中国

中国・中継貿易(三国間貿易)の入送金について

一般的に中継貿易や三国間貿易というと、物流が経由しない第三国に所在する企業に商流を経由する取引のことを指しています。中国に所在する企業が、日本にある貨物を中国に輸入せずにこれを購入し、アメリカの会社に販売し、貨物は日本からアメリカに直送して、日本へ仕入れ代金を支払い、アメリカから販売代金を入金するような取引です。中国の外貨管理上ではこのような取引は、経常項目の中の貨物貿易取引としては中国の税関の輸出入証憑が出せないため、一時期は企業分類等により一部の企業が実施できていたものの現在は原則的に認められていません。但し保税区貿易会社は、保税区が中国税関外エリアとなることから、当初より経営範囲として記載することが認められ、国際収支に属する取引として銀行より操作可能となっていると思います。広東省に所在する日系企業にはこのような取引ニーズが一貫してあるため、外貨管理局等の規定の動向が注視されていました。

2021年12月24日付で人民銀行と国家外貨管理局より《新型オフショア国際貿易発展に関する問題についての通知》が発布され、中国に輸出入しない貨物売買業務を含む「新型オフショア国際貿易」の入送金を、貨物貿易ではなくサービス貿易として取り扱っていく旨が通知されており、今後の可能な商流の拡大が期待できます。以下に内容を紹介します。通知は2022年1月24日より実施されます。

「新型オフショア国際貿易」とは

通知の定義によると「新型オフショア国際貿易」とは、“我国居住者と非居住者間に発生する、貨物が我国一線税関*1に出入りしないか或いは我国税関の統計に組み入れない貿易取引を指し、オフショア売買業務(原文:「離岸転手売買」)、グローバル調達、国外加工委託、工事引受国外貨物仕入等を含むがこれに限らない” としています。(通知第一条)

銀行による審査資料

銀行は新型オフショア国際貿易クロスボーダー資金決済業務を取り扱う際、“形式より実態を重んじる”要求に基づき、“顧客を理解”し“業務を理解”し“詳細審査”の原則に基づき、次の規定により自主的に審査資料を決定するとしています。

(一)取引が真実、合法且つ商業合理性と論理(ロジック)性を備えること。
(二)合理的な審査において虚偽や投機取引、違法な資金移動・銀行融資取得等の異常な状況が発見されない。(通知第三条)

また、企業は銀行の調査に備え、関連取引証票を5年間保管することとされています。(通知第四条)

同一取引は原則同一銀行、同一通貨で行う

同一取引、つまり仕入れと売りの一連の取引は原則的に同一の銀行で、同一の通貨を用いて入送金することとされています。通貨は外貨と人民元のいずれも想定されています。銀行は、国際収支統計申告と、人民元クロースボーダー情報管理システムデータの送信において、サービス貿易項目下の新型オフショア国際貿易として報告し、“新型離岸”と注記することとされています。(通知第四条、第五条)

多国籍企業関連規定との整合

内部統制が整備され、オフショア売買業務の実際ニーズがある多国籍企業は、《多国籍企業クロスボーダー資金集中運営管理規定》(滙発[2019]7号)に規定される条件と手順に基づき、オフショア売買業務を含む経常項目資金集中入送金及び差額相殺決済業務を行うものとするとされています。なお、当該管理規定第二十四条の規定と本通知内容が一致しない場合*2、本通知に準ずるとされています。

人民銀行と外貨管理局は徐々に本通知の普及を進め、オフショア国際貿易を展開するビジネス環境の整備に努め、サービス貿易の更なる発展を目指すとされており、このような入送金業務が次第に一般的に操作できるようになるには少し時間がかかるかもしれませんが、今後の商流検討の幅が広がることが期待されます。

*1

「一線税関」は保税区エリアが国境にある場合に保税区と海外との境が一線税関となる。

これに対し「二線税関」は、保税区と国内との境(区内外の境)で、一線税関と二線税関の間(若しくは保税区が内陸にある場合は二線税関の内側)は保税区域であり、区域内の貨物は関税・増値税が免税扱いとなる。保税区域内は「国内関外」とも呼ばれる。

*2

当該管理規定の第二十四条には、多国籍企業のグループ企業がオフショア売買業務を行う際、経常項目資金集中入送金と差額相殺決済に組み入れてはならないとしています。