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ベトナムは、近年チャイナプラスワンの一つとして大きく注目されており、主に日本をはじめ韓国、シンガポール等アジア近隣諸国からの外国直接投資が過熱しています。2008年の世界金融危機の影響で2009年度の外国直接投資は落ち込みましたが、経済成長率は高水準を維持しています。2007年1月にWTO加盟を果たしたことで市場が開放され、関税障壁の撤廃等の恩恵を受けることができ投資環境が改善されたこと、他の近隣諸国よりも政治、社会面で安定しており、また低い人件費を活用し低コストで生産活動を実現できるという、比較優位性を魅力に多くの外国企業が投資をしています。

ではまずベトナムの投資環境について見ていきましょう。


(1)ベトナムの投資環境

① 市場の開放 ~ ドイモイ政策、WTO加盟

1986年ベトナムは、それまでの社会主義的経済である計画経済に行き詰まりを感じ、ドイモイ政策(日本語の意味は「刷新」)をスタートさせました。利潤追求を否定した社会主義路線を見直し、企業の自主権拡大や対外開放政策等、市場経済メカニズムを導入し経済改革路線を採用したのです。

1990年代半ばにはドイモイ政策の効果により経済成長が加速しGDP成長率9%を達成しました。1997年のアジア通貨危機の影響により一時ベトナムへの外国投資が控えられましたが、2000年以降は国際・地域経済の統合を目指し外国投資の誘致を積極的に行いました。

2007年1月のWTO加盟を契機に外資が参入できる市場分野が拡大し、2009年には小売業へも外資100%企業が参入できるようになり、今後もベトナム市場への外国投資が期待されます。

② 加速する経済成長

市場経済への転換後、ベトナム経済は6%から8%の高い成長率を続けています。特に2007年下半期から2008年上半期にかけて経済が過熱し急激なインフレに直面しました。2008年に政府は物価の抑制を第一優先課題とし、同年の経済成長率を目標としていた8.5%~9%を7%に下方修正し各種インフレ抑制策を講じました。その結果、2008年のGDP成長率は6.18%に留まりました。2007年の8.46%に比べれば低い水準ですが、世界金融危機の影響を考慮してもかなり高い水準といえます。 2010年上半期は6.16%を達成し、ベトナム政府は2010年の目標である6.5%の実現に自信を持っています。

③ 政府による外国投資誘致政策

ベトナム政府は更なる外国投資を誘致するために、2006年に従来の外国投資法を改正し、投資の自由度を高めた共通投資法及び統一企業法を制定しました。またWTO加盟に伴い国内法を順次改正し、 政府による許認可手続きの簡素化及び迅速化、内外企業差別の廃止、投資形態の多様化など、外資企業が進出しやすい環境になってきています。

また、ベトナムには150を超える工業団地や輸出加工区があります。立地条件が良くインフラが整備されており、税制面で優遇を受けられる等のメリットがあることから外国企業の誘致に一役かっています。

(2)日系企業進出状況

①増加する日系企業

ベトナムに進出する日系企業は年々増加し、現在ハノイ商工会に384社(2010年8月末現在)、ホーチミン商工会に484社(同)が会員登録しており、さらに商工会に加入していない企業が数百社あるといわれています。

1990年代に入り、日本の対ベトナムのODAが再開したことをきっかけに日系企業の進出が増加しました。1997年のアジア通貨危機をきっかけに投資は控えられましたが、2003年には、投資環境を改善し投資を誘致することを目的に首相同士が合意した日越共同イニシアティブが立ち上げられました。これに2007年のWTO加盟を見越した動きとが相まって、2005年に第2次投資ブームが起きベトナムへの投資が一気に増加しました。


ベトナムは、中国一極集中リスクを回避するため「チャイナプラスワン」の投資先として、他のアジア地域より治安が安定していること、労働力の質の高さなど比較優位で魅力的な投資先して認識されています。

②低い人件費

ベトナムに投資する大きな理由の一つは、安価な労働力を活用することで生産コストを抑えた企業活動が可能になることです。

10年前は安価な労働力を求めて多くの日系企業は中国に進出をしましたが、主に沿海地域の発展と共に人件費が上昇し中国の優位性が低下しました。

アジアの主要都市別人件費比較表から分かるように、ベトナムの人件費は突出して安価であり、多くの企業を引き付ける要因となっています。


一方労働力の質についても、平均年齢が若く識字率も95%を超えていること、また勤勉なことから生産性が高いといわれています。国民性も穏やかで組織に従うという日本人気質と共通する部分も見受けられます。

③高い製造業進出割合

業種別で見ると電子機器や精密機械をはじめとする製造業が全体の8割を占めており、製造拠点又は輸出加工基地としての進出パターンが多くみられます。
2009年1月から一部の工業団地や優遇分野を除き、新規に工業団地に進出する際の法人税のインセンティブが廃止されるなど、製造業にとっては厳しい政策変更が行われました。それに伴い、海外輸出だけではなく、人口8,600万人のベトナム市場へ直接参入し国内販売を強化する動きが強まってきています。

(3)今後の課題

①インフラ整備

ベトナムでは道路の未整備や電力不足が問題となっており速やかな開発が望まれています。

今年に入り高速道路が開通するなど、幹線道路は少しずつ整備されてきていますが、基本的に産業道路と生活道路を共用しているため、特に通勤時間になると道路はバイクで溢れ渋滞を引き起こしています。

また電力は慢性的に不足しており、停電が頻繁で工場の操業に影響を及ぼしています。電力の需要に対して供給が追いついていないのが原因で、病院や行政機関を除く場所での計画停電も珍しくありません。今年に入りベトナム北部で大規模な電力発電プロジェクトが起工されましたが、電力不足解消にはまだ時間を必要とします。

②人材の確保

ベトナムは安価な労働力で比較優位を保ち外国投資を呼び込んでいましたが、賃金が上昇しており、優位性が相対的に低下する可能性が出てきました。賃金上昇の理由の一つとしてインフレが挙げられます。ベトナムでは2000年代後半からインフレになり、2008年には約20%のインフレ率になりました。インフレに合わせ平均賃金も年々上昇しており、他国と比較するとまだ低水準ではありますが中長期で見た場合、大きく懸念されます。

また、労働者の定着率の低さも懸念事項の一つといえます。ベトナムでは転職が頻繁で、機会があればより良い給与や労働環境を求めようとする傾向があります。企業側は雇用した従業員が長期で働いてもらうためにインセンティブを与える等の対策が求められます。

ベトナムは相対的な優位性を利用し外国投資によって経済成長を牽引してきました。投資環境としてはまだ改善の余地は多くありますが、成長著しい市場は当面外国投資を惹きつけるでしょう。

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