中国 クロスボーダー's TAX

[クロスボーダー’s TAX] 特別編 外国籍人員の個人所得税徴収管理の強化に関する通知

クロスボーダー’s TAX ~港・中・日の個人所得税を解説~

特別編 外国籍人員の個人所得税徴収管理の強化に関する通知

この3月に中国国家税 務総局より各地の税務機関に対して外国籍人員の個人所得税の徴収管理を強化することに関する通達が公布されました。これは、中国現地法人や駐在員事務所で 勤務されている方のみならず、来料加工工場などの香港法人勤務者で中国大陸と頻繁に行き来されている方にも重要な影響がありますので、今回はクロスボー ダーズTAX特別編として取り上げてみます。

今回の政策の概要は、この通達の公布により、外国人の過年度の不適切な申告に対して整理する機会を与え、これにしたがって自ら一定期間内に修正申告を行う場合には、罰金免除等の恩典を与えることで自発的な修正申告を奨励するというものです。
通達の要約版を下記に載せていますが、重要な箇所は太字で示した第四条で、ポイントは次の通りです。

  1. 過去の申告漏れ分については罰金を免除。
  2. 延滞金は、1日当たり0.05%と軽減。
  3. 修正の申告期限は、2004年6月30日まで。
  4. 申告の適用者は、外国籍納税者とその雇用主(源泉徴収義務者)

このことは逆にいうと、今年7月以降については外国人に対する徴税管理を一層強化していき、その後に不適切な申告が発覚した場合には、税金の追加徴収に加えて、規定に従って、容赦なく延滞金、罰金を課していくことの表明ともとれます。
なお、規定上の罰則等は、

  • 罰金は、未納付・過少納付税額の0.5倍以上5倍以下。
  • 延滞金は、一日当たり0.2%(年率73%)。
  • 犯罪を構成するようなケースでは、刑事責任を追及される可能性もある。

となっていますので、今回の措置の重要性を十分に認識しなければなりません。

なお、実際に修正申告を検討する際には、いくつか留意する点があります。

  • 本通達上にある「過年度」の範囲は、一般には3年ですが、重大な場合にはそれ以上となるケースも考えられます。
  • 既に帰国した社員の取り扱いでは、申告適用者が外国籍納税者または源泉徴収義務者(すなわち雇用者)となっており、会社としては帰国者も修正申告の対象とする必要があります。
  • 一部の地域でみられる、「みなし課税」(所轄税務署提示の一定給与額で申告)は、昨今の中央権限強化の方向から鑑みて、みなし課税自体も見直しされる方向にあると思われます。

華南ではルールを超えた「柔軟な運用」が一部で幅を利かせていますが、これを機に日本本社も交えて、会社の税務方針を再検討するとともに、会社及び個人の抱えている税務リスクについてもしっかり把握しておく必要があります。

外国籍人員の個人所得税徴収管理業務強化に関する通知(要約版)
国税発【2004】27 号
2004年3 月5日
各省、自治州、直轄市及び計画単列市の国家税務局、地方税務局、局内の各単位:
経 済のグローバル化及び我が国の対外開放の向上に伴って、国内で経営活動に従事する外国籍人員も増加している。外国籍人員の流動性は高く、その個人所得税の 政策は複雑で、外国籍人員の納税義務の正確な判断及び税務機関の管理は難しいため、個人所得税の申告漏れ、納税漏れが発生している。外国籍人員の個人所得 税の管理及び納税サービスを強化し、徴収管理の質と効率を更に向上させるために、ここに関連問題について以下のように通知する。

一、認識を向上し、管理体制を整備する
外 国籍人員の個人所得税に対する徴収管理を強化し、納税義務を正確に履行させることは、国家の税収収入の保障に関わるだけでなく、国家の税収主権の保護にも 関わる。各地の税務機関はそのことの重要性に対する認識を高め、国際税務管理の職責体系を構築し、専門的人材の充実、管理手続を規範化して、外国籍人員の 個人所得税管理の発展に供しなければならない。

二、法の執行を規範化し、政策の確実な実行を確保する
各 地の税務機関は自らの教育を強化し、税務人員の業務水準の向上を図り、関連の政策を正確に把握しなければならない。更に法律執行の規範化、税収規律の厳格 化、徴収管理手続を整えて、外国籍人員の個人所得税政策の確実な実行を確保し、外国籍人員のために公開、公平、公正な税収環境を提供しなければならない。

三、サービスを向上させ、外国籍人員の法による納税のために便宜を提供する
各 地の税務機関は有効な措置を採用して、外国籍人員のために彼らが納税申告の際の困難や問題を的確に解決するとともに、新聞雑誌等を通じて、積極的に税収政 策を宣伝し、外国籍人員及びその源泉徴収義務者に対して的確な指導と支援ルートを提供し、彼らが我が国の税収法律法規と徴収管理手続を理解し、税法の遵守 レベルを向上するようにサポートしなければならない。部門の協力を強化し、出入国管理局、工商局、税関、外経貿等の部門との協力を強化することによって、 良好な情報交換ルートを構築し、外国籍人員の就業及び流動情況を速やかに把握し、税源管理のために良好な基礎を築かなければならない。

四、徴収管理を強化し、未納税金の整理業務を確実に行う
各地の税務機関は2004 年年末までに、納税者が自ら検査し自ら正すことを主たる内容とする未払税額の整理業務を行わなければならない。具体的な要求は以下の通りである。
(一)2004 年6 月末までに、外国籍人員又は源泉徴収義務者が自ら過年度の未払税額を申告する場合、法により税額を追加納付するほか、1 日当たり未払税額の0.05% の延滞金を追加徴収するが、但し処罰は行わない。
(二)上述の期限までに、外国籍人員が自ら未払税額の追加納付をしない場合で、長期にわたって課税所得額を隠匿、虚偽申告又は未申告の場合、《中華人民共和国税収征収管理法》の規定により税額を追加徴収し、延滞金を徴収し、罰金に処する。

五、香港、マカオ、台湾同胞及び華僑の個人所得税の徴収管理業務は本通知を参照して執行する

以上
文・中小田聖一(NAC代表)