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前回は、インドネシアの税務・会計について書きました。インドネシア最終回となる今回は、労務面ついて見ていきたいと思います。

「低賃金時代終わった」インドネシア・ユドヨノ大統領

ジェトロが2012年に行った調査では、日系企業がインドネシアで経営を行うに当たっての問題点として、従業員の賃金上昇・現地人材の能力・意識の低さ、安定的な人材確保の困難など、主に労務面の課題を挙げた企業が目立っています(在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査2012年)。東アジア主要国のなかで労働コストを比較すると、かつてインドネシアは中国と並んで最も賃金水準が低いレベルでした。しかし、最近ではジャカルタを中心に賃金の上昇傾向が続いており、ASEAN諸国の2012年賃金ベースアップ率を見ると、インドネシアは9.6%の上昇率でベトナム(19.6%)に次いで2位。2013年の最低賃金は労働組合の影響力増大などを背景に、ジャカルタ市内で44%アップとなるなど、主に都市部や主要工業団地の所在地域を中心に急激な賃金上昇が続いています(表1参照)。一方で、まだまだ国内に優秀な労働力や中間管理層・技術者などが不足している現実もあります。優秀な人材は常にキャリアアップを目指して数年おきに転職を繰り返す傾向にあり、日本のように長期安定的な雇用は比較的難しいと言えるでしょう。

インドネシア人の雇用・賃金形態

インドネシアにおいて認められている従業員のステータスは正社員、契約社員、日雇い社員の3種類です。正社員の場合、最高で3ヶ月の試用期間を設けることができます。契約社員は2年以内の契約期間が原則で、最長1年の延長が1回のみ認められています。契約社員はあくまでも暫定的・補足的業務のために雇用され、主要・固定業務に用いることはできません。雇用契約書に記載がなければ解雇・自主退職の際に退職金は不要ですが、会社都合で雇用契約期間が終了する前に解雇する場合、残存契約期間の賃金を従業員に対し損害賠償金として支払わなければなりません。逆に従業員が自主退職する場合は従業員が会社に対して損害賠償金を支払うことになります。一方、日雇い従業員は、出勤状況に基づき賃金が支給され、期間或いは仕事の継続性が決まっていない特定の仕事を行うために就労する従業員で、原則として3ヶ月を超えない短期間で行う業務、一ヶ月に20日を超えない業務に対して雇用可能です。これ以上の期間就労させた場合、会社は正社員と同様の待遇をし、解雇の際には退職金を支払わなければならないとしています。

賃金は基本給と固定・変動緒手当で構成され、その他には継続して3ヶ月以上の勤続期間を持つ従業員に対しては、イスラム教断食明けのレバラン休暇の前に宗教祝日手当として、賃金の一か月分の賞与を支給しなければなりません。断食の期間は、多くの会社が勤務時間を一時間程度短縮するため、工場などではその時期の生産性の低下に備えてシフトを変更する等の調整が必要です。基本労働時間は週40時間となっており、時間外及び休日労働には残業手当を支給する義務があります。従業員の退職時には、勤続期間に応じた計算基準によって支給される退職手当と功労金のほか、未取得の年次休暇や労働者が雇用された地域に帰る費用等を補填する損失補償金が支払われます。

インドネシアでの雇用保険にあたるものとしてはジャムソーステック(Jamsostek)があり、労災、養老、死亡、健康保障の4つのプログラムから構成されます。会社負担率は業種に応じ、基本給与額の7.24%~11.74%です。外国人労働者にも加入を義務付けているものの、現状では日本の社会保険等に加入している場合、加入は任意となります。

アウトソーシング規定の改正で企業に新たな負担も

前述の直接雇用の他には、労働者派遣サービス(人材派遣会社との間の業務契約に基づき派遣される従業員)、実習生・見習い従業員(実習契約書に基づき、一定の訓練カリキュラムに沿って職業訓練を受ける従業員)、業務請負(仕事の成果又は仕事量に基づき賃金の支給を受ける労働者)等もあります。

2013年にはこの労働者派遣サービスについて大幅な改正が行われました。従来の規定は「会社の主要活動や生産工程に直接関係する業務では派遣労働者を使用できない」としていましたが、具体的にどのような業務が該当するのか明記されておらず、実際には多様な業務で派遣労働が利用されていました。多くの工場では、正規雇用と派遣労働者が同じ業務を行っているにもかかわらず、その待遇が異なる状況がありました。2012年1月に裁判所がこのアウトソーシングに関する条項について違憲判決を出し、それを受けて労働移住省が総局長回状を出したものの、労働組合側からは大臣規定の改正そのものを行っていないと不満の声が上がり、派遣労働者の待遇改善を求めて大規模デモが多発したため、この流れを受けた改正となりました。

最新のアウトソーシング規定は、会社は非主要業務の一部を「請負会社」か「人材派遣会社」に委託することができ、その業務とは具体的にクリーニングサービス、労働者向けのケータリング、警備員、鉱業・石油業の補助的サービス、労働者向け送迎サービスの5分野に明確に限定されています。この改正規定の施行後、企業は従来の派遣契約から正社員契約への転換を余儀なくされ、それに今年の大幅な最低賃金の上昇も加わって、大きな痛手となっています。このような状況が続けば、インドネシアの国際的な競争力向上を阻害しかねないとの危惧する声もあります。

何かにつけては大小のデモが頻繁に発生するインドネシアですが、昨年いったんは実施が決定されていたガソリン等の燃料値上げが大規模デモの多発により延期になった後、今年6月には再度値上げが実施され、ガソリンで約40%の値上げとなりました。交通インフラが不足しているインドネシアでは、二輪車や自動車が庶民の重要な交通手段ですが、今回の燃料の値上げは庶民の生活に大きな打撃を与え、この影響による物価の上昇が懸念されています。これが今後の賃金上昇にどのように影響を与えるか注目されるところです。

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[ビジネス支援室] インドネシア投資実態レポート (4) from 香港・中国・東南アジア法令情報サイト NAC Global .NET