中国 中国会計税務

[中国会計税務] 実務基礎知識3(経理規定の基礎知識6)

 今月のコラムは、不正の温床となり、内部統制でも重要な項目となる購買、支払業務について紹介します。

(9)購買管理

企業の購買活動は、安定した生産活動と適切な企業収益確保における重要な要素である。現地法人にとっても基幹的な業務の一つであるが、取引先との接触が多く、金銭が関係する内容であることから、不正行為が発生しやすい業務でもあり、適切な規定を制定して、内部管理を徹底することが必要である。

① 購買計画
購買先の選択、購入単価の決定等について、その選定方法や決裁者を明確にする。購買先の選択に関しては、金額ももちろん重要であるが、仕入先の品質保持能力、納期厳守や急な事態への対応力等も考慮して、十分な調査を行い決定する。
また、仕入商品の見積に関しても、複数社からの見積を比較することは当然であるが、購買部門に全てを任せるのではなく、製造や経理部門等の他部門も独自に見積を取ることで、現地法人内部の牽制機能が働き不正を防止することに繋がる。
② 発注
月次や年間の購買計画に基づいて購入する物品に関しては当該計画に基づき、また、その他は各担当部門からの申請に依り発注が行われることが一般的である。発注までの業務フローは、会社規模や購入物の特殊性等により異なるため、各企業での手順等を作成することになる。発注申請においては、購買金額によって、稟議書作成や部門長承認等で済ませる等の区分を設けることで、業務負担や効率を考慮した内容に工夫することが求められる。また、購買部門は、自社の生産活動に影響を及ぼさないよう、発注した商品の納期管理にも責任を持たせなければならない。
③ 検収
購入先から受領する商品は検収を行った上で、自社の商品として所有権が移転されることになります。検収においては、商品種別や数量、品質の確認を行いますが、検収業務は以下の点に留意した規定作成が望まれる。

・業務担当の区分
発注と検収担当者を分けることで、架空発注等の可能性を防ぐことが可能となる。また、現地法人が小規模で、同一人が兼務をしている場合には、総経理等の管理職が時間のある際に検収へ立ち会うとうして「監視されている」と認識させることも効果がある(中国語が分からなくても、数量確認は出来るので問題ないです)。また、専門的な商品を購入した場合には、自社内の商品担当者にも検収に立ち合わせ、不具合や問題を検収時点で発見することで、立証責任の回避といった、将来の争議へ発展させないことに繋がる。

・伝票と商品の照合
検収においては、伝票と商品の照合を行う。この際に、取引先から発行される納品書で検収が進められると、受注過誤が認識されない可能性があるため、自社発注時の書類を用いなければならない。

④ 支払
中国現地法人の支払いに関しては、一般的に会計担当者へ管理者の管轄となっていることが多く、購買担当者との業務分離はされているため、送金過程での不正は発生しづらいかと考えます。但し、購買や検収と直接に関係のない担当者が行うことで、現場の状況が掴めず、取引先からの請求額に対して疑いなく送金をしてしまい、会社に不利益を及ぼしてしまうこともある。

・購買内容と請求の不一致
 中国では、費用請求時に発票を送付していることがある。発票では、一定期間の取引が集約されて発行されることもあるため、検収結果との照合を行う必要がある

・不良品内容の請求
 検収で確認して不良品に対して、返品したにも関わらず代金が請求されてしまう。

 上記の問題は、不正防止ではなく、会計部門や支払担当者が、社内の仕入情報を適宜に把握出来る内部規定を作成することで防止する。なお、仕入先によっては、商品と発票が同時に引き渡される場合、或いは発票が事後的に送付されてくる会社、前払金で支払っている場合等様々な形態が存在するため、各々の事象を想定した対応を経理規定で定めて、過誤や不正の発生を未然に防ぐ努力が必要となる。