中国 人事労務

中国内地における香港・マカオ・台湾住民の社会保険加入について

香港・マカオ・台湾住民は中国内地での就業証手続きが2018年に廃止(就労許可が不要となった)され、また、中国各地の公安局にて《香港マカオ台湾居民居住証》の発行申請ができるようになっています。社会保険においても従来より加入は可能でしたが、《香港マカオ台湾居民の内地(大陸)における社会保険参加暫定弁法》*1及び《我省の香港マカオ台湾居民養老保険の更なる整備措置に関する意見》*2等の発布により、社会保険加入対象者の範囲が広がるなどの整備が行われ、香港・マカオ住民の内地中国での就業・居住・就学などにおいて、内地中国人と同等の社会保険の加入権利と待遇享受が促進されています。

2022年1月に深セン市の社会保険局の担当者が香港資本企業向けに行ったセミナーから抜粋して内容を紹介します。

社会保険加入対象者

企業等での就業者(企業等の組織が手続きを行う)

企業に勤務する場合、企業により養老・労災・失業・医療及び生育保険に加入しなければならないとしています。

なお、香港・マカオ住民が当地の社会保険に加入し且つ当地の社会保険関係を継続する場合に、相応の機構より発行する証明書(マカオの場合《マカオ特別行政区政府社会保障基金受益者積立記録》)或いは本人の承諾書により深セン市の養老保険と失業保険の納付を免除することができるとされています。

自営業者(個人で手続きを行う)

満18歳から法定退職年齢までの間、個人事業者或いはフリーランスで且つ深セン市において香港マカオ台湾居民居住証を取得済みの人は、従業員養老保険及び医療保険に個人で加入することができる。

未就業者(個人で手続きを行う)

満16歳から満60歳の間で、且つ深セン市において有効な香港マカオ台湾居民居住証を取得済みの未就業者は、都市住民養老保険に加入することができる。

自営業者・フリーランス、未就業者の納付基準

自営業者・フリーランスの納付基準

深セン市の最低賃金から広東省統一平均賃金の300%の範囲で自ら基数を決め、養老年金は20%の比率で納付することになっています。

未就業者の納付基準

深セン市の定める9つの等級から年度毎に選んで納付することになります。

オンライン/オフライン手続き

企業は、「深セン市社会保険基金管理局-単位社保網上服務系統」から手続きを行います。

個人は、「深セン市社会保険基金管理局-個人社保網上服務系統」から手続きを行います。

オフラインでの手続きは、深セン全市社会保険局或いは香港の以下2か所で手続きすることができるとしています。

  • 中国銀行(香港)中銀大廈分行(中環花園道1号)
  • 香港金鐘夏壳道18号海富中心第1座29楼B02室

納付停止の手続き

社会保険の納付停止には以下の3つの状況が想定されています。

  1. 保留: 勤務先の社会保険からは退出するが、口座は保留し、再度来深時に累計年度で計算する。
  2. 移転: 内地(大陸)の他の省で就業や居住となる場合、深セン市の社会保険を移転する。
  3. 清算: 身分証、銀行口座情報等を持参し社会保険口座を抹消手続し、社会保険個人口座残高を本人銀行口座へ返却する。

従業員基本養老保険の受給条件

深セン市の従業員基本養老保険に加入する香港・マカオ・台湾住民は、法定退職年齢に達した時、累計積立年数が満15年で受給地が深セン市と確定する場合に、従業員基本養老保険の待遇享受を申請することができるとされています。加入年数が累計15年に満たない場合、以下の3つの方法が想定されています。

  1. 深セン市を待遇享受地と確定し、フリーランス納付基準で満15年まで納付継続する。
  2. 内地(大陸)各地でそれぞれ10年に満たない年数で勤務しており、最長の加入地域が広東省内で且つ最後の加入地域が深センである場合、深センでの継続納付が可能。
  3. 最終加入地域が深センであるが、広東省地域での加入が最長ではない場合も、深セン市での継続納付を自ら希望することが可能。

*1 : 《香港マカオ台湾居民の内地(大陸)における社会保険参加暫定弁法》
中華人民共和国人力資源と社会保障部国家医療保障局令第41号、2020年1月1日施行
*2 : 《我省の香港マカオ台湾居民養老保険の更なる整備措置に関する意見》
粤入社規[2019]48号、2019年12月20日より実施、有効期間5年