2021/22年度予算案で財政司長は、下記の税制措置を提案した。当該措置の全ては施行前に、関連法規の修正を必要としている。

  • 2020/21年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額の軽減
  • 2021-22年度の商業登記費の免除
  • 香港の証券取引に課される従価印紙税率の引上げ

当該法案及び実施内容のハイライトは下段に示されている通りである。よくある質問に対する回答(FAQ)及び当該措置が実施された場合に、上記の各項目が如何に納税義務者の給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減するかを示す例示も併せて提供されている(※ここでは各FAQ及び各例示の日本語版は割愛)。

原文当該措置が実施された場合の給与所得税並びにパーソナル・アセスメントの税額を計算したい方は、香港政府によって提供されている納税額自動計算プログラムを使用することが可能。


2020/21年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減

財政司長は、2020/21年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額に対し、当該税年度に限定して、10,000ドルを上限とする100%の減税措置を提案した。当該減税措置の実施に当たり、立法会での可決承認が必要となる。

利得税(法人・個人事業)に係る税額控除上限額は、事業単位毎に適用可能である。給与所得税に対する控除上限額は、納税義務者毎に適用可能であるが、夫婦で共同申告(ジョイント・アセスメント)を行う場合は、夫婦単位毎に適用される(すなわち、合計で10,000ドルの控除上限額)。パーソナル・アセスメントを適用する場合は、原則納税義務者毎に適用可能であるが、既婚者の場合は必ず夫婦揃って適用しなければならず、夫婦単位で10,000ドルを控除上限とする当該減税措置を享受することとなる。

当該減税措置は、資産所得税には適用されない。賃貸収入がある個人は、パーソナル・アセスメントを適用できる場合、パーソナル・アセスメントの下で当該減税措置を享受することができる。

給与所得税及び利得税(法人・個人事業)それぞれに課税される納税義務者(パーソナル・アセスメントを適用できない場合)は、それぞれの税金に対して当該減税措置を享受することができる。事業収入や賃料収入のある個人でパーソナル・アセスメントを適用できる場合、パーソナル・アセスメントの下で当該減税措置を享受することができる。当該ケースの場合、パーソナル・アセスメントを選択しない場合、享受しうる減税額とは異なる可能性がある。正確な減税額は、ケース毎に判断される。税務当局は、パーソナル・アセスメントの選択が納税額を減額できるかどうかをケース毎に確認し、最も有利な方法で納税義務者を査定する。

パーソナル・アセスメントの適用を希望する場合、納税義務者は、2020/21年度給与所得税申告書(BIR60)の項目7に記入しなければならない。事業収入もしくは賃料収入がなく、給与所得のみの個人は、パーソナル・アセスメントを選択する必要がない。

当該減税措置は、2020/21年度の税額査定における納税義務者の納税債務を軽減する予定。納税義務者は例年同様、2020/21年度利得税(法人・個人事業)申告書並びに給与所得税申告書を提出しなければならない。関連法案の成立後、香港税務当局は最終査定において当該減税措置を有効とする。当該法案の成立前に発行された2020/21年度の最終税額査定書に関して、香港税務局は当該法案の成立後に再度査定を実施する予定である。これに対し、納税義務者は特段申告や照会を税務当局にする必要はない。

当該減税措置は2020/21年度最終税額に対してのみ適用され、同年の予定納税額に対しては適用されない。従って、当該減税措置とは区分して、納税義務者は依然として予定納税額を期限通りに納付する必要がある。既に納付済みの予定納税額は、2020/21年度最終査定額及び2021/22年度予定納税査定額に対する納付に対して充当される。万が一、超過残額がある場合は還付されることとなる。

課税所得の累進税率の調整及び累進課税幅の増額(※前年度より変更無)

評価年度 従来(2017-18年度まで) 現行(2018-19年度以降)
課税所得純額 (累進幅)香港ドル 税率 課税所得純額 (累進幅)香港ドル 税率
第1段階 45,000 2% 50,000 2%
第2段階 45,000 7% 50,000 6%
第3段階 45,000 12% 50,000 10%
第4段階 50,000 14%
135,000 200,000
残額 17% 17%

各所得控除項目の増額(※従前の項目は前年度より変更無)

評価年度 従来(2017-18年度まで)
香港ドル
現行(2018-19年度以降)
香港ドル
基礎控除(独身) 132,000 132,000
基礎控除(既婚者) 264,000 264,000
寡婦(夫)控除 132,000 132,000
子供扶養控除
 第1子から第9子まで各一人当たり 100,000 120,000
 誕生の年の増額 100,000 120,000
兄弟(姉妹)扶養控除 37,500 37,500
父母祖父母扶養控除
 父母祖父母扶養控除 (60歳以上及び60歳未満かつ障害者) 46,000 50,000
 父母祖父母扶養控除 (55歳~59歳まで) 23,000 25,000
付加父母控除祖父母控除 (年間を通じて納税者と同居している)
父母祖父母扶養控除 (60歳以上及び60歳未満かつ障害者) 46,000 50,000
父母祖父母扶養控除 (55歳~59歳まで) 23,000 25,000
老人介護施設費用控除 92,000 100,000
障害者扶養控除 75,000 75,000
自己障害者控除 75,000
自己学習費用税額控除年間上限額 100,000 100,000
MPF自己負担控除年間上限額 18,000 18,000
適格医療保険制度任意負担控除額
(※2019-20年度より追加された項目)
8,000
適格繰延(据置)年金MPF任意負担控除額
(※2019-20年度より追加された項目)
60,000

生計面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)

2021/22年度については、①18歳以上の香港永住者及び居住者に対する5,000ドルの電子商品券の支給、②課税対象となる個々の居住用不動産に課される不動産税額に対し、第1及び第2四半期に最大1,500ドル、残りの四半期に最大1,000ドル免除、③適格対象となる居住用不動産の電力口座所有者に対し、個々の口座当たり1,000ドル電気料金補助金を交付、④総合社会保障援助(Comprehensive Social Security Assistance: CSSA)や高齢者手当(Old Age Allowance)、高齢者生活手当(Old Age Living Allowance)並びに障害者手当(Disability Allowance)などの各種社会保障給付額を半月分追加給付し、就労家族手当(Working Family Allowance)や労働奨励通勤手当(Work Incentive Transport Subsidy)についても同様の措置が適用、⑤2022年度香港中等教育修了試験(Hong Kong Diploma of Secondary Education Examination: HKDSE)を受験する学生の受験料を政府予算から拠出、⑥返済期限を最長5年、固定年利1%、最大平均雇用収入の6倍かつ8万ドルまで、失業者に対する政府保証の低利ローンの実施、⑦新型コロナウイルス対策として、約3,000棟の老朽化したビルにおける排水管の修理や付替えを推進すべく10億ドルの拠出、などの措置が実施され、これらの他にも市民の生計を支援すべく、逐次政策を策定していく予定である。

経済面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)

2021/22年度に関しては、⑧政府サポートの下、従業員再訓練委員会(Employees Retraining Board: ERB)による「愛の特別付加価値計画」の継続、⑨課税対象となる個々の非居住不動産に課される不動産税額に対し、第1及び第2四半期に最大5,000ドル、残りの四半期に最大2,000ドルを免除、⑩前年度より継続して8ヶ月間、非居住用不動産の月額上下水道料金の75%を免除(一戸当たりの月額上限はそれぞれ20,000ドル及び12,500ドル)、⑪地政総署が管轄する商業及びコミュニティ用途の政府用地の短期借用、食物環境衛生署がリースする公設市場の出店場所、政府産業署によってリースされる飲食店及び小売店、海事処が管轄している公共の貨物積卸区域、並びに魚農自然護理署によって管理されている政府卸売市場における出店場所及び施設等に対し、継続して6ヶ月間75%(政府により閉鎖要求となる場合は100%)の賃料減額、⑫600万ドルを上限とした政府100%保証の企業向け低利かつ元本返済延長ローンの実施、⑬6.6億ドルを割当て政府による期間限定の職務を創出、⑭ブランディング、国内市場の更新及び開拓のための特別基金(Dedicated Fund on Branding, Upgrading and Domestic Sales、以下「BUD基金」)へ15億ドルを投入し、資金提供最大額を600万ドルへ増額、⑮旅行業界を復興させるため、香港旅遊發展局(Hong Kong Tourism Board)へ7.65億ドルを追加拠出、⑯向こう2年間にわたり創科創投ファンド(Innovation and Technology Venture Fund)へ95億ドル投入、などの措置が実施され、これら以外にもデジタル化や環境関連含め、中小企業支援を中心に、幅広い優遇支援措置が取られる予定である。

その他の措置や一部増税(※個別に法改正や既に実施済み)

2021/22年度においては、税務上の優遇措置に加えて、オープンエンド型ファンド会社が香港に設立もしくは香港に拠点を移転する際の補助金を提供することや、香港の不動産投資信託へ補助金の提供を通じて上場を後押しする政策等が加わっているが、一方で、環境問題や財源確保などの観点より、2035年までにガソリンなどの化石燃料車両による自家用車新規登録を停止する方針と合わせて、2021年2月24日以降、電気自動車を含む自家用車の車両初回登録税の各累進課税幅における税率が15%、車両免許料を30%、各々即時引上げとなっている。その他、過年度に引続きインフレ連動型債券であるiBondの150億ドル発行や、元々65歳以上の申請要件が修正され、香港居住者で60歳以上の高齢者を対象とした銀色債券(Silver Bond)も240億ドルが発行される。さらに、向こう5年間の間で環境配慮型の事業に使途が限定された緑色債券(Green Bond)1,755億ドルが発行される。

2021-22年度の商業登記費の免除

財政司長は、2021-22年度の商業登記費を免除することを提案した。

香港の証券取引に課される従価印紙税率の引上げ

財務司長は、香港の証券取引の取引金額に対して課される従価印紙税率を、買い手と売り手の両方に対し0.1%から0.13%に引上げることを提案している。当該措置は、関連する立法手続きが完了した後、その改正条例によって指定された日(2021年8月1日)に発効する。

2021年2月24日付英語原文(IRD : 2021-22 Budget – Tax Measures

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