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決算を締めてみたら結構な赤字。でも銀行には黒字見込みと報告しているし、なんとか黒字にできないか・・・。
そこで会社はさまざまな方法を考えます。会計についての基礎知識が無いほどそのアイディアは奇抜なものが多く、ある意味で感心させられることもしばしばです。しかし、自信満々で持ち込んだそのアイディアは、監査人に一瞬で却下されてしまいます。どうして我々が考えたこの優れた理論を理解できないのか!?今回はこのギャップについて解説したいと思います。


会計基準というルールがある

あなたはパソコンの製造業をしていたとします。どの時点で売上を計上することになるでしょうか?通常は出荷時点で計上する出荷基準、客先が検収した時点で計上する検収基準を採用することがほとんどでしょう。しかし、受注生産の場合は受注時点で売上が確定するのだから、受注時点で売上を計上してもいいじゃないか!と考える人もいるでしょう。逆に、結局は入金がなければ販売した果実は確定しないのだから、入金時点で売上計上することが合理的じゃないか!と考える人だっているでしょう。それはそれで一理あると思います。

ところが、国際会計基準では、経済価値とリスクが移転したときに収益を計上しなければならない、というルールになっています。これを当てはめてみると、パソコン自体を客先が検収してはじめて客先に経済価値とリスクが移転すると読み替えられますので、原則として検収基準を採用しなければなりません。ちなみに出荷基準はこれまで日本基準では認められてきましたが、国際会計基準ではそのままでは採用できませんので、検収基準と同等の結果になると認められる場合以外は認められないことになります。

それでは受注基準ではなぜ売上計上できないのでしょうか?まだパソコンを客先に渡していないことから少なくとも経済価値は客先に移転していないと考えられるため、このルールを守れないからです。また、パソコンという経済価値の移転を無視してお金のやり取り時点だけで売上を計上する入金基準も、同様にこのルールを守っていないので採用できません。

このように、アイディア自体は自由なので会計処理の選択肢は数多くあるのですが、会計基準でその選択肢の幅を狭くしているため、実際には選択肢などないケースがほとんどなのです。なんでこんな不自由な方法にしているかというと、会計基準はあくまで財務諸表の利用者のことを考えているからです。会社がそれぞれに勝手な理屈で財務諸表を作成したら、利用者は儲かっているのかそうじゃないのかという直観的な判断を全くできなくなります。従って、どんなに素晴らしいアイディアでも会計基準で認めていない方法は会計処理として選択できません。

勝手な理由で変更しちゃダメ

会計基準の中で、会計処理の選択肢が複数存在する場合があります。当然どちらを採用するかによって利益等の結果が変わる訳ですが、これを年度年度で会社の都合の良い方に変えていくのでは、利用者は儲かっているのかそうじゃないのかという直観的な判断を全くできなくなります。

そのため、よほど合理的な理由がない限り、会計処理の方法を変更することはできません。「明らかにより実態に合うような合理的な会計処理の方法があったため変更したい」との話であれば、それではそれまでの年度で採用してきた会計処理は正しかったのか?という話になりかねません。また、「こちらの会計処理の方がやや合理的なので変更したい」との話であれば、変更することによって受ける利用者の不利益と比べても変更した方が利用者の利益が大きいのか、という観点によって議論されますので、いずれにしても実務上会計処理を変更するということに対するハードルは非常に高いことがお分かりになるかと思います。

今回の話は当たり前の話のように思われますが、一方でこの二点を置き去りにした相談が多いのも事実です。少なくともこの二点を満たしているか自己点検した上であなたのアイディアを持ち込めば、きっと今よりも実りのある議論になると思います。

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