続する。
(二)持分買収に関して、買収企業が購入する持分が被買収企業の全持分の75%を下回らず、且つ買収企業の当該持分買収における持分による支払金額が当該取引支払総額の85%を下回らない場合、以下の規定を選択して処理することが認められる。

  1. 被買収企業の所有者が取得する買収企業持分の課税基礎額は、被買収持分の元の課税基礎額を以て決定する。
  2. 買収企業が取得する被買収企業持分の課税基礎額は、被買収持分の元の課税基礎額を以て決定する。
  3. 買収企業、被買収企業が有した元の各種資産と負債の課税基礎額とその他所得税関連事項は、元の状況を継続する。

(三)資産買収に関して、譲受企業が購入する資産が譲渡企業の全資産の75%を下回らず、且つ譲受企業の当該資産買収における持分による支払金額が当該取引支払総額の85%を下回らない場合、以下の規定を選択して処理することが認められる。

  1. 譲渡企業が取得する譲受企業持分の課税基礎額は、譲渡資産の元の課税基礎額を以て決定する。
  2. 譲受企業が取得する譲渡企業資産の課税基礎額は,被譲渡資産の元の課税基礎額を以て決定する。

(四)企業合併に関して、企業所有者が当該企業の合併において取得する持分による支払金額が当該取引支払総額の85%を下回らず、同一支配下で対価の支払いが不要である企業合併の場合、以下の規定を選択して処理することが認められる。

  1. 合併企業が受け入れる被合併企業の資産と負債の課税基礎額は、被合併企業の元の課税基礎額を以て決定する。
  2. 被合併企業の合併前における所得税関連事項は、合併企業に承継される。
  3. 合併企業に補填することができる被合併企業の欠損限度額=被合併企業の純資産公正価値×合併業務の発生当年年末までに国家が発行する最長期限の国債利率
  4. 被合併企業所有者が取得する合併企業持分の課税基礎額は、元々に保有していた被合併企業持分の課税基礎額を以て決定する。

(五)企業分割に関して、被分割企業の全所有者は元の持分比率に従って分割企業の持分を取得して、分割企業と被分割企業がいずれも元の実質経営活動を変更せず、且つ被分割企業の所有者が当該企業の分割において取得する持分による支払金額が当該取引支払総額の85%を下回らない場合、以下の規定を選択して処理することが認められる。

  1. 分割企業が受け入れる被分割企業の資産と負債の課税基礎額は、被分割企業の元の課税基礎額を以て決定する。
  2. 被分割企業が分割した資産に関連する所得税事項は、分割企業に承継する。
  3. 被分割企業の法定補填期限を超えてない欠損額は、分割資産の全資産に占める比率を以て分配して、分立企業が継続して補填することができる。
  4. 被分割企業の所有者が取得する分割企業の持分(以下、「新持分」という)において、元々保有していた被分割企業の持分(以下、「旧持分」という)の一部、又は全てを放棄する必要がある場合、「新持分」の課税基礎額は放棄する「旧持分」の課税基礎額を以て決定しなければならない。「旧持分」を放棄する必要がない場合、取得する「新持分」の課税基礎額は、以下二つの方法から選択して確定することができる。直接に「新持分」の課税基礎額をゼロとする。或いは、被分割企業の分割純資産が被分割企業の全純資産に占める比率を以て、元々所有していた「旧持分」の課税基礎額から控除した上で、減算調整した課税基礎額を「新持分」に均等に分配する。

(六)再編取引の当事者各位が、本条(一)項から(五)項の規定に基づいて、取引における持分支払に対して暫定的に関連資産の譲渡所得や損失を認識しない場合、持分以外での支払いに関しては取引が存在する当期に相当の資産譲渡所得や損失を認識して、関連資産の課税基礎額を調整しなければならない。
持分以外での支払による資産譲渡所得と損失=(譲渡資産の公正価値-譲渡資産の課税基礎額)×(持分以外での支払金額÷譲渡資産の公正価値)

七、企業で発生する中国国内と中国国外(香港、マカオ、台湾地区含む)を跨ぐ持分や資産の買収取引は、本通知第5条の規定する条件に符合すること以外に、下記条件を同時に満たす場合に、特殊性税務処理規定を適用することができる。
(一)非居住者企業が保有する居住者企業の持分を、100%直接支配する他の非居住者企業に譲渡する場合、将来年度において当該持分譲渡による所得の源泉徴収税負担が変化せず、且つ譲渡方非居住者企業が主管税務局に対して、保有する譲受側非居住者企業の持分を3年(3年を含む)以内には譲渡しないことを、書面を以て承諾する。
(二)非居住者企業が保有する居住者企業の持分を、100%直接支配する居住者企業に譲渡する。
(三)居住者企業が保有する資産や持分を以て、100%直接支配する非居住者企業に投資を行う。
(四)財政部、国家税務総局が許可するその他情況。

八、本通知第7条第(三)項にいう、居住者企業が保有する資産や持分を以て100%直接支配する非居住者企業に行う投資において、その資産や持分による譲渡収入が特殊性税務処理を選択する場合、10納税年度内で各年度の課税所得額に均等に計上することができる。

九、企業の吸収合併において、合併後に存続する企業の性質や税収優遇に適用される条件に変更がない場合、合併前の当該企業が有する税収優遇の残余期間分を継続して享受することができる。その優遇金額は、存続企業の合併前一年間の課税所得額(欠損の場合はゼロとして計算)で計算する。
企業の存続分割において、分割後に存続する企業の性質や税収優遇に適用される条件に変更がない場合、分割前の当該企業が有する税収優遇の残余期間分を継続して享受することができる。その優遇金額は、当該企業が分割される前一年間の課税所得額(欠損の場合はゼロとして計算)に、分割前当該企業の全資産に占める分割後存続企業の資産の比率を乗じて計算する。

十、企業は、再編前後の連続する12ヵ月において、その資産や持分の取引を行った場合、実質重視の原則に基づき上述の取引を企業再編取引の一部分として処理しなければならない。

十一、本通知に規定する特殊性再編条件に符合する情況が企業で発生して、且つ特殊性税務処理を採用する場合、当事者各位は当該再編業務の完了年度の企業所得税年度申告時に、主管税務機関に対して書面での届出資料を提出して、特殊性再編条件に合致していることを証明しなければならない。規定する書面での報告を企業が行わない場合、一律に特殊性再編業務に基づく税務処理を認めない。

十二、企業の再編過程において発生する特別な処理を必要とする企業所得税関連事項は、国務院財政や税務主管部門による他の規定に依る。

十三、本通知は2008 年1 月1 日より執行する。

財政部 国家税務総局
二○○九年四月三十日