中国 中国会計税務レポ

[中国会計税務レポ] 棚卸資産損失 – 資産損失の申告(2)

前回は『企業資産損失所得税税前控除管理弁法』(国家税務公告2011年第25号 以下、「管理弁法」といいます。)の概要と同法に規定される損失のうち債権損失の企業所得税法上の取扱いについて紹介しました。今回は棚卸資産損失について紹介します。

1. 棚卸資産の企業所得税法上の取扱い

企業所得税法上、棚卸資産は企業が販売のために所有する製品または商品、生産過程にある仕掛品、生産または役務提供の過程において消費する原材料および資材などと定義され、通常は棚卸資産を使用または販売をすることにより、その原価(注1)を税前控除(注2)することができるものとなります。

(注1) ここでいう「原価」は税額計算上の基礎となる原価を指し、棚卸資産については原則として取得原価です。なお、企業の資産保有期間中に資産価値の増減が生じて棚卸資産の帳簿価格が変更されたとしても、税法上その増減が認められなかった場合には、その帳簿価格と税額計算上の原価は一致しないものとなります。
(注2) 「税前控除」とは企業所得税の課税所得の計算において、費用・損失として控除することをいい、日本の法人税法における「損金算入」に相当します。

2. 棚卸資産損失の税前控除

上述の通常の取扱いのほか、資産損失管理弁法に規定される企業の棚卸資産に生じた損失についても税前控除が可能となります。棚卸資産損失については、以下の区分に従いそれぞれ証拠資料に基づき損失を認識し、その金額を確定します。棚卸資産の正常な損耗(注3)については、会計科目ごとに分類して一括記載した統括リストを提出する「リスト申告」を企業所得税の確定申告時に提出すればよく、正常な損耗以外は個別に関連資料を添付して「専項申告」を行わなければなりません。

  1. 実地棚卸による棚卸差損
    損失額=棚卸差損額-責任者の賠償額
    証拠資料: 棚卸資産の課税基礎原価の確定根拠、企業内部の責任認定および責任者の賠償状況説明と内部決裁書類、実地棚卸表、差損に関する保管者の説明。
  2. 棚卸資産の廃棄・毀損または変質による損失
    損失額=棚卸資産の原価-残存価額-責任者の賠償額
    証拠資料: 棚卸資産の課税基礎原価の確定根拠、企業内部の棚卸資産の廃棄・毀損・変質・残存価額に関する状況説明及び確認資料、責任者の賠償に関わる場合は賠償すべき状況説明、損失金額が比較的大きい(注4)場合は専門技術鑑定意見または法定資格を有する仲介機構が発行する専項報告。
  3. 盗難損失
    損失額=棚卸資産の原価-(保険賠償額+責任者の賠償額)
    証拠資料: 税務上の棚卸資産原価の確定根拠、公安機関への通報記録、責任者および保険会社の賠償に関わる場合は賠償すべき状況説明など。

(注3) 例えば小売業における少量の盗難、廃棄、処分、期限切れ、破損、腐敗、顧客からの返品などの要因により経常的に発生する損失のように企業の生産経営の過程において避けられず、かつ、事前に見積可能な合理的な損耗。管理の不備によるものは非正常と判断されます。
(注4) 企業の同類資産の原価の10%以上、またはその損失によって減少する当年度の課税所得額もしくは増加する欠損額が10%以上である場合に比較的大きいと判断します。

3. 棚卸資産損失にかかる仕入増値税額の取扱い

増値税の納付税額は売上増値税から仕入増値税を控除して算出しますが、損失を計上した棚卸資産の取得にかかる仕入増値税があり、その損失が非正常損失である場合には、仕入増値税を売上増値税から控除することができないとされています。よって、棚卸資産に非正常損失を計上した企業はその仕入増値税相当額をコストとして負担しなければなりません。一方、企業所得税法では、企業が棚卸資産の減耗・毀損・廃却・盗難等の原因により増値税売上税額から仕入税額を控除できない場合、棚卸資産損失とともに課税所得額の計算時に控除することができるとされています。

以上