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[実務入門] (22) 外貨建取引の会計 (2)

前回は外貨建取引の取引発生時の処理についてみていきました。原則として、取引発生時の為替相場による元換算額をもって記録するというものです。また、為替予約をしたとしても「旧」企業会計準則では簿外処理がなされるというものです。そこで今回は、外貨建取引の月末の会計処理についてみていきます。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

(1)月末の会計処理(為替予約なし)

 外国通貨、外貨建金銭債権債務や外貨建有価証券は、月末の決算時において決算時の為替相場による元換算額を付す会計処理を行います。売掛金や外貨預金についてはこの処理の対象となります。換算の結果生じた差額は、ネットの金額を損益計算書の財務費用項目の為替損失勘定に計上します。

[例] A社は、2011年11月30日に製品をドル建てで1百万ドル輸出した。A社は取引発生時の為替相場を使用して継続的に記帳している。直物為替相場の推移は次の通りである。
 取引実行日(11月30日) 1ドル=6.4元
 月末(12月31日) 1ドル=6.35元

会計処理

  1. 取引実行日(11月30日) 売上取引を直物為替相場により計上する。
    借方; 売掛金 6,400,000 貸方; 売上 6,400,000 (元)
  2. (翌)月末(12月31日) 売掛金を現値で換算すると、635万元になります。
    借方; 為替損失 50,000 貸方; 売掛金 50,000 (元)

(2)月末の会計処理(為替予約あり)

[例]  A社は、2011年11月30日に予定されている製品のドル建輸出に関して、元高による決済金額の増加を懸念して、この取引をヘッジするための為替予約を11月15日に行った。A社は取引発生時の為替相場を使用して継続的に記帳している。取引量及び価格の予想に基づいて、2月末を決済期日とする為替予約を1百万ドル行い、為替予約相場は1ドル=6.37元であった。直物為替相場の推移は次の通りである。11月30日に2月末を決済日とする、1百万ドルの輸出取引が行われた。
 為替予約締結日(11月15日) 1ドル=6.405元
 取引実行日(11月30日) 1ドル=6.4元
 月末(12月31日) 1ドル=6.35元

会計処理

  1. 為替予約締結日 (11月15日)
    仕訳なし
  2. 取引実行日(11月30日) 売上取引を直物為替相場により計上する。
    借方; 売掛金 6,400,000 貸方; 売上 6,400,000 (元)
  3. (翌)月末(12月31日) 売掛金を現値で換算すると、635万元になります。
    借方; 為替損失 50,000 貸方; 売掛金 50,000 (元)

(3) 「新」企業会計準則上の月末の会計処理(為替予約あり) (ご参考)
国際会計基準(IFRS)に準拠した「新」企業会計準則では、月末時点で当該為替予約取引を時価評価します。
[例] 上記(2)に加えて当該為替予約の時価評価額
 為替予約締結日(11月15日) 0
 取引実行日(11月30日) 0
 月末(12月31日) 40,000元(益)

会計処理

  1. 為替予約締結日 (11月15日)
    仕訳なし
  2. 取引実行日(11月30日) 売上取引を直物為替相場により計上する。
    借方; 売掛金 6,400,000 貸方; 売上 6,400,000 (元)
  3. (翌)月末(12月31日) (元)
    借方; 為替損失 50,000 貸方; 売掛金 50,000
    借方; 金融派生商品 40,000 貸方; 金融派生商品評価損益 40,000

次回も引き続き外貨建取引の会計についてみていきます。上記の例について、決済時である2月末に行うべき会計処理について考えます。