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[まとめ] 移転価格調査から会社を守るための3つのポイント

2009年1月に「特別納税調整実施弁法」が公布され、2008年1月1日に遡って適用されることになり、いよいよ中国の移転価格調査が本格化しています。

企業年度関連取引報告表、同時文書、コストシェアリング協議、事前確認協議‥等、聞き慣れない言葉が出てきておりますので、一度全体像を整理しておきたいと思います。

1. 準備しなければならない資料

すべての企業を対象に「企業年度関連取引報告表」の提出義務があります。

また一定の条件を満たす企業は「同時文書」を準備しておくことが必要です。

企業年度関連取引報告表

  • 対象:すべての企業
  • 内容:関連取引の概要、関連取引の価格算定方法、固定・無形資産の内容、対外支払の内容。
  • 提出:確定申告(毎年5月末まで)時に一緒に提出。

同時文書

  • 対象:一部の企業
  • 対象外となる条件:
    • 年間仕入販売金額が2億元以下、かつ関連取引金額が4,000万元以下
    • 事前確認協議の対象となっている
    • 外資持分が50%以下、かつ国内関連者との取引のみ
    • 経営内容が来料・進料加工、小売、受託研究開発で、損失が生じていない(国税函[2009]363号
  • 内容:組織構成、生産経営状況、関連取引の状況、比較可能性分析、関連取引の価格算定方法の詳細
  • 提出:
    • 関連取引の発生年度の翌年5月31日までに準備を完了し、税務機関の要求のあった日から20日以内に提出。
    • 関連取引の発生年度の翌年6月1日から10年間保管。
  • メリット:
    • 移転価格調査により特別納税調整を受けた場合、通常「基準金利+5%」の延滞利息が基準金利のみとなる。

2. 特別納税調整リスクを軽減する方法

同時文書を準備しておくことで移転価格調査に備えることは可能ですが、より積極的にリスクを回避したい場合は事前協議が効果的です。

また、関連者と共同で開発を行う場合は、コストシェアリング契約の締結をすることで損金算入が認められます。

事前確認協議

  • 内容:企業と税務機関との間における、関連取引の価格算定方法に関する合意
  • メリット:
    • 協議に達してから3~5年間、特別納税調整のリスクを回避でき、同時文書を作成する必要がない。
    • 過去の関連取引にも適用することができる。
  • 申請の条件:
    • 年度関連取引金額が4000 万元以上。
    • 法律により関連申告義務を履行している。
    • 同時文書を準備、保存、提供している。

コストシェアリング契約

  • 内容:無形資産または役務の費用を関連者間で負担するための契約
  • メリット:
    • コストシェアリング契約に基づく費用を損金算入可能。
    • 事前確認協議方式でコストシェアリング契約を締結すれば、移転価格調査リスクの回避も可能。
  • 備案と提出:
    • 契約を締結した日から30日以内に国家税務総局に備案。
    • 契約期間はコストシェアリングに関する同期資料を準備し、翌年の6月20日までに税務機関に提供。

3. 5つの価格算定方法

企業所得税法及び特別納税調整実施弁法によると、合理的な移転価格算定方法について、以下の5つの方法が規定されています。

以前は「基本三法」(独立価格比準法・再販売価格基準法・原価基準法)の採用が基本とされていましたがこの区分は廃止され、利益を利用した方法もこれらと同列に扱われるようになりました。

どの方法が自社に適しているか、商品の性質により判断する必要があります。

(図:5つの価格算定方法のイメージ)

5つの価格算定方法

  1. 独立価格比準法
    • 非関連者間で行われる、関連取引と同一又は類似する取引の価格を公正取引価格とする。
    • 実務的に困難な場合が多い。
  2. 再販売価格基準法
    • 関連者から購入した商品を非関連者に再販売する価格から、比較対象非関連取引の総利益を控除した後の金額を公正取引価格とする。
    • 簡単な加工、単純な売買業務のみを行う場合に適用。
  3. 原価基準法
    • 合理的な原価に比較対象非関連取引の総利益を加えた金額を公正取引価格とする。
    • 有形資産の売買、役務提供、資金融通の関連取引に適用。
  4. 取引単位営業利益法
    • 比較可能非関連取引の利益率指標(資産収益率、売上利益率等)を用いて関連取引の純利益を確定する方法。
    • 実務的に最も現実的な方法。
  5. 利益分割法
    • 企業とその関連者の合算利益または損失を、各当事者間における合理的基準を採用することにより配分する方法。
    • 関連取引の統合性が高く、各当事者の取引結果を単独で評価することが難しい場合(例えば重要な無形資産がある場合)に適用。

詳細な手続は全訳文をご覧ください。