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<前篇のあらすじ>
どんな人間の能力も正確に数字で測ることができる「カイケイ」というセンサーが発明された世界では、優秀な人間が正当に評価されることとなった。しかし、優秀ではないと評価された人間の間ではカイケイ対策下着「フンショクケッサン」が急速に普及していったため、カイケイの大発明に暗雲が漂っていた。そこでフンショクケッサンを根絶すべく、カイケイメーカーの専門技術者に頼んで下着チェックを行う「監査」という仕組みを導入。しかしその監査も万能ではないことが明らかになり、カイケイはその有用性を失いつつあった・・・。

確かに監査は万能ではありませんでした。しかし、フンショクケッサンにより自由にカイケイの数字を操作できるようになると、カイケイ自体の存在価値がなくなってしまいます。そこでカイケイ側は総力を挙げてフンショクケッサンつぶしの対策を練ったのです。


  1. まずカイケイ自体のバージョンアップを続けました。これによりかなりマニアックな能力まで数字で測ることができるようになりましたし、センサーの中にある程度のフンショクケッサンならば識別できるようになりました。
  2. 次に監査がやりやすいように改善しました。監査基準というものを作り、誰が監査しても同じ結果になるようにその手続を定めました。その結果、監査をする人は事務的に作業できるようになったことでストレスが軽減され、相手の言うことに惑わされずにフンショクケッサン探しに集中できるようになったのです。
  3. さらに監査する人と監査される人の関係を厳しくチェックするようになりました。癒着につながりそうなところは徹底して排除するようにしたのです。さらに監査する人とは別の人間が監査結果を審査する仕組みまで作りました。こうすれば監査する人が癒着してたとしても、審査する人がそれを発見することができるため、癒着を無効化することができるからです。
カイケイ側はこのようにできる限りの手を打ったはずです。そしてカイケイは生き残ることができたのでしょうか?
  1. カイケイが広く受け入れられたのは、「どんな人間の能力も正確に数字で測ることができる」ことが大きな理由でしたが、「誰でも簡単に分かる」という点もそれに劣らぬ重要なポイントでした。しかし、カイケイ自体が複雑化したことにより、その結果は素人には理解不能のものとなり、一部のカイケイマニアにしか理解できない代物になりました。そのため、普通の会社はカイケイの数字だけでは逆に人間の能力を判断できなくなり、カイケイの価値自体に疑問を抱く者も増えてきました。
  2. 監査基準通りに手続が行われるようになり、初歩的なフンショクケッサンは相当減少したのですが、逆に高度なフンショクケッサンを見破れないケースが増えてしまいました。原因は手続が基準に縛られるようになってしまったことのよう。推理小説などではたいてい警察ではなく優秀な探偵が解決の糸口を発見しますが、知能犯に対しては平凡な百人よりも優秀な一人が必要であるということを示唆しているのかもしれません。
  3. 癒着対策はかなり功を奏したようです。目に見えるような癒着のケースは激減しました。しかし、この審査の仕組みは監査を監査するものですから、これまでよりもかなりのコストアップを余儀なくされました。また監査を二重にしたからといって、三重、四重にしたとしても完全に人間が行う以上、ゼロにできるわけではないのです。
さあ、カイケイが最終的に生き残れたかどうかはみなさんの想像にお任せするとして、このように、どんなに優れた発明でも、それを悪用する人がいる限り、どれほど対策を講じても事故をゼロにすることはできないのです。もちろん、限りなくゼロに近づけることはできるため、発明者側ではその努力を続けます。ただその努力の方向が間違ってしまった場合、そもそもの発明の価値がなくなってしまうことだってあるのです。

現在の会計や監査の方向性が全て正しい方向に向かっているのかについては議論の余地がありますが、少なくとも監査は絶対の特効薬ではないこと、また粉飾決算を限りなくゼロに近づけるべく業界を挙げて改善を続けていることだけお伝えできれば、この連載の価値があったと思っています。

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