中国 粤港澳大湾区
中国・加工貿易発展レベル向上についての意見
中国沿岸部、特に広東省では販売先が主に海外である輸出型の製造業も多く、主要原材料も海外から調達する場合、加工貿易という増値税が保税若しくは免税で優遇される製造貿易制度が普及していると同時に、保税区といった税関特殊監督地域内での製造業も類似の優遇を受けており、加工貿易は中国での製造活動を奨励し、製造輸出品の競争力を高める主要な制度の一つと言えます。2016年に《国務院 加工貿易イノベーション発展促進についての若干意見》(国発[2016]4号)を発布後、コロナ以降の中国経済の回復の遅れなどの情況に対し、国内・対外経済促進を図り、グローバルサプライチェーン強化の一環として加工貿易制度の更なる整備が図られており、2023年12月25日付で商務部等10部門による「加工貿易発展レベル向上についての意見」(商貿発2023[308]号)が重要な指導性政策文書として発布されていますので内容を簡単に紹介します。
目次
一、高付加価値製品の加工貿易を奨励
先進製造業と戦略性新興産業(電子情報、生物医薬、航空宇宙、新エネルギー、新材料等)加工貿易の発展を支援して商流と技術の波及効果を発揮させ、産業群の発展と最適化・高度化を図る。
研究開発費用の加算控除税制の利用を奨励し、技術改造や製品付加価値向上を図る。
二、総合保税区と自由貿易試験区における保税修理業務発展を促進
総合保税区の修理製品リストの拡充と、グループ内製造製品修理制限の緩和、国内外商流の緩和。
リスト外製品の修理業務の試行。
三、その他の地域における保税修理業務の試行を推進
国外から輸送され修理後国外に返送される「両頭在外」保税修理試行プロジェクトを、総合保税区と自由貿易試験区以外の地域で、医療機器、電子情報製品等自社輸出商品を対象に、加工貿易高度化実績の顕著な蘇州、東がん、天津市濱海新区等で試行を進める。
四、地域移転受け皿の建設強化
加工貿易の重点的な移転先地域で加工貿易産業園等の受け皿機構の建設を進め、引き続き加工貿易を中西部及び東北地区に移転させていく。条件に合うプロジェクトに地方政府専門項目債券により支援する。
五、加工貿易地域移転対応協力メカニズムの整備
加工貿易製品博覧会の機能を拡大し、オン/オフラインを常態化させた業界マッチング・プラットフォームを構築する。貿易促進機構や業種協会等の組織の投資視察、交流活動を促進する。
六、辺境地区支援拡大
広西、雲南等環境の許す辺境の省地域の特色を生かした製品加工(食品、服飾、電子情報等)を請け負うことを支援。スマート税関建設、陸路税関物流機能保障、貨物通関機能向上等を図り、貨物のスピード輸出入を実現する。
七、財政政策支援強化
専門財政資金等中央及び地方の資金ルートを活用して更なる加工貿易の高度化及び移転支援を行う。
国外投資者への配当利益の国内再投資に対する源泉税の繰延政策を全面的に実施する。
《外商投資奨励産業リスト(2022年版)》《西部地区奨励類産業リスト(2020年版)》該当プロジェクトへの税収優遇政策を確実に実施する。
八、金融政策支援強化
銀行による加工貿易企業、特に中小零細企業の経営及び輸出入に対し与信、輸出信用保険等の拡大を奨励する。為替及びクロスボーダー人民元決済サービス整備を奨励する。
九、交通物流及びエネルギー保障
地域毎のクロスボーダー物流機能強化を奨励。一帯一路に沿って中欧列車の最適化を図る。国際航空運輸の中西部及び東北地区重点都市との間の貨物運輸ルートと便数増加を支援する。
輸送方法とルートの最適化により複合物流発展を促進する。中西部と東北地域の支援奨励により、加工貿易企業の国際物流運輸コスト軽減を図る。
十、多様な人材ニーズに応える
地方が教育訓練資源を整備、業界企業を主体とし、職業学校を基礎として職業訓練基地及びプラットフォームを構築して加工貿易企業のための人材育成を支援。
十一、国内市場開拓支援
地方が加工貿易企業の国内販売に対し研修・情報提供を行って人材・販売ルート等の支援を行うことを奨励する。企業が多様な保険商品に加入できるよう支援する。
十二、加工貿易管理及びサービスの最適化
加工工程及び環境技術の現状に応じて適時に加工貿易禁止類商品目録を調整する。加工貿易制限類商品に対する税関担保管理措置の暫時停止を2025年まで継続し、加工貿易無償提供設備輸入に対する税関の監督管理機関を5年から3年に短縮する。
税関監督管理制度を刷新し、情報化管理レベルを向上させ、手続きを最適化する。
上記各項目は商務部が発展改革委員会、工業と情報化部、財政部、人力資源社会保障部、生態環境部、交通運輸部、税関総署、税務総局、金融監管総局等と共同で分担し措置を具体化し実施していくとされています。