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 中国の地下鉄投資が、今後5年間で1兆元を超えるといったニュースが流れていました。私の住んでいる蘇州だけでも、2本の地下鉄建設が進められており、江蘇省内の地域を訪問しても、あちこちで地下鉄の予定路線といった公告を見かけます。便利になることはありがたいですが、投資資金の回収目途が立っているのか疑問に思うこともあります。今月は、中国市場の開拓には必須となる現地法人での与信管理について、簡単に紹介します。

(8)与信管理と債権回収

 中国の経済成長や為替相場の変化により、従来は日本向け、及び中国国内の日系関連会社向けに製品を販売していた現地法人も、中国国内の市場を開拓する方向に変化している状況が見受けられる。但し、中国企業からの売上債権回収が難しいという話を聞いて、中国国内での販路開拓を躊躇しているということも往々に聞かれる。中国企業からの代金回収が長期化する傾向にあることは事実であるが、これも自社の経理規定で与信管理に一定の基準を設けることで、売上拡大とリスク管理を併用することが出来ると考える。

① 取引開始
 取引先の基本的な情報として、営業許可証や先方の財務諸表(監査報告書)を収受して、その会社の実在性や基本的な財務状況を確認する。また、正直申し上げて、中国企業が作成する財務諸表が企業の状況を正確に反映しているか否かには疑問が多いので、営業部門の責任者へ日本人管理者が新規取引先を訪問して、相手の雰囲気を感じ取ることが重要であると考える。
 その上で、一定の取引期間が経過するまでは、全て前受金で取引を進めるといったことが最も安全であるが、取引先の特性から前受金の取引が難しいという場合には、与信枠を与えることになる。その際も、営業部門による単独での判断は避け、会計部門や企業管理者による承認といった内部牽制も加えることが有益となる。
 取引開始時の、取引可否や与信判断を適切に規定して実施することが与信管理では最も重要なこととなる。

② 取引継続中
 取引が始まって一定期間が経過しても、定期的な与信管理は必要である。直近の取引内容や債権回収状況、年末等での残高照合はもちろん、一年に一回程度は取引先を訪問して、顧客の経営や財務状況を肌で感じることが重要である。
 また、与信管理の資料は、営業担当部門が主になって作成する書類となるが、営業担当者の退職等で適切な引き継ぎが行われず、与信管理の継続が問題になる事例も多く見られるため、営業報告等の記録は会社として何らかの形で纏めることをお勧めする。また、営業担当者の人事評価は、顧客開拓の状況が中心になってしまう場合もあるが、債権回収や顧客継続管理も評価することで、担当者個人にも与信管理の重要性を認識させることが必要である。

③ 債権回収状況の確認
 債権回収の確認は会計部門の担当となる。売掛債権年齢表等を用いて、長期的に滞留している債権の有無を毎月に確認させ、債権回収が遅延する状況に関しては、取引先への通知と合わせて、与信管理資料にも記録をして、管理者へも状況を認識させる対応を採る。

支払遅延の発生
 まずは、電話での催促を行うことが一般的であるが、電話は記録が残りづらいため、取引先での支払い遅延が発生した要因等を把握することに要点を置く。取引先内部の簡易的な連絡不足等であれば、迅速に債権は回収することが出来るであろう。
 次に、取引先の財務状況が実際に思わしくないと判断される場合には、債権回収と同時に将来の製品出荷についても、どのような体制で判断するかを事前に定めておく。

(一)債権回収
 書面での支払催促を行うことになる。書面では、現在の債権残高を記すだけでなく、延滞利息の発生や期日の指定を設けて、支払を促すことになる。また、債権残高によっては、弁護士等の第三者を催促の過程で組み入れることで、先方へ一段と自社の意思を示すことになる場合もあるので、検討を頂く。

(二)製品出荷
 出荷停止、或いは既に出荷した製品の回収といった判断を行う。これに関しては、当初の取引契約において、支払遅延が発生する場合の対応を明確に定めることで、双方の話し合いを設けず、契約に基づいて粛々と対応することが可能となるため、やはり、取引開始時の判断が重要になる。

④ 貸倒処理
 債権回収が滞る部分に関しては、貸倒引当金や貸倒損失を計上することになる。なお、中国の企業所得税法関連規定では、取引先の破産や営業停止といった事実がない場合、会計上で費用処理しても、税務上の損金として認められないため、留意が必要である。

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