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今月から12月まで全6回にわたり日本と中国の会計基準の相似点、相違点を比較解説します。第一回目の今回取り上げるのは棚卸資産です。なお、文中の意見に関する部分は私見であることを予めお断り致します。

日本の基準(「連続意見書第四 七」)では、棚卸資産の範囲は、原則として、資産の実体が、次のいずれかに該当する財貨又は用役であるとされています。
(イ) 通常の営業過程において販売するために保有する財貨又は用役
(ロ) 販売を目的として現に製造中の財貨又は用役
(ハ) 販売目的の財貨又は用役を生産するために短期間に消費されるべき財貨
(ニ) 販売活動および一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨

中国の2006年制定の企業会計準則(いわゆる「新準則」)では、棚卸資産とは、企業が通常の活動において、販売を目的として保有する製品または商品、生産過程にある仕掛品、生産過程または役務提供過程において費消される原材料及び物品等と定義しています(第三条)。そして同時に以下の条件を満たす場合、棚卸資産として認識するとしています(第四条)。
(一)当該棚卸資産に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと。
(二)当該棚卸資産の取得原価を信頼性を持って測定できること。
新準則よりは古い企業会計制度(いわゆる「旧準則」)では、棚卸資産は、企業が日常生産経営過程において保有される、販売目的、あるいは生産過程中の、あるいは生産あるいは労務過程の中で消耗される材料あるいは物品であり、各種材料、商品、仕掛品、半製品、製品などを含むとしており(第20条)、最新の新準則に比較してその定義は簡易なものとなっています。

日本の基準(「企業会計基準第9号 3.」)では、棚卸資産に事務用消耗品等の販売活動及び一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨も含むとされています。また、日本基準と新準則では仕入付随費用は業種の別によることなく棚卸資産の取得原価に加算しますが(6-2., 第六条 )、旧準則では、商品流通企業の場合、仕入過程で発生した付随費用は直接当期の損益に算入することとされていますので留意が必要です。(第20条(一)1.)

日本の基準では、個別法、先出先入法、平均原価法(総平均方、移動平均法)、売価還元法の中から選択した方法を適用して売上原価等の払出原価と期末棚卸資産の原価を算定します(6-2.)。

一方、新準則においては、棚卸資産は取得原価により認識時の測定をしなければならず、棚卸資産の取得原価には、購入原価、加工原価及びその他の原価が含まれるとしています(第五条)。払い出された棚卸資産の実際原価の確定は、企業は先入先出法、加重平均法または個別法を採用して確定することとされています(第十四条)。旧準則では、棚卸資産は、取得時の実際原価で記帳すべきこととし、費消又は払い出した棚卸資産は、実際原価により計算をし、先入先出法、総平均方、移動平均法、個別計算法あるいは後入先出法などにより実際原価を確定すべきであるとしています(第20条(三))。

後入先出方については、新準則だけでなく現行の日本基準でも、選択できる棚卸資産の評価方法から削除されています。日本基準から削除されるまでにその選択適用の対象としての継続可否を判断するためその有用性に関する議論が有りましたが、会計基準の国際的なコンバージェンスを図るため最終的に削除することが決定されました。旧準則がこの後入先出法を認めている点は、日本基準、新準則と異なるだけでなく、国際会計基準(IAS)とも異なっていることは、念頭においてよいと思われます。

日本基準では、期末における通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価において、期末の正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とし、この場合、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理します。(7.)。ここでいう「正味売却価額」とは、売価(購買市場と売却市場とが区別される場合における売却市場の時価)から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したものを指します。なお、「購買市場」とは当該資産を購入する場合に企業が参加する市場をいい、「売却市場」とは当該資産を売却する場合に企業が参加する市場をいうとされています(5.)。また、前期に計上した簿価切下額の戻入れに関しては、当期に戻入れを行う方法(洗替え法)と行わない方法(切放し法)のいずれかの方法を棚卸資産の種類ごとに選択適用できますが、一旦採用した方法は、原則として、継続して適用しなければなりません(14.)。

一方新準則では、貸借対照表日において、棚卸資産は取得原価と正味実現可能価額のいずれか低い方により測定されなければならないとされています。正味実現可能価額とは、通常の活動において、棚卸資産の見積販売価額から完成時までに発生が見込まれる原価、見積販売費用及び関連税金費用を差し引いた後の金額を指します(第十五条)。留意すべきは、正味実現可能価額の特徴は、棚卸資産の販売価額または契約価額ではなく、棚卸資産の見込将来正味キャッシュ・フローを表現することにあると明確に規定されていることです(《企業会計準則第1号 ― 棚卸資産》応用指南 三. (一))。過去に棚卸資産の評価減をもたらした要因が既に消失している場合、減額した金額を回復させなければならず、既に計上している棚卸資産評価損失引当金の範囲内で戻し入れ、戻入金額を当期の損益に計上しなければなりません(第十九条)。旧準則では、棚卸資産は、期末に原価と時価を比較し、いずれか低い方で計上しなければならず、時価が資産の原価を下回る場合には、その差額を棚卸資産評価損引当金に計上することができるとされているだけで(第20条(五))、戻し入れが規定されていません。

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