国際会計税務・相続

[クロスボーダー’s TAX] 第11回 人材紹介会社からのQ&A

クロスボーダー’s TAX ~港・中・日の個人所得税を解説~

第11回 人材紹介会社からのQ&A

先日、香港に拠点をおく人材紹介 会社8社の学習会「香港人材ビジネス交流会」で、「中国・香港・日本の個人所得税について」をテーマに講師をさせていただきましたが、その中で、いろいろ と質問も受けました。企業採用担当者や登録者の皆さんの疑問や質問が反映されていることと思いますので、今回は、そのうち代表的なものについてQ&Aとしてご紹介致します。

Q1.日本人(香港永久居民)で中国工場勤務ですが、Zビザをとっていません。中国での税金を払う必要はありますか。

《A1》 「就労ビザを取得しなければ申告する必要はない」、あるいは逆に「ビザを取得すると直ちに所得税を申告しなければならない」と誤解されているケースも見受 けられますが、基本的にビザの有無とは関係なく、それぞれの国・地域の税法の規定にしたがって、その方の納税義務の必要性を検討しなければなりません。こ の質問のケースですと、たとえZビザの取得がなくとも、中国での短期滞在者免税規定(183日未満で中国での支払い・負担なし)に該当しない限り、中国で申告義務が生じてきます。なお、中国で一定の就労をする場合には当然ながら中国でのビザも必要となってきますので留意してください。詳しくは、285号のケーススタディ「来料加工廠勤務」をご参考にして下さい。

Q2. 現地採用者は給与全額について申告、駐在員は日本支給分を含めないで申告などのように、同一企業内で異なる納税方法を採用することが可能ですか。

《A2》 企業内で統一したルールをもつべきか否かというよりは、個々の従業員の状況に応じた税務の規定により処理をしていく必要があります。この場合ですと、駐在 員の日本支給分が香港(中国)勤務に対応するものということであれば、この分も含めて香港(中国)で申告納税しなければなりません。

Q3. 夫婦共稼ぎでそれぞれが会社勤めしている場合に、何か有利な申告方法はありますか?
《A3》香港では、ジョイントアセスメント制度があり、夫婦で合算して申告することができます。これにより、ケースによっては人的控除金額(HK$104,000/人)などを無駄なく活用することができます。香港税務局のサイトhttp://www.ird.gov.hk で試算ができますので確認されてみてください。
なお、中国では、個々の源泉徴収が基本です。共稼ぎに対する特別な制度はありません。

Q4. 香港人の場合は、中国での183日基準の適用はありますか。

《A4》適用はあります。中国の個人所得税では、中国国内に住所を有さず、かつ一納税年度(暦年)内の中国での勤務滞在日数が90日を超えない個人については、短期滞在者として申告・納税が免除されます(中国国外支払いで中国国内機構により負担がないことが前提)。これは、中国国内法の取り扱いですが、中国と租税条約が締結している国の居住者は、租税条約の内容(183日基準)が優先されます。香港も「中国・香港二重課税防止取扱規定」を締結しており、日本人と同様に短期滞在者免税規定は183日と置き換えて適用されることになります。

Q5. 中国では全く申告していなかったが、後でそれが摘発された場合、そのペナルティーはどのようなものでしょうか。

《A5》未申告や過少納付などの罰則規定については、「中華人民共和国税収徴収管理法」や同管理実施細則に詳しく定めてありますが、一般的なものとしては次のとおりです。

  • 罰金は、未納付・過少納付税額の0.5倍以上5倍以下。
  • 延滞金は、一日当たり0.2%。
  • 犯罪を構成するようなケースでは、刑事責任を追及される可能性もある。

278号で解説しました「外国人個人所得税徴収管理強化の通達」と合わせて確認ください。

以上
文・中小田聖一(NAC代表)