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深セン市のハイテク企業認定申請

深セン市の製造業日系企業が移転や撤退を検討する中、深セン市は一貫して産業の高度化を進め、国内外からの先進技術や人材を積極的に誘致すると同時に、創業や技術革新活動、知的財産権の申請等を強力に支援しています。政府支援を追い風に深センのイノベーションやスタートアップ企業の活動が盛り上がりを見せる一方、多くの既存の日系企業は今のところこの追い風を利用・活用しきれているとはいえません。
中国で企業所得税の内外資統一後に実施されてきた優遇税制としてよく知られているのはハイテク企業認定ですが、深セン市の現行規定は2008年の「深セン市人民政府印刷発布 自主イノベーションを強化しハイテク技術産業発展を促進する若干政策措置の通知」(深府[2008]200号)、2009年の「深セン市ハイテク企業認定管理弁法」(以下、認定管理弁法)に基づくものです。同市がハイテク認定を開始してから現在に至るまで、国及び市のハイテク企業認定は合わせて実に14000社を超えています。国のハイテク認定は申請者による知的財産権の所有が前提ですが、深セン市のハイテク認定は知的財産権の独占使用許可や、実用新案による申請も認めており、国の認定よりもハードルが若干低いものとなっています。ハイテク認定により、25%の企業所得税率が15%に減税となることが規定されているほか、深セン市内の産業園区への入区がしやすくなり、土地の商業化に伴う移転リスクを低減することができるかもしれません。あらためて深セン市のハイテク企業認定について以下に紹介します。

1. 認定条件

ハイテク企業認定には『深セン市ハイテク製品リスト』に属する製品の研究開発、生産及び販売若しくは技術サービスに従事する企業でなければならず、販売のみに従事する企業は認定されません。

深セン市ハイテク製品リスト

『深セン市ハイテク製品リスト』には以下の領域が含まれます。(認定管理弁法第五条)
(1) 電子情報とソフトウェア
(2) バイオエンジニアリング、医薬及び医療器械
(3) 新材料
(4) オプティカル・機電一体化及び先進製造
(5) 環境保護
(6) 新エネルギー及び省エネ
(7) 航空・宇宙
(8) 海洋エンジニアリング
(9) 核応用 等
  
ハイテク企業認定申請時、企業は以下の①~⑦の要件を全て満たす必要があります。
①深センに登記して1年(会計年度)以上で、独立法人資格を有する。
②知的財産権の所属が明確で、以下項目のいずれかを満たす。
1) 発明或は植物新品種1件以上
2) 実用新案権2件以上
3) 意匠権/ソフトウェア著作権/集積回路設計権3件以上
③研究開発費用及び技術者については、企業の直近の売上高別に条件が定められています。

直近1年の売上高 3会計年度の研究開発費用総額が売上総額に占める割合 大学専科以上の学歴或は中級以上の科学技術人員が当年度従業員総数に占める割合 研究開発人員が当年度従業員総数に占める割合
<5千万元 5%以上 30%以上 10%以上
5千万元≦2億元 3%以上 20%以上 8%以上
2億元< 2%以上 10%以上 6%以上

*2設立から3年に満たない場合は実際の経営年数に基づき計算する
*2その内、中国国内で発生する研究開発費用が研究開発費用総額の60%以上

④ハイテク技術製品(サービス)収入が企業の当年度収入総額の60%以上
⑤完全で良好な生産、技術、財務等の管理制度を有する
⑥相応の研究制度、生産環境及び製品品質保証体制を有する
⑦重大な違法行為が無く、提出資料が真実であり、信用できる

2. 認定申請手順

ハイテク企業認定申請は毎年3月、6月、9月の第1営業日から第10営業日までの3回、申請提出期限が設定され、審査期限は45営業日とされています。申請手順は、
(1) 企業よりオンライン申請
(2) 窓口にて申請資料提出
(3) 専門家による審査
(4) ネット公示
(5) 認定証書の発行
となっています。

新規申請資料は以下の通りとされています。
①《深セン市ハイテク企業認定申請書》
②企業の営業許可証、法定代表者の身分証
③知的財産権関連証明、科学研究項目立項証明、科学技術成果の転化、研究開発組織管理等の関連資料
④ハイテク製品(サービス)のコア技術と技術指標、生産認可、認証認可及び関連資質証明、製品質量検験報告等の資料
⑤従業員及び科学技術人員情況の説明資料、社印を押印済みの科学人員情報表
⑥指定監査機構の発行した直近3会計年度の研究開発費用報告書及び、直近3年間のハイテク製品(サービス)収入専門項目会計監査報告書、国税・地税部門押印済み納税
⑦資格を有する会計師事務所による直近3会計年度の監査報告書
⑧直近3会計年度の企業所得税年度納税申告表
 
証書の有効期間は3年で、期限の3か月前までに再申請を提出する必要があります。再申請時の必要資料は以下の通りです。
①《深セン市ハイテク企業認定証書》
②《深セン市ハイテク企業年度審査表》
③資格を有する会計師事務所により監査された3会計年度の財務監査報告書及びハイテク企業専門監査報告書