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OECD(経済協力開発機構)による多国籍企業の国境を越えた租税回避行為の問題を解決するための「BEPS(税源浸食と利益移転)」行動計画への対応強化として、中国の国家税務総局は、移転価格の事務処理ガイドラインとして制定された『特別納税調整実施弁法(試行)』(国税発[2009]2号。以下「2号弁法」)のうち、関連者間取引に関する開示資料(第二章、第三章)と事前確認制度(第六章)の規定を2016年に全面的に改訂しました。
今回は『事前確認制度の改善事項に関する公告』(国家税務総局公告2016年64号。以下「64号公告」)について紹介します。

1. 事前確認制度(中国語表記は「預約定価安排」)

事前確認制度(Advance Pricing Arrangement。以下「APA」)とは、移転価格課税リスクをあらかじめ回避するために、将来の年度における国外関連者との取引価格設定方針およびその算定方法について事前に税務機関に申請を行い、独立企業間原則に従っているとの合意を得る制度です。
国際取引で生じる二重課税については、租税条約などに基づく二国間の租税協議(注1)により排除されるべきであるものの、実質的には国内法上の訴訟による解決に至るなど、納税者である企業にとっては、対応が長期にわたり、かつ経済的な負担も大きくなっています。一方、徴税側である課税当局としても、税の徴収は各国家それぞれの主権であり、多国間での課税権、課税管轄権を調整するAPAは、確実な税収につながる有効な手段となります。すなわち、APAは、納税者のみならず課税当局にとっても国際取引における税務紛争を事前に回避するための制度です。「BEPS行動計画14」(注2)においても、国際税務の紛争をより効果的に解決する方法として、二国間のAPAの実施を奨励しています。
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人力資源・社会保障部は2017年11月24日付で、『労働契約の違反・解除に係る経済補償の弁法』(原文、以下『弁法』と呼称)の廃止を通知した(原文)

1. 経緯と概要

『弁法』は1994年12月に公布・1995年1月に施行され、施行から既に約23年が経過していた。『弁法』の条項のうち、一部は『労働契約法』(原文、2008年1月1日施行)の関連条項に取って代わられ、また一部は現在の労働関係処理及び経済発展に合致せず、目下の法制化の流れに順応していなかった。以下に『弁法』と『労働契約法』の比較、及び『弁法』廃止後の影響についてまとめた。 (続きを読む…)

「BEPS(税源浸食と利益移転)」対応強化の一環として昨年6月に国家税務総局から公布された『関連者間取引申告と同時文書の管理に関する公告』(国家税務総局公告2016年42号。以下「42号公告」といいます。)について紹介しています。今回は同時文書のうち、マスターファイルと特殊事項ファイルの概要を紹介します。

1. マスターファイル

マスターファイルは、42号公告において新たに求められた文書で、税務当局がBEPSを検証するために多国籍企業グループが全世界で行っている事業の状況や移転価格ポリシー、所得や経済活動の配分などの概要を記載するものです。

  1. 準備要件
    年度において◇クロスボーダー取引が発生し、かつ当該企業の財務諸表を連結する最終持株企業の属する企業グループが既にマスターファイルを準備している◇関連者間取引の総額が10億元を超える ―場合に準備しなければならないとされています。
    日系企業グループに属する中国企業においては、日本にある最終持株企業がマスターファイルの作成義務がある場合(注1)、その作成したマスターファイルの中国語版を準備する(注2)のが通常と考えられますが、日本の最終持株会社のマスターファイル作成が不要である場合でも、中国現地法人の関連者間取引額が基準を超えるときには、中国でマスターファイルを作成しなければなりません。
    但し、関連者間取引が国内関連者との取引のみである場合には準備不要とされています。

    (注1) 日本の税制では、直前会計年度の連結総収入金額 1,000 億円以上の多国籍企業グループ(特定多国籍企業グループ)の構成会社にマスターファイル(事業概況報告事項)の作成義務が課されるものとされ、平成28年4月1日以後に開始する会計年度から適用されます。
    (注2) 同時文書は中国語で作成しなければなりません。
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2013年より施行されていた《深セン経済特区人口と計画生育条例》(以下、《条例》と呼称)は、2016年1月より施行された国の《中華人民共和国人口と計画生育法》と、2016年1月施行、9月に一度修正された《広東省人口と計画生育条例》にて二人っ子政策の推進、広東省の奨励休暇の延長等が規定されたことに伴い、すでに今年の3月には廃止の決定が審議通過しており、この時点で深セン市でも80日の奨励休暇が広東省に準じて取得可能であることや、深セン市のみ規定されていた高齢出産休暇の15日が廃止されることが明確になっていました。今回、10月12日に《深セン市計画生育若干規定》(以下、《若干規定》と呼称)が発布され11月12日に施行されることで、深セン市の二人っ子政策の運用及び産休制度は国と広東省に沿った形となっています。以下に変更内容を簡単にまとめました。 (続きを読む…)

国家外国専家局は、外国人来華工作管理サービスシステムウェブサイト上において、『延期に関する通知』(原文、以下『通知』と呼称)を2017年12月7日付で公布した。

1. 概要(全文)

外国人従業員を雇用する各事業者:
《中華人民共和国行政許可法》に基づき、“許可を受けた者は法に基づき取得した行政許可の有効期間の延長継続をしなければならず、当該行政許可有効期限の満30日前までに、行政許可を決定した行政機関に対し申請を提出しなければならない(原文、第50条)。” 2018年2月28日以降、外国人来華工作許可延期業務の処理は許可期限の30日前に申請を提出しなければならない。30日前を過ぎると提出ができず、新規申請に基づき処理をしなければならない。
ここに通知する。 (続きを読む…)

財政部 税務総局 企業国外所得税税額控除政策問題の完善化についての通知
(財税[2017]84号)


概要

2017年1月1日施行。「企業の国外所得に係る税額控除・免除に関する通知」(財税[2009]125号)により、企業の国外所得に係る外国で納付した企業所得税について、中国の企業所得税の計算上、外国税額控除・免除として、控除・免除することが認められていた。今回の通知により、詳細な規定が定められた。

関連法規

  • 財政部 国家税務総局 企業の国外所得に係る税額控除・免除に関する通知(財税[2009]125号)

国家税務総局 小型企業の増値税免税に関する問題についての公告
(国家税務総局[2017]52号)


概要

2018年1月1日より2020年12月31日までの期間実施。「財政部 税務総局の小型企業に対する増値税政策の延長に関する通知」(財税〔2017〕76号)により小型企業に対する増値税の免税政策が延長されている。今回の公告により新たな内容が規定された。主な内容は以下の通り。
  • 増値税小規模納税者は、物品販売または加工・修理役務の販売額及びサービス・無形資産の販売の販売額をそれぞれ別々に計算する。
  • 増値税小規模納税者の物品販売または加工・修理役務の販売月額が3万元(四半期毎の納税では9万元)を超えない場合、また、サービス・無形資産の販売の販売月額が3万元(四半期毎の納税では9万元)を超えない場合、増値税徴収免除の優遇政策をそれぞれ別々に享受できる。

関連法規

  • 財政部 税務総局 小型企業に対する増値税政策の延長に関する通知(財税[2017]76号)

財政部 税務総局 国家発展改革委員会 商務部 国外投資者の利益分配を用いた直接投資の源泉所得税暫定免除政策問題についての通知
(財税[2017]第88号)


概要

2017年1月1日施行。非居住者企業が取得する中国内の権益性収益(株式利息や配当等)に対しては10%(租税条約等により異なる)の源泉所得税が徴収されている。この通知により、条件を満たす利益分配による中国内への再投資に対して源泉所得税の徴収を暫定的に免除することが規定された。適用のための主な要件は以下の通り。

  1. 以下の条件に合致する利益分配による直接再投資であること。
    • 中国内の企業の資本金の払い込み、または増資であること。
    • 中国内における新たな居住者企業の設立であること。
    • 非関連者からの中国内の居住者企業の持分の買取であること。
    • 財政部、税務局が定めたその他方式。
  2. 国外投資者が分配を受けた利益は、中国国内の居住者企業から投資者に対して実際に分配が行われ、既に実現した留保収益により形成された株式利息、配当等の権益性収益であること。
  3. 国外投資者が現金で直接投資を行う場合、関連の資金は利益を分配する企業の口座から直接被投資企業、または譲渡先の口座に振込みを行うこと。
  4. 国外投資者からの投資の経営活動が、以下の範囲に属すること。
    • 「外商投資産業指導目録」にリスト化された奨励外商産業投資目録に属するもの。
    • 「西部地区外商投資優勢産業目録」に属するもの。

「BEPS(税源浸食と利益移転)」対応強化の一環として昨年6月に国家税務総局から公布された『関連者間取引申告と同時文書の管理に関する公告』(国家税務総局公告2016年42号。以下「42号公告」といいます。)について紹介しています。今回はローカルファイルの開示内容について紹介します。

1. ローカルファイル

ローカルファイルとは、企業所得税法およびその関連規定に基づいて、年度関連者間取引金額が所定の条件に合致する場合に提供が求められる同時文書のうちの1つで、中国で行われた重要な関連取引、移転価格決定に関する分析の情報を開示するものです。42号公告では従前(注1)と比較してより多くの情報開示が求められ、地域特性についても分析し、中国企業が多国籍企業グループから合理的な利益分配を受けているか否かの検証が強く求められていることが覗えます。

(注1) 『特別納税調整弁法(試行)』(国税発[2009]2号。以下「2号弁法」)

2. ローカルファイルの開示要求

ローカルファイルにおける開示項目は以下の通りです。
  1. 企業の概要
    • 組織構成
    • 管理構造
    • 業務説明(業種の発展状況やその産業政策、業種制限、主要な競合相手など)
    • 経営戦略(各部門や各段階のフローチャート、運営モデル、価値貢献要素など)
    • 企業の各類型別の財務データ
    • 企業の再編・無形資産の譲渡、およびその影響分析。
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「BEPS(税源浸食と利益移転)」対応強化の一環として昨年6月に国家税務総局から公布された『関連者間取引申告と同時文書の管理に関する公告』(国家税務総局公告2016年42号。以下「42号公告」といいます。)について紹介しています。今回は同時文書のうち、ローカルファイルの概要を中心に紹介します。

1. 同時文書の準備

企業所得税法においては、関連者間取引の関連資料の提供を義務付けています。この関連資料を「同時文書(中国語表記は「同期資料」)」(注1)と称し、これを準備し、税務機関の求めに応じて提出しなければならないとしています。42号公告では、同時文書には
  • マスターファイル(中国語表記は「主体文トウ」:トウはキヘンに当。以下同じ)
  • ローカルファイル(本地文トウ)
  • 特殊事項ファイル(特殊事項文トウ)
を含むとし、3種類の文書の準備を要求していますが、2号弁法では同時文書はローカルファイルのみとされていました。なお、同時文書の作成期限や開示内容などについても42号公告では修正が加えられています。

(注1) 『特別納税調整弁法(試行)』(国税発[2009]2号。以下「2号弁法」)の「第3章同時文書管理」において同時文書の準備義務とその内容が定められていましたが、42号公告の公布により廃止されました。
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