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2016年1月、国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、以下「IASB」)は、リース会計に係る新基準である「国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、以下「IFRS」)第16号リース」を公表し、これに呼応して、財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board、以下「FASB」)もまた、リース会計に係る新基準となる「米国会計基準コード化体系(Accounting Standards Codification、以下「ASC」)」第842号リース」を、同年2月に公表しています。

長期間に渡って、IASB並びにFASBが共同で策定・推進してきたリース・プロジェクトは、各々で最終的に公表された基準草案上、完全なコンバージェンスに至りませんでしたが、IFRS並びにUS GAAPともに、借り手側の会計処理において、使用権資産及びリース負債が原則全てのリース契約に対し認識される点を含め、重要性の高い項目はほぼ一致しており、これが世界の多くの企業に重大な影響を与えることが示唆されていましたが、ここ香港でも、IFRSにほぼ完全準拠する「香港財務報告基準(Hong Kong Financial Reporting Standards、以下「HKFRS」)第16号リースによって、2019年1月1日以降に開始する会計年度より、適用が必須となっています(HKFRS第16号リースが発表されたのは2016年5月でIFRS同様早期適用も可能でしたが、おそらく実施されていたところはかなり少数派かと思われます)。

HKFRS第16号リースを詳細に解説した文献やコラムを多数見受けますが、ここでは借り手側で適用される際の一般的な処理方法の考え方に重点を置いて解説します。まず、従前のリース会計基準であったHKAS第17号リースと比較すると、借り手側のリースに係る会計処理が大きく変わることになります。HKAS第17号リースでは、借り手側のリースの会計処理は、リース契約をオペレーティング・リースとファイナンス・リースの2区分に分類するもので、各々で会計処理が明確に異なっていました(表1参照)。


<表1> HKAS第17号リース下での区分及び会計処理
オペレーティング・リース ファイナンス・リース
リース会社などの貸し手側へ支払うリース(レンタル)料を費用計上する賃貸借処理となる。 リース契約の対象資産について資産計上し、一定期間に渡って減価償却する。リース債務は、実効金利法の下、支払利息を認識する売買処理となる。

HKFRS第16号リースでは、借り手は、賃貸借処理していたオペレーティング・リースも含め、「短期リース(リース期間が1年以内のリース)」及び「少額資産(5,000米ドル未満)リース」を除いたすべてのリース契約を原則、オンバランス(資産計上)することとなります。香港においては、実務上、事務所や社宅賃貸借契約、比較的高額な事務用機器の等で、かつ1年以上の長期で解約不能でかつ高額なリース契約が多いため、これによるオンバランス化が増加する可能性が、他国と比較し高いと考えられます。

リース債務(Lease Liability)に含まれる項目として当初認識時に、借り手がこれから支払うリース料の総額(元々の賃料総額)の現在価値(Present Value、以下「PV」)を測定します。事務所や社宅賃貸借契約書の固定賃料の支払いのみを含むリース契約(上述の「短期リース」並びに「少額資産リース」を除く)の場合は、比較的簡易な計算となります(※ある指数や為替レートに依る変動リース料、残価保証で借り手によって将来支払われる可能性がある金額、借り手が行使することがほぼ確定している買取りオプションの行使価格並びに早期解約による支払等はここでは無考慮)。リース債務から除かれる項目として、リース債務から除かれる決済項目が含まれるリース契約が存在します(※役務提供の対価としての支払(仲介手数料や弁護士報酬等)や付属している資産の売却や使用によって変動する支払は、非リース要素と見なされます)。

次に、使用権資産(Right-of-use (ROU) Asset)の計上時に考慮すべき事項として、上述のリース債務の金額に加えて、初期段階で発生する直接コスト、前払リース料並びに資産除去債務(Estimated Demolishing Expenses)等が挙げられます。使用権資産は、リース期間に渡って定額法で減価償却認識されることとなります。

従い、以前の仕訳は極めて簡易(借方)地代家賃やリース料/貸方)現預金、前払費用もしくは未払費用)でしたが、今後は下記のようなイメージ(理解しやすいよう資産除去債務の要素は切離し表示)となります。

<表2> HKFRS第16号リース下での区分及び会計処理イメージ
借方 貸方
Right-of-use (ROU) Asset 使用権資産(リース債務、初期段階で発生する直接コスト、前払リース料並びに資産除去債務等) ※当初認識として Lease Liability + Cash & Bank or Accrued Expenses リース債務(借入利子率で割引)+現預金もしくは未払費用(仲介手数料及び弁護士報酬等として)
Depreciation 減価償却費(通常は定額法) ※以降認識として Accumulated Depreciation 減価償却累計額(キャンセル不可の契約期間に渡り使用権資産を毎月償却
Interest Expense 支払利息(利回りが一定) ※以降認識として Lease Liability (キャンセル不可の契約期間に渡りPVを毎月認識)
Lease Liability リース債務 ※以降認識として Cash or Bank 現預金(キャンセル不可の契約期間に渡り毎月実際の賃料支払)
借方 貸方
Right-of-use (ROU) Asset 使用権資産 ※当初認識として Provision for Estimated Demolishing Expenses 資産除去債務(借入利子率で割引)
Interest Expense 支払利息(利回りが一定) ※以降認識として、 Provision for Estimated Demolishing Expenses 資産除去債務(キャンセル不可の契約期間に渡りPVを毎月認識していく処理)

リース債務の残高に対して、残りのリース期間に渡って、利回りが一定となる借入利子率の下、支払利息を計上し、リース料と支払利息の差額がリース債務の返済として認識されることとなります。リース債務の残高が減少するにつれて、支払利息額もまた減少していくため、使用権資産を定額法で減価償却していく場合、支払利息+減価償却費の金額は徐々に減少していくこととなります。

その他、使用権資産は減損会計の対象となる点や、リース料の変更等、リース契約内容に改訂が発生する場合は、リース負債を再測定し、使用権資産額を調整する必要がある点にも留意が必要です。

元々HKAS第17号リース下で賃貸借処理していたリース契約を、HKFRS第16号リースオンバランス化することにより、従来と比較し多額の資産及び負債が計上され、BS上の総資産及び総負債額が大きくなりますが、PL上も以前はリース料のみが損益に計上されていたものが、使用権資産から取崩される減価償却費並びにリース負債から生じる支払利息という形で認識されることとなるため、管理会計上の影響も大きいと考えられます。

実務上、日本の企業会計基準では当該リース処理が議論されている状況ですが、コンバージェンスされるタイミングが未だ明確ではないようで、既にIFRSを適用開示している企業グループは、既に当該基準を適用している香港子会社の数値をそのまま受け入れることとなりますが、大半はグループ企業の連結上、使用権資産及びリース債務を取消した上で、従前(日本では現行)の会計処理に戻すことが考えられますし、既に事例として、日本の上場企業グループとは言え、香港子会社の管理会計上は従前の方法で進め、HKFRS第16号リースに従った会計処理を、当地の年度末監査修正仕訳として認識するのみ、と判断している先もあるようです。専門家への相談も取り入れながら、上述の判断含め、進めて頂ければと存じます。

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