中国 外貨管理

中国・貿易外貨代金入送金制度のアップデート

中国の現状の貿易外貨入送金関連制度は2012年8月1日より施行されており、輸出入決済企業としての名簿登録、外貨貿易モニタリングシステムとA~C類の企業分類による管理等を行っていますが、近年は貿易業務の利便化措置が採られています。

1.企業リスト登録

輸出入貿易代金の入送金を行う企業は従来、所在地の外貨管理局にて事前に「貿易外貨収支企業名簿」への登録手続きが必要とされていましたが、2024年6月1日より銀行にて直接名簿登録を行うことになりました*1。オンライン若しくは書面にて《貿易外貨収支企業リスト申請表》を記入提出し、銀行より外貨管理局プラットフォームの銀行画面における情報入力を行い、企業画面のログイン情報を発行します。小規模零細越境EC企業*2はこの登録を免除することが可能とされています。

企業名称、統一社会信用コード、法定代表者、連絡方式、登録住所に変更がある場合、30日以内に銀行にて名簿情報変更を申請し、登録抹消については外貨管理局により手続きするとされています。

*1:国家外貨管理局 貿易外貨業務管理の更なる最適化に関する通知(滙発[2024] 11号)

*2:年間貿易決済累計金額が20万米ドル未満の越境EC企業

2.分類管理・登記手続き

(1) 分類管理

外貨管理局は、外貨登記した企業をA、B、Cの3分類に分け、A類の貨物貿易外貨収支企業には利便化措置を与え、報告や登記義務の未履行、処罰後未改善等の情況がある場合、B、C類に降格した企業には資料審査や手続き手順、決済面でより厳格化した措置を採っています。B、C類における監督期間は原則1年、但し、3個月後に条件を満たして再分類の申請を提出することができます。

貨物貿易代金の決済は、外貨貿易モニタリングシステムで過去12か月の総量モニタリングが行われており、原則輸出入通関から30日以内に決済しなければならず、前受・前払いや、ユーザンス回収・延べ払い等の貿易信用業務や、輸出入代金の払い戻し、三国間貿易等ははモニタリングの対象として、当該システムにて外貨登記業務を行わなければならないとされていますが、これらの業務を含み、分類毎の制限で主なものは以下の通りです。

  
A類

  • 30日を超える前受・前払、90日を超えるユーザンス回収または延べ払いは登記。
  • 20万米ドル以下の、元の入金日から180日の期限を超える、或いは元の入金ルート通りではない払い戻し送金が可能。(2024年6月1日より、滙発[2024] 11号に基づく)

B・C類

  • B類企業が入送金可能限度額を超える場合は登記。
  • C類企業は貿易外貨入送金の都度、登記が必要。
  • 前受・前払決済は日数問わず登記、30日を超えるユーザンス回収または延べ払いは登記。 A類から降格され分類監督管理有効期間6か月後、既に情況を改善或いは是正し且つ新たにB,Cに分類される情況が無い場合、90日超のユーザンス回収或いは延べ払い業務の登記が可能。
  • 元の入金日から180日を超える、或いは元の入金ルート通りではない払い戻し返金について、所在地外貨管理局に申請書・元の入金ルート通りに払い戻しができない根拠資料、元の外貨支払・受取証憑、元の輸出入契約、輸出入通関申告書等を提出して審査後に登記。
  • 三国間貿易の決済を行うことができない。

(2) 登記手続き資料

B類企業が入送金可能限度額を超えて或いは90日超のユーザンス回収/延べ払い業務の登記を行う場合と、C類企業が登記を行う場合、以下の資料を提出するものとされています。

①押印済み申請資料(登記事項、具体内容と理由説明を含むがこれに限らない)

②信用証、輸出取立手形の場合は契約書

③前払、前受決済の場合は通関申告書及び契約。

④その他の方式による決済については、通関申告書と契約書。貨物を通関しない場合、運輸証憑等その他の証明資料で通関申告書を代替する。

⑤入送金と輸出入主体が一致しない決済については、情況に応じて協議書、行政部門の分割/合併証明文書のほか、その他関連資料。

⑥90日以上のユーザンス回収/延べ払い決済の場合、関連根拠資料。

⑦輸出代金の融資・預金については金融機構との協議書及びインボイス

⑧外貨現金の携帯入国金額を超える場合、税関押印済み《中華人民共和国税関入出国旅客荷物物品申告表》

参考:2024年6月1日より施行の滙発[2024] 11号に基づく。

3.税関特殊監督管理区域内企業の決済

貿易外貨入送金制度の対象となる取引には、「税関特殊監督管理区域内」の企業と国外企業若しくは国内企業との間の貨物代金決済も含まれます。

「税関特殊監督管理区域」は保税区、輸出加工区、保税物流園区、クロスボーダー工業園区、保税港区、総合保税区等を指しています。関連の規定条項には次が含まれます。

  • 税関特殊監督管理区域(以下、区域)と国内区域外の間の貨物貿易、及び、区域内の企業間の貨物貿易は、人民元或いは外貨で決済することができる。(経常項目外貨業務手引き2020年版第37条)
  • 区域内の機構が物流と資金流の一致しない取引方式の場合、外貨収支は真実・合法に基づくものとし、銀行は取引証票の真実性及び外貨収支の一致性に対し合理的に審査する。企業が提供する輸出入貨物通関申告書、入境貨物備案表或いは保税リスト上のシッパー/コンサイニーが企業自身ではない場合、企業はその説明、根拠商業証憑及び通関証憑を提出する。(同38条)
  • 区域内企業が貿易外貨入送金業務を行う時、輸出入名義が企業自身ではない場合、銀行は顧客及び業務の理解と慎重な審査原則に則り、取引の真実性、合理性及び入送金と輸出入名義が一致しない関連資料を審査の上手続きし、国外収支申告取引記録に“非通関者”と注記する。(2024年6月1日より施行の滙発[2024] 11号)

4.加工貿易等貿易代金

(1) 加工貿易差額決済の緩和措置

銀行は企業の輸出製品代金と輸入材料代金の差額決済時、次の条件を満たすものとする。

①企業は国外取引相手より材料仕入れ加工後、製品を同一の取引相手に販売する

②企業の輸出入代金相殺決済実施前に、関連資料を持参し銀行で説明を行い、銀行は“輸出入相殺企業”を注記する。

③企業は合理的に相殺周期を設定し最低四半期に1回債権債務を清算する。

(2) 委託代理決済

貿易代理(輸出入、対外決済)を行う企業が倒産、銀行口座凍結等の状況になり、貨物貿易の入送金が実行できなくなった場合、銀行は商業原則に応じて、委託者による入送金の真実性と合理性を審査し手続きを行い、国際収支申告に「非通関者+委託者入送金+(代理人名称)」と記載する。

(3) 国内企業のオペレーティングリース業務決済便利化

国内機構(借り手)が自社保有外貨で国内リース企業へ国内オペレーティングリース(飛行機、船舶、大型設備)代金として外貨リース料を支払う時、同時に以下の条件を満たすものとする。

①借手は安定的な外貨収入源が一定規模ある。

②借手の支払うリース料は1億米ドルを超える。

③貸手のリース物件購入資金の50%以上は外貨建て債務、或いは国外よりリース物件を借入れて支払う。貸手の取得した外貨リース収入は原則として元転して使用は不可。

参考:越境貿易投資の利便化促進の更なる深化改革についての通知(滙発[2023]28号)

5.越境EC等の貿易代金

外貨管理局は越境EC等の貿易代金決済の実態に伴い、貿易新業態の業務利便化措置として以下の規制緩和を行っています*5。

(1) 銀行は顧客の識別、取引電子データ収集、真実性審査を前提として、越境EC企業や貿易総合サービス企業等の新業態企業に外貨両替・入送金を行うことができる。

(2) 越境EC企業は輸出貨物に国外で発生した倉庫、物流、税金等の費用を控除後の差額を入金することができる。また、海外倉庫に輸出し販売した貨物について、実際販売収入と輸出通関金額が一致しないことが可能であり、現行の貨物貿易外貨管理規定に基づいて外貨業務報告を行うものとする。

(3) 国際クーリエ企業、物流企業、越境ECプラットフォーム企業は、越境EC取引に関する国外倉庫、物流、税金等の費用の顧客への立替を行うことができ、立替期限は原則12か月を越えない。規定に基づき所在地の外貨管理局に報告する。

(4) 越境ECに従事する国内個人は、個人の外貨口座を通じて越境EC外貨決済を行うことができる。越境EC取引額の証明資料或いは取引情報電子データを提出できる場合、個人の外貨年間使用限度額を消費しない。

(5) 市場調達貿易で第三者に通関輸出を委託する企業と個人は、市場調達貿易プラットフォームで届出した後、自らの名義で外貨入金することができる。個人の外貨口座を通じて入金時に取引額の証明資料或いは取引情報電子データを提出できる場合、個人の外貨年間使用限度額を消費しない。

(6) 貿易総合サービス企業は取引電子情報に基づき輸出入金代行を行い、外貨若しくは人民元転後の資金を委託者の口座に振り替えることができる。その際、サービス契約、通関・物流、税還付、決済、信用保険等の根拠資料を銀行に提出する。

[越境EC]:インターネットを通じて商品或いはサービスを輸出入する経営活動を指す。

[市場調達貿易]:認定された市場集積地域で商品仕入れを行い、条件に符合する企業より輸出通関手続きを行う貿易方式を指す。

[貿易総合サービス企業]:対外貿易経営者資格を有し、国内外顧客より委託され、通関、検査、物流、還付、決済、信用・保険等の貿易サービスを提供する企業を指す。

*5:国家外貨管理局 貿易新業態発展の支持に関する通知(滙発[2020]11号)、国家外貨管理局〈支払機構外貨業務管理弁法〉の印刷発布についての通知(滙発[2019]13号)

関連規定

・国家外貨管理局 貨物貿易外貨管理法規関連問題印刷発布についての通知(滙発[2012]38号)

・経常項目外貨業務手引き(2020年版)滙発[2020]14号