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中国・コロナ禍の中国現地法人設立実務について

コロナ禍の環境での生活やビジネスが長期化する中、中国での製品調達や、中国市場への販売計画のための中国拠点設立を進めたい日系企業も少なくないと思われます。中国のゼロコロナ政策も継続の模様であり、ノービザでの入国は不可、就労ビザ申請の前提となる中国側政府当局(外事弁公室)発行の招聘状(インビテーション)も申請受理さえ滞る状況が続くなか、遠隔操作で現地法人等の設立業務をどのように進めることができるか、広東省深セン市における2022年3月1日現在の実務上の注意点をまとめました。

設立申請に含まれる書類について

現地法人設立登記申請時には主に次のような書類及び情報を揃える必要があります。

  1. 登記住所の選定と賃貸契約書の締結
  2. 政府登記申請フォーマット
  3. 定款
  4. 投資者の資格証明(法人の場合登記証書類、自然人の場合身分証明書)
    ※公証認証手続きが必要
  5. 法定代表者・董事・監事・総経理等の身分証明書コピー
  6. 株主構成図(商務部門及び銀行提出用)
  7. 各政府機関及び銀行への連絡担当者名及び携帯電話番号

登記住所

各地でシェアオフィス、サービスオフィス等との賃貸契約も可能です。その際には、銀行による実態確認に堪えられるよう、必ず、隔てられた専用の部屋であることが必要なのと、会社登記部門である市場監督管理局による年度検査時、登記住所と実際の経営場所は一致する必要があり、会社登記できる部屋であることを確認する必要があります。賃貸契約は現地法人や銀行口座ができる前に契約し支払いを実施しないといけないため、初回の支払い方法についても確認し、設立後の支払/国外から入金の可否を確認してください。

定款

各市には株主や董事の構成に応じた定款のひな形があり、(1)現地法人の社名、(2)経営範囲、(3)資本金(通貨と払込スケジュール)、(4)役員構成 等について検討し記述します。
(1)社名をシステムで予約登録、期限に留意します。
(2)経営範囲:当局システムに設定される経営範囲の文言から選択して設定します。「許可経営範囲」に属する内容は、設立後に業種管理部門へのライセンス申請が必要、申請条件は設立前に要確認(資本金額や人員数、オフィス面積等に係る場合があるため)です。
(3)資本金:定款に登録資本金の通貨と払込スケジュールを記載。払い込みは何年以内と特定せず、経営期間内とすることも可能です。中国の外貨管理では資本項目取引が特に厳しく、資本金専用の口座を開設する必要があることと、資本金を送金するのは投資者名義の口座からのみ可能である点にご注意ください。
(4)役員構成について

董事(取締役)

董事会を設置しない=執行董事の場合、董事1名を株主が任命し登録。

董事会を設置する場合、董事3名以上を株主が任命し登録。

法定代表者

現地法人を代表して民事活動を行う責任者であり、董事長、執行董事、(総)経理が担当することが可能です。

監事

監事会を設置する場合、株主代表と従業員代表を含む3名。

監事会を設置しない場合、1名若しくは2名で、役員との兼任は不可となります。

法定代表者は現地法人所在地税務局にて実名認証手続き(現場で本人がパスポート原本を提示)を実施する必要がありますが、コロナ禍で猶予されています。

更に、銀行では口座開設手続き時、オフィスの現場確認と同時に法定代表者の現場面接若しくは身分証原本の提示を要求することが多く、投資者本国に所在する支店での面接対応可否やウェブでの遠隔面接可否を事前に確認する必要があります。

投資者の資格証明コピー、⑤役員等の身分証明書コピー

投資者が日本企業であれば登記簿謄本等を日本の外務省経由中国大使館にて公証手続き、香港企業であれば営業許可証や登記証書他登記関連書類を香港の中国政府委託公証弁護士により公証手続きする必要があります。香港企業を投資者として香港で公証手続進める際、日本人の身分証明書の公証認証は基本的に本国の日本での公証手続きを実施する必要がある点にご注意ください。

株主構成図について

商務部システム登記時の記入情報の一つです。銀行によっては株主を自然人まで遡及して記載することを要求することがあります。

連絡担当者・電話番号登録

各政府機関(会社登記部門である市場監督管理局、税務局、税関、社会保険局、銀行等)のシステムに、現地法人の連絡担当者名とその電話番号を登録する必要があります。政府機関では随時この担当者連絡先にテキストメッセージ等で必要情報を発信し、登録された電話番号あてに確認や問合せの電話を入れるものです。

このうち、市場監督管理局には会社の固定電話番号と担当者の携帯電話番号が登録されますが、毎年6月頃の年度検査に際し、コロナ禍2年目の2021年には外資企業のオフィスに事前電話確認が行われ、電話に出ない場合、実体未確認企業として市場監督管理局HP上の企業登録情報公示画面にて、異常名簿への掲載が行われました。商事登記関連の規定上、異常名簿掲載が一定年数を超えると営業許可証取消のリスクがあり、また対外的な信用も低下するため、企業は異常名簿掲載の解除手続きを早期に実施する必要があります。

なお、携帯電話番号は中国の番号である必要があり、中国での携帯電話番号は実名で購入する必要があるため、現地法人設立前に中国の携帯番号を入手する方法は限られますが、香港―中国大陸間ではSIMカード販売の相互乗入があり、香港の販売業者等を通じた携帯番号の入手が検討できるかと思います。

法定代表者と董事(長)の役割

法定代表者や董事(長)・執行董事は株主が任命、(総)経理は董事会若しくは執行董事より任命とされており、特に法定代表者は前述の通り現地税務局や銀行への現場対応業務が発生するため、コロナ禍では、中国国内にいる人員を法定代表者に任命することもよく見受けられます。

法定代表者の責任義務には、行政当局に対する責任、例えば税務局に対する税金の滞納や過少申告があり、税務局から調査される場合に、調査に対応する責任を負う、または調査に際し一定の行動制限を受ける可能性もあるなど、現地法人が当局に調査・処罰される際に法定代表者も代表者も調査・処罰対象となること等が挙げられます。現地法人の清算に際しても、債権者への対応責任等がありま
す。

一方、董事長をリーダーとする董事会若しくは執行董事は、会社経営管理機構としての機能を担い、総経理や財務責任者等の現場高級管理職者を任命し、社内規定を制定し、経営計画と実績を制定、承認、株主へ報告する役割を負います。 

総経理は董事会に対して責任を負い、会社の生産経営管理責任者であり管理制度の立案、人事の立案、経営計画の立案を行う役割を負います。

法定代表者は董事長を含む董事メンバーが主に会社のガバナンス・経営管理を司るのに対し、主に現地社会における対外的責任を負う役割を果たす人となり、その社内における職位は、法定代表者が董事長若しくは執行董事若しくは総経理が担当できるとされている通り、組織の長であるとは限りません。従い、会社の対外責任は法定代表者、会社組織の最高責任者は董事長が担う、内部統制に不備無く且つ現地対応を漏れなく行う体制を、中国現地にいる人員と、国外にいる株主側とで分担することが可能となります。法定代表者が総経理を兼任する場合、対外責任を追うと同時に、日常生産経営管理責任を負うことになります。