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労働法、労働契約法、関連規定及び裁判実例に基づき、パートタイム労働者(中国語:『非全日制用工』)の労働契約における注意事項を解説する。

パートタイム労働者(『非全日制用工』)とは

パートタイム労働者(非全日制用工)の労働契約とは、時間によって給与が算出され、同一の使用者における毎日の平均労働時間が4時間を超えず、毎週の労働時間の合計が24時間を超えない労働契約を指す(労働契約法第68条)。パートタイム労働者の労働契約は、一般の全日制雇用の労働契約と主に、以下の点において異なる。


  • パートタイム労働者の労働契約は、口頭による形式でも良い(※)。パートタイム労働者は複数の労働契約を締結することができる(労働契約法第69条)。
  • パートタイム労働者の労働契約は、試用期間を設定することはできない(労働契約法第70条)。
  • パートタイム労働者の労働契約の当事者の一方は、随時に相手方に通知することにより労働契約を終了させることができる。使用者は、経済補償金の支払い義務がない(労働契約法第71条)。
  • パートタイム労働者の労働契約の最低賃金は、所在地の最低賃金基準(時給基準)を下回ってはならない。賃金の精算支払周期は、最長でも15日間を超えてはならない(労働契約法第72条)。

※規定上は、口頭による形式が可能であるが、労働紛争時に証明することが難しいため、書面による労働契約を締結することが望ましい。

パートタイム労働者(『非全日制用工』)と五険一金

パートタイム労働者における社会保険(養老保険・医療保険・労災保険・失業保険・生育保険)と住宅積立金の加入義務に関する関連規定は、以下の通り。なお、規定には解釈の余地があり、各地の実際の取扱いは、当地の所管部門(税務局及び社会保険機構等)に確認をする必要がある。

養老保険

養老保険は、使用者及び労働者が共同で保険料を納付すること規定しているが、使用者のもとで養老保険に加入していないパートタイム労働者は、単独で、養老保険料を納入することができる(社会保険法第10条)。

医療保険

医療保険は、使用者及び労働者が共同で保険料を納付すること規定しているが、使用者のもとで医療保険に加入していないパートタイム労働者は、単独で、医療保険料を納入することができる(社会保険法第23条)。

労災保険

パートタイム労働者であっても、使用者は労働者を労働保険に加入させる義務がある。特に、2つ又は2つ以上の使用者のもとで同時に就業している場合でも、各使用者は、それぞれ労災保険料を支払う義務があり、労働災害が発生した場合、その職場における使用者が労働災害保険の給付責任を負う(「社会保険法」の実施に関する若干の規定第9条)。

失業保険・生育保険

現行の社会保険関連規定では、パートタイム労働者の失業保険・生育保険に関する規定は存在せず、パートタイム労働者の加入を想定していない。

住宅積立金

現行の住宅積立金関連規定において、パートタイム労働者の住宅積立金に関する規定は存在せず、パートタイム労働者の加入を想定していない。但し、地方規定により、労働者単独での加入を認めている地域がある。

パートタイム労働者(『非全日制用工』)の法的リスク

パートタイム労働者の法的リスクとして、パートタイムとしての就業形態が全日制雇用として認定され、労働者から全日制雇用としての扱い(社会保険料の追納、有給休暇の付与、解雇時の経済補償金の支払等)が主張されることが挙げられる。

江蘇省における事例

張氏は、2018年3月1日に甲社の清掃業務に従事している。張氏は、毎週末二日間休み、平日は午前10時から午後15時までの間、清掃業務に従事している(業務には昼休みがある)。銀行口座の支払記録によると、甲社は、毎月10日前後に、張氏に報酬を銀行振込で支払いをしている。甲社は、張氏の社会保険料は支出していない。2018年8月、張氏は、双方の労働契約は、全日制雇用の労働契約であり、書面による労働契約が締結されていないとし、労働契約法第82条(※)に基づき、甲会社に3月1日から7月31日までの間、労働契約の二倍の給与を支払うように要求した。一方、甲社は、双方の労働契約は、非全日制の労働関係であり、時給報酬を計算、既に支払っていると反論した。

※使用者は、労働者使用の日から1カ月を超え1年未満に労働者と書面による労働契約を締結しない場合は、労働者に毎月2倍の給与を支給しなければならない(労働契約法第82条)。

裁判所の判断

本案件において、裁判所は、張氏と甲社の間の労働関係を全日制の労働契約と認定し、張氏の甲社に対する二倍の給与請求を認容した。

理由の要旨

(1)労働契約法第68条によると、非全日制労働者は、同一の使用者において、毎日の労働時間は4時間を超えず、毎週の労働時間の累計は24時間を超えないとしている。この規定を超過し、就労をした場合、全日制雇用の労働契約として認定される。特に、江蘇省高院の「労働人事紛争事件の審理に関する指導意見(二)」第9条では、「雇用単位が労働者と書面による労働契約を締結していない場合で、雇用単位が双方の労働契約が非全日制の労働関係であることを主張する場合、雇用単位がその主張の立証責任を負う」と規定している。本件では、甲社は、張氏の勤務記録等の関連証拠を提出していない。

(2)労働契約法第72条では、非全日制の労働契約の賃金の精算周期は、最長でも15日間を超えてはならないと規定している。本件において、甲社は、毎月10日前後に月次を支払周期として給与を支払っており、この規定に違反する。

(3)以上から本件労働契約は、全日制の労働契約として認定される。全日制の労働契約は、労働契約法第82条において、「雇用単位が、労働者の労働開始日から1カ月を超えて書面による労働契約を締結しない場合において、雇用単位は、労働者に対して毎月2倍の給与を支払わなければならない」と規定している。よって、本件において、甲会社は、張氏の主張通り、3月1日から7月31日までの期間の2倍の給与を支払う必要がある。

近時、最終消費者向けの小売・サービス業種の進出が多くなるに従い、外資企業でも、労働者とパートタイムでの労働契約を締結することが多く生じている。今回は、パートタイム労働者と全日制労働契約の違い、典型的な法務リスクを紹介した。パートタイム労働者との労働契約が、労働契約法上、簡素かつ低コストに見えても、それを管理する体制に欠陥がある場合、上記事例の通り、重大な労務紛争が生じる。使用者には、パートタイム労働者向けの統一的かつ漏れのない規定を整備することが求められるとともに、規定に基づいた運用の徹底を図ることが求められる。

各労働関連規定の整備・運用に関するご相談は、弊社窓口までお問合せ下さい。

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