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新聞やテレビを見ていると、年に数回は粉飾決算のニュースに出会うことがあるでしょう。それは有名な会社の話かもしれませんし、聞いたこともないような会社の話かもしれません。そしてこれまで私の連載を読まれた方はふと疑問に思うことでしょう。これらの会社は、監査を受けていなかったのか?と。



いつの時代だったか、「カイケイ」という画期的なセンサーが発明されました。このセンサーを使うと、どんな人間の能力も正確に数字で測ることができるのです。このセンサーさえあれば優秀な人間と優秀ではない人間とが誰でも簡単に分かると評判になり、このセンサーはあっという間に世界中に広がりました。優秀な人間や優秀な人間のみ欲しい会社にとっては、このセンサーのおかげで試験や面接が不要になり、大幅なコストダウンが可能になったのです。

一方、優秀ではないと判断された人間からすれば、これは大変な事態です。どんなに自己アピールしても、このセンサーによる測定結果が悪ければ希望の仕事に就くことができないのですから。そこで、優秀ではないと判断された人間のほとんどは、自分の能力を高めるために必死に努力をすることになりました。

しかし、どんな世の中にもずるいことを考える人間がいるものです。カイケイというセンサーの仕組みを解明した人間が、その仕組みを逆手に取ったカイケイ対策下着「フンショクケッサン」を発明したのです。なんとこの下着をつけさえすれば、カイケイを通して得た結果を操作することができるのです。そしてこの下着が大々的に販売されたものですから、特に優秀ではないと判断された人間の間ではあっという間に広まりました。

せっかくカイケイが発明されて人間の能力が正確に数字で測れるようになったのに、フンショクケッサンのおかげで台無しです。そこで、カイケイを使う会社側は、カイケイを作っているメーカーの専門技術者に頼んで下着チェックを行ってもらうことにしたのです。もちろんこれにより多少コストアップしますが、カイケイによるコストダウン効果の方がはるかに大きいからです。このチェックは「監査」と呼ばれるようになりました。

ところがこの監査は万能ではありませんでした。フンショクケッサンは種類も多く、監査でも見つかりづらいように常に改良を続けるものですから、いくらカイケイの専門技術者といえども容易に見つけられるものではないのです。また、生身の人間が着けている下着の検査ですから、そのチェックのしづらいことと言ったらありません。しかも、しょせん公的機関ではないメーカーの一社員ですから、強制的に脱がせて徹底的に調べるような力は持っていないのです。

「そんなとこまで調べる権利があるのか?」「こんなところまで見せているというのにまだ疑っているんですか?」相手が嫌がることをやるのはいかに仕事とは言え、辛いものです。さらに、人間の人間らしい部分を巧みにつかれてしまうこともありました。「うちはお金持ちだから、見逃してくれたらセルシオをプレゼントしよう」「君と私は長い付き合いではないか」

しかし、監査側だって指をくわえてきたわけではないのです。それも当然、監査でフンショクケッサンが発見できないとなれば、そもそもカイケイが売れなくなってしまうのですから、カイケイを作っているメーカーはつぶれてしまうに違いありません。そのことを十分理解しているカイケイと監査は、必死になってフンショクケッサンつぶしに改善を続けるのです。

さて、監査はフンショクケッサンを根絶することができるのか? 次号の最終回に請うご期待。

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