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ボクは王様。なんとしてでもアイツに言うことを聞いてもらわなくちゃ。でもアメばっかりやると、どんどんアイツは図に乗ってくるよな。そんなにアメの在庫があるわけじゃないし、要求がエスカレートしてきたらまずい。逆にムチばっかりじゃ、アイツはそのうち暴れ始めるかもしれないし。さあ、どうやって使い分けるのが一番いいんだ!?

税制なんてのは、全くそういう世界。もちろんボクが政府で、アイツはアナタ。昔から、名君はアメを上手に使った人で、暴君はムチしか使わなかった人と相場が決まっています。ただ、どっちも庶民からお金を巻き上げたことには変わりは無いのです。ここでは、いかに上手にお金を集めるか、そのための仕組みを税制と定義しましょう。集めたお金の使い道は別問題として。

さて、お題はタックスヘイブン税制。平成17年から毎年改正されています。もちろん、改正の目的は「いかに上手にお金を集めるか」。平成22年改正では、そのための仕組みを大胆に変えてきました。そのためのアメとムチの使い分け方もなかなか見事。これまでの連載で説明した「統括会社」の創設もここでいうアメの一例ですが、ここではそれ以外のアメとムチについて説明していきます。


<アメ編>

(1)適用対象税率を25%以下から20%以下に緩和

これまでは、法人税率25%以下の国にある法人がタックスヘイブン税制の対象でした。ところがいまや世界的な法人税率の引き下げ競争の結果、全世界平均の法人税率は25%近くにまで下がっています。特に東アジアを見渡すと、中国・韓国・台湾は全て法人税率が25%以下ですから、東アジアでは日本以外は全てタックスヘイブン国、という異常な状況になっていたのです。

これが20%以下となると、アジア全体でも香港・台湾・シンガポールくらいと対象が激減します。ただでさえ複雑な税制なのですから、徴税側でも限られた人員では既に守備範囲を超えてる感もありますし、租税回避の可能性が高いところ(=より低税率の国)に戦力を集中すれば、ここはアメにまわしても徴税額は落ちないとみたのでしょう。一方、アメとしての宣伝効果は抜群ですので、今回のアメの目玉となりました。

(2)納税義務のある持株比率も5%以上から10%以上に緩和

これまでは、一つの株主グループでタックスヘイブン法人の5%以上保有していると納税義務者になりました。これが10%以上の保有へと緩和されました。かつては10%以上から5%以上へと強化された時期もあり、今回なぜまた10%に緩和されたのかについての具体的な説明は今のところ無いのですが、やはり今回導入されるムチに対する代償でしょう。さらに考えてみれば、この緩和による影響は、最大で課税所得の5%分しかない訳ですし、納税義務者自体もより大口株主に絞れますので、徴税の実効性から考えればそんなに悪い方向には働かない、との思惑があったのかもしれません。

<ムチ編>

これまでは、主たる事業が適用除外要件を満たしていれば、「副業」がどんな性質の利益であっても合算課税されることはありませんでした。従って、単独でやれば適用除外要件を満たせないような利益を「主たる事業」とうまく組み合わせることによって、合算課税から逃れるようなことも考えられたのです。

ところが、今回の改正では、「部分適用対象金額」という概念を創設することにより、このような課税逃れの道を実質的に塞いだのです。どんな利益が対象かは表を参照して下さい。要は事業基準と同様の考えで、典型的なペーパー所得が対象になっています。

あ、ちゃんとここでもアメを用意してありますね。これも表をご覧の通り、少額の場合はいいそうです。今回の改正を通じて、少額のところは譲歩するけど多額のところはいただきますよ、という方針が見受けられます。まさにこれぞ王道!となれば、庶民はどう対策する!?

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