
中国
増値税
中国からの輸出貿易制度について
中国で製造された製品を中国から輸出する際、中国の通関、税務、外貨管理上の規定に基づいて手続きを実施する必要があります。自らが輸出名義上の主体となるか否かによって輸出手続きへの関わり方は異なります。広東省には輸出業務に従事する日系企業や、香港拠点から中国国内での調達活動を行う日系企業も多いため、各輸出主体に応じて以下簡単に説明します。
目次
1.中国国内の現地法人(製造/貿易)が貨物を輸出する場合
貿易権
商務部門における「対外貿易経営権」の申請取得は現在不要となりました。
税関登記
自らが荷主となって貨物の輸出入を行う企業は税関登記手続きを行い、通関操作用USBキー(中国語で“電子口岸”)を取得します。
税関登記手続き:登記主体が荷主(送付/荷受)、その分子機構、通関代理企業、臨時登記する企業等に区別されています。
外貨
外貨入送金口座の銀行による手続きで外貨管理局における「貿易外貨収支名簿登録」を行います。
この登録により貨物輸出入の入送金を銀行が取扱うものとなります。申請表において、貿易主体(税関特殊監督管理区域の企業/荷主として通関登記した会社/外貿総合サービス企業/市場調達貿易企業/越境ECプラットフォーム企業等)の区別を選択する欄があります。
税務
貨物の輸出販売に関し、増値税は「ゼロ税率」とされ、輸出免税の上、仕入に関する増値税が還付されますが、還付率は輸出製品に応じて異なり、中国の貿易政策によって都度調整されます。
増値税の還付手続きは、輸出還付備案を行った一般納税人が対象で、小規模納税人は還付することができません。また製造業と貿易業では、増値税の還付計算が異なっています。
※小規模納税人:業種に関わらず、課税販売に対し3%の増値税が課税(優遇政策により減免あり)され、仕入控除できない。企業は自主的に一般納税人として登録するか、もしくは過去12か月の課税販売が500万元を超えると一般納税人として登録し申告するよう税務局より要求されます。
1.1 製造業
自社製造製品の輸出還付に対し、「免除・控除・還付」方式で還付計算を行います。輸出販売は免税、仕入を控除させ、控除仕切れない部分を輸出製品の還付率に応じて(上限として)還付するものです。修理部品や補助部品等一定条件を満たす外部調達輸出品に対し“自社製品とみなして”同様の計算を行うことが可能であるものを除き、製造業が外部調達貨物を加工せずそのまま輸出する場合、還付計算できず免税申告し、対応する仕入税額を控除することはできません。或いは、輸出通関を実施していない郵送の場合等は、国内販売とみなして課税されることととなります。
1.2 貿易会社
貿易輸出還付に対し、「免除・還付」方式で還付計算を行います。輸出免除、仕入れ商品の還付率に基づいて還付されます。貿易会社は仕入れた商品をそのまま輸出することになるため、仕入発票そのものを輸出還付申請に提出することから、仕入発票の記載内容(商品、金額)と輸出貨物記載内容は一致する必要がある点、留意が必要です。また、初回の輸出還付に対し税務局より輸出販売の実態や仕入・輸出価格の合理性、輸出企業の財務諸表等も含め審査が行われます。コロナ禍以降、華南地域では貿易輸出還付の初回申請に対する審査は厳格化され還付の実現のハードルが高くなっているようです。
小規模納税人或いは仕入増値税発票を取得未了時、輸出還付は申請できず免税申告し、仕入税額は控除できません。
2.代理輸出について
中国の製造企業或いは販売企業が税関登記をせず、外貨口座を持っておらず自社の販売貨物の輸出活動に不便な場合は代理輸出手続きを貿易会社や物流企業等に依頼することができます。また中国国外の貿易会社が中国に拠点を設けずに貿易代理機能を依頼することもあると思います。貿易外貨収支名簿登録申請表にある貿易主体のうち、外貿総合サービス企業/市場調達貿易企業等もこのような代理輸出の受託企業となることができます。受託業務の範囲には、通関名義、貿易契約名義(入金名義)、輸出還付名義があることになります。
通関
輸出通関申告書(通関単)には受託者を荷主として記載、委託者を生産販売企業の欄に記入
外貨
貿易入金名義を委託するならば、契約書名義と一致させる必要があります。
輸出還付
仕入発票の宛先が輸出還付申請名義となる必要があるので、受託者が申請する場合は注意が必要です。
2.1 国家税務総局2025年 第17号における代理輸出業務に関する最新の規定
上記の代理輸出方式において通関と輸出還付(増値税)、外貨(入金)が個別に依頼できる状況と、各部門による管理により、実際の販売者ではない受託者による偽の輸出還付申請や、外貨入金ルートも個人名義等不法ルート、委託者も受託者も販売申告せず脱税となっている状況が発生していたようです。
2025年10月1日より施行される当該公告文書には、代理輸出企業の輸出通関について次の通り規定されています。
市場調達貿易、外貿総合サービス等を含む代理方式で貨物を輸出する代理輸出企業は、企業所得税の予納申告時、同時に委託者の基礎情報(公告添付資料2フォーマットに記載欄のある、通関単番号、委託者企業名称、企業信用コード、金額。)を記載し提出すること。委託者基礎情報と輸出金額が無い場合は、代理輸出ではなく自社貨物輸出とみなし、当該代理輸出企業自身の販売金額として企業所得税の四半期予納申告を行うこと。輸出委託者とは輸出貨物の実際生産販売企業を指す。
2.2 中国製品の調達活動を行う中国国外企業としての対策
中国国内の輸出主体となることができない国外企業は、中国国内の工場から直接輸出通関してもらうか、輸出代理を行う企業に輸出業務を委託するかのいずれかの方法をとる必要があります。
中国製品の調達において、品質や納期の管理の必要性から、中国国内に拠点を置く場合、外国企業常駐代表処(駐在員事務所)か、もしくは現地法人設立を検討する必要がある場合もあります。
商品保全や品質保証だけでなく、通関や税務事項が適正に処理されるよう、中国の通関・税務・外貨制度を理解した上で、中国の製造企業やサプライヤーと取引するよう十分ご留意ください。