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[M&A] 狙うは高い環境技術:中国企業が相次ぎM&A

中国企業が環境分野での合併・買収(M&A)を加速している。国務院(中央政府)が2015年までに環境産業の規模を4兆5,000億元(約70兆9,000億円)に拡大させるとする大きな振興策を発表したことなどを受け、成長する環境分野の資産や技術を獲得することで自社の業績につなげようとするのが狙い。高い技術力を持つ海外企業を買収するケースも出てきている。

中国企業による買収例はここ数カ月だけでも目立って増えている。深セン上場で、計測機器や環境設備の開発製造を手掛ける河北先河環保科技股フン(河北省石家荘市)は今月15日、623万3,000米ドル(約6億円)を投じ重金属検査技術を持つ米CESの株式60.5%を取得し、買収したと発表した。政府は河川や土壌、大気の重金属汚染を観測・除去する計画を示しており、河北先河環保科技股フンは、規模は小さいながら高い技術を持つ米国企業を買収して同分野での事業規模拡大を目指しているとみられる。

深セン上場で、廃棄物処理やリサイクルを行っている東江環保股フン(深セン市)も今月16日、7,700万元で東莞市恒建環保(広東省東莞市)の株式100%を買収すると発表した。東莞市恒建環保は銅廃液処理・リサイクルを主要業務とし、東莞地区で銅を含む危険廃棄物の取扱経営許可証を持つ2社のうちの1社。年間処理能力は5万トン。東江環保股フンは東莞市恒建環保の技術と許認可保有の強みを生かし、同分野での業務を拡大する狙いだ。

20日付証券時報によると、今年に入ってから上場企業に買収された環境関連企業は10社ほどに上る。興業証券のアナリストは「環境業界でのM&Aはますます加速している」と話した。

そのほか、上海上場で、上水道の開発や下水処理などを行う上海城投控股股フン(上海市浦東新区)は、汚水や廃棄物処理を手掛ける上海市環境工程設計科学研究院を完全買収することで合意した。深セン上場で、工業炉や圧力容器の製造などを手掛ける華西能源工業股フン(四川省自貢市)は上半期(1~6月)に8億7,100万元を調達し、高効率の省エネ型余熱ボイラーなど3事業に投じる計画を明らかにしている。

■技術向上が鍵

国務院は今月12日までに、環境産業の振興策を発表した。(1)省エネ技術・設備の世代交代推進(2)環境技術・設備のアップグレード(3)リサイクル技術の発展と資源産出量の増大(4)環境産業の強化と発展モデルの構築――の4分野を骨子に、環境産業の生産規模を年平均15%以上伸ばし、15年までに4兆5,000億元規模に成長させる目標を設定した。この中でも技術力の向上が鍵を握るとみられ、民間資本と外資の参入を歓迎する意向を示しており、技術力を持つ国内外企業のM&Aが加速するとみられている。

特定の業界を対象とした支援策などは示されていないが、今後は各分野での投資が加速していくとみられる。

■異業種からの参入も

ただ、異業種から環境分野へ参入するケースも出てきており、リスクを懸念する声もある。

湖南・湖北料理チェーン「湘鄂情」を運営する北京湘鄂情集団股フン(北京市海澱区)は7月26日、2億元で汚水や排気処理やリサイクルを行う江蘇中ユ環保科技(江蘇省宣興市、ユはひへんに立)の株式の51%を買収すると発表した。

関係者は「倹約令や国内景気の減速などで湘鄂情は業績が低迷しており、企業買収によって成長が見込まれる環境分野に参入した」と、異業種からの参入の狙いを話した。

また上海上場で、太陽光発電設備の製造を主要業務とする北京京運通科技股フン(北京市大興区)も7月末、1億8,600万元を投じて、排煙脱硫剤の販売などを手掛ける山東天燦環保科技(山東省シ博市=シはさんずいに輜のつくり)を完全買収すると発表した。業界関係者は「異業種・異分野からの環境企業の買収は一定のリスクがあり、企業は慎重さが求められる」と話した。(NNA.ASIA