1つ星2つ星3つ星4つ星5つ星 (5.00 評価, 4 投票)
 

監査人と監査のスケジュール調整を行うとまず、「期末日に会社に直接伺いたい」という話から始まることが多いと思います。年度末となればただでさえ忙しいことが通常ですから、内心迷惑なことは間違いありません。ところが、期末日からずらしたくても監査人は数日ずらすのさえ渋ってきます。監査人は一体どうして期末日にそんなにこだわるのでしょうか?

ここであまりに唐突ですが、会社の設立から解散までの全期間を太巻きだとしましょう。ここで言う太巻きは、巻きすを使って棒状になった状態だと思ってください。そのままだと食べづらいので、気の利く寿司屋の大将は食べやすい長さにスパスパッと切って出してくれるでしょ?この切られた一切れをつまんでみてください。これが会計の世界では、一会計年度と呼ばれます。

さて、今度は太巻きの一会計年度を見てみましょう。せっかくだからただ見るのではなく、寿司屋の大将が言った具材が本当に入ってるのか、監査してやりましょう!まずは全体像から。スパッと切れた断面が二か所ありますね。会計的に言えば、この一方が「期首日」、もう一方が「期末日」です。それぞれなにやらさまざまな具材が目につきますが、まだここでは具材のチェックはしないでください。それでは「会計年度」の部分はどのように見えますか?海苔でつつまれているので分からない?そうですね、ここの監査は手こずりそうです。

会計監査の目的も、簡単に言ってしまえばこの二つを確かめることなんです。一つは、スパッと切れた断面に相当する、会計年度末の財政状況を現す「貸借対照表」。もう一つは、海苔でつつまれた部分に相当する、一会計年度の業績を現す「損益計算書」。

さあ、どちらが調べやすいでしょう?

答えは明らかですね。スパッと切られた断面を見れば一目瞭然ですが、海苔でつつまれた部分は中をほじくり返してみなければ分かりません。また、断面である「期首日」と「期末日」に入っている具材をしっかり確認してあったとしたら、その間に入ってる具材も、全部ほじくり返さなくてもそんなに大間違いの結論にはならないでしょう。さらに言えば、外から客観的に確認できて監査人の判断の強い根拠となるはずの断面確認手続きを怠っていたら、お前は本当に監査したのか、という話にもなりかねません。

というわけで、「期末日」の中身の確認は監査人にとって非常に重要な手続きとなるのです。それでは、具体的な「期末日」の具材の確認方法にはどのようなものがあるのでしょうか?

① 実査

監査人が実際に直接調べる方法です。太巻きだったら、監査人が直接お客さんのところに行って「ちょっと失礼。ああ、確かにかんぴょうが二切れ入ってるな」と調べる手続きです。会計監査では、現金や固定資産などの手続きに用いられます。期末日に実際に監査人が直接数えるのです。

② 立会

会社が確認を行っているところを監査人が間接的に調べる方法です。太巻きだったら、お客さんが「確かにかんぴょうが二切れはいってますね」と調べているところを、監査人は「ふむふむ、確かに。」と言ってその場で確認する手続きです。会計監査では、棚卸資産に用いられます。実査の方が自分で全部調べるので確実ですが、棚卸資産全部は無理ですよね。そこで会社の人に手分けしてチェックしてもらって、監査人はそれを間接的に確かめるのです。

③ 確認

取引相手に直接確認する方法です。太巻きだったら、監査人から寿司屋の大将に対して「この時点で入っている具材をすべて正確に教えてください」と聞いて、「かんぴょうが二切れと、・・・」という回答をもらう手続きです。会計監査では、預金や債権債務などの手続きに用いられます。これは監査人は当日会社に行っても自分で数えられないので、相手先に直接聞くしかないのです。

ここまで読まれて、監査人の言うことも少し聞いてあげようかな、という気持ちになっていただけました?太巻きがお客さんに食べられてしまってからでは、もう遅いのです。