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世界有数の自由貿易港として名高いここ香港において、貿易及び物流産業は、4つの主要な産業の1つとして数えられており、毎日のように世界中のあらゆる業界のバイヤーが集う世界最大規模の展示会が開催されています。香港の貿易活動は、香港及び香港以外の国や地域(特に中国本土)の商品を、香港を通して他の国や地域へ再輸出する従来型貿易活動と、香港域外から購入した商品を、香港を通さずに香港域外の顧客に販売するオフショア貿易活動の2つの主な貿易活動によって成り立っています。

一方製造活動については、1970年代に日本や欧米諸国が低コスト生産のために香港へ進出してきましたが、現在の製造活動の拠点は中国本土に移っています。このような経済体系の下、香港税務局解釈実務指針(DIPN, Departmental Interpretation and Practice Notes)21号「利益の源泉地(Locality of Profits)」は、特に貿易活動及び製造活動における税務上の解釈において大きく進化を遂げ、正に「源泉主義(Territorial Source Principle of Taxation)」を如実に表していると言えます。


1. 貿易活動から発生する利益に係る税務上の取扱い

貿易活動に係る税務上の取扱いについては、非常に古くから議論が繰り広げられていますが、DIPN21号では、英国での判例からMagna Industrial社の案件等様々な判決を経て、下記の通り基本的な解釈が要約されています。
  • 売買契約が完全に香港で締結される場合、それに係る利益は原則として香港で100%課税となります。
  • 売買契約が完全に香港域外で締結される場合、いわゆるオフショア貿易活動となり、それに係る利益は原則として香港で100%非課税となります。
  • 販売契約のみ、もしくは購入契約のみ香港で締結される場合、原則として利益は香港で100%課税となりますが、「事実関係(商品がどこで購入され、販売されたか?どのように商品が調達され、保管されたか?どのように販売活動がなされたか?どのように注文が処理されたか?どのように商品が発送されたか?どのように資金が準備されたか?どのように支払が行われたか?等)」を考慮して判定されることとなります。
  • 海外の顧客の香港購買拠点を含む、香港の顧客への売上が発生する場合、その販売契約は香港で締結されていると推定されます。
  • 商品が香港のサプライヤーまたは製造者から購入される場合、その購入契約は香港で締結されていると推定されます。
  • 売買契約の締結が、香港域外への出張旅行まで要求されることなく、香港で電話やファックス等の手段で手配されておれば、香港で発生していると推定されます。
  • 売買契約は重要な要因ですが、利益の源泉地を決定するためには、貿易活動から発生する利益を創出するすべての関連業務について精査される必要があります。
単に香港の顧客へ商品を販売する、または香港のサプライヤーから商品を購入するだけでは、100%課税の範疇に当てはまらない可能性がありますが、貿易活動に係る利益について、前回解説した来料加工における50:50オフショアクレームのような税務上の取扱いを受ける余地はなく、100%課税か非課税の白黒はっきりした取扱いを受けることとなります。従って、たとえ営業活動の一部が香港域外で実施されたとしても、その部分だけがオフショア貿易活動としてみなされることはありません。

ここで、海外出張中の香港の従業員によって、もしくは香港域外の代理人によって、売買契約が完全に香港域外で締結されている場合、香港で営業活動が行われておらず、その従業員または代理人は、代表者のために常に交渉及び契約の締結を行う包括的権限を行使していると推定されます。

従業員や代理人が、香港での事業と関係なく契約を締結できる権限を所有していると考えられる場合、その従業員と代理人の営業活動は、通常同等の影響力があるものと推定されます。従業員による契約が完全に香港域外で締結されていることの主張を考慮する際、査定官は、上述した「事実関係」に加え、個々の旅程、ホテル及び経費の詳細を要求します。契約が香港域外の代理人によって発効していることを主張する場合、代理店契約、またはそれに代わる証憑が必要となります。

2. リインボイスセンターで発生する利益に係る税務上の取扱い

香港で提供された役務に係る利益は、香港で100%課税されます。従って、リインボイスセンターで提供された役務に係るコミッション収入や利益は、法人利得税(Profits Tax)の課税対象となります。リインボイスとは、資金、為替及び決済に係る業務を集中化することにより、貿易活動の効率化やリスクヘッジを狙うことです。一方、貿易活動に係る利益は、役務提供に係る利益ではなく、商業リスク(商品・在庫・信用・為替・資本等)を引受ける必要がある点で異なります。売上確認及び仕入インボイス発行業務は、貿易取引であることを示唆し、貿易活動に係る利益は、上述した1.で触れた取扱いの通りです。

リインボイスセンターに係る利益が、役務提供に係る利益で貿易活動に係る利益ではないとみなすことができる状況を類別することは困難であるため、香港税務局は、個々の案件に係る営業活動の種類やリスク内容について精査し判断します。このようにリインボイスセンターという概念は、税務上明瞭な回答を得られる業務形態とはみなされていません。

3. 購買拠点で発生する利益に係る税務上の取扱い

香港域外で営業活動を営む貿易会社が、商品の購入、商品化計画または情報収集を行うための購買拠点として、香港に支店を設立し、その支店の活動が上述した3つの業務のみに制限され、香港内外での販売活動に関与しない場合、法人利得税の納税義務は発生しません。購買拠点機能は、香港子会社や代理店によっても行使することは可能ですが、その場合、あらゆる販売行為には携わってはいけません。一方、そのような香港子会社や代理店が、役務提供の対価として受取るコミッションやその他報酬については、100%課税となります。

4. 製造活動から発生する利益に係る税務上の取扱い

商品が香港で生産される場合、利益を創出しているのは製造活動であるため、その商品の販売利益は100%課税となります。製造活動は、原材料の調達、労働者の雇用、商品の設計及び機械設備の使用等を包括的に含むものとされています。製造活動に係る利益は、役務提供に係る利益と同じく、香港での利益とオフショア利益に区分することが可能とされており、前回解説した来料加工における50:50オフショアクレームのような税務上の取扱いが1つの例です。

以上、貿易活動と製造活動に係る税務上の取扱いについて解説しましたが、貿易活動に係る税務上の取扱いについては、Kwong Mile社やING Baring社の案件で示された「先例や偶発的事象は利益の源泉地を確定しない」という概念と矛盾するという点で、各職能団体や専門家から議論が発せられているものの、今回のDIPN21号において明瞭な表現はなかったため、今後も専門的かつ物議を醸すトピックとなることが考えられます。従って、このように諸般の留意事項があるため、ウェブサイトで公開されている情報等をそのまま鵜呑みにせず、専門家への相談は必須です。

規制の少ない自由貿易港を目指し、発展してきたここ香港では、優秀な人材はもちろん、洗練された各種専門業者や支援サービス業者が存在するため、貿易活動を円滑に行う上で絶好の土地柄と言えます。それに加え香港の低税率、及び上述した税務上の取扱いを享受することができる可能性もあり、香港への進出や香港でのビジネス拡大はとどまる事を知りません。世界中未だ金融不安たる事象が見られますが、このような時期だからこそ、経済の荒波を乗り越えられるよう、上述も踏まえ熟考されてみては如何でしょうか。

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