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 皆様の現地法人でも、会計事務所から監査人が実地監査に訪ねて来ている時期かと思われます。会社登記証や取引契約書、取引先明細等の様々な資料提出が求められ面倒に感じることもあるかと思います。会計事務所は監査に来て一体何をしているのか、今回は簡単に紹介させて頂きます。

■ 監査業務

 財務諸表監査では、会計事務所から監査人が皆様の会社を訪れ、作成している会計帳簿の内容が適切であるかを確認しています。その適切性を確認するための方法や手続としては以下の様なことが行われる。
(1)実在性
 貸借対照表に記録される現預金や売掛金、有形資産、負債等が実際に存在することの確認。会計帳簿に記録される金額や資産が、実際に存在するか否かを確認することで実在性を判断することが多い。

① 現金預金
 現金出納帳との付け合わせ、銀行での残高照合手続による確認が行われる。
② 売上債権、仕入債務
 領収書や請求書の確認、会社取引先への残高照合依頼等による確認を行う。
③ 棚卸資産、固定資産
 会社の倉庫や生産現場にて、棚卸業務立ち会いや資産台帳と照合する。
④ 貸付金、借入金
 金銭賃貸借契約書から実績の確認を行い、受取収入や支払利息費用の正確性も合わせて確認される。

(2)網羅性
 財務諸表に記録するべき資産や負債、売上や費用が、遺漏なく完全に記録されているかの確認。例えば、番号綴りとなっている入庫伝票や出庫伝票での移動数量と財務諸表に反映する売上や仕入を照合する等で計上漏れの有無を判断する。
(3)会計期間
 中国の会計も「発生主義の原則」が基準とされており、決算年度を跨いで誤った計上の有無を確認する。年間賞与を翌年1月に支給する場合、支給時期に費用計上を行っている状況があれば、発生主義の原則に基づき当該賞与費用を前年度労務費として修正する等の監査調整が行われることが多々見受けられる。
(4)権利と義務の帰属
 貸借対照表に記録される資産に対する権利や負債に関する義務が会社にあるか否かを確認する。土地や建物に対しては権利証や登記証、固定資産では購入契約、貸付金や借入金は賃貸借契約書等から所有権の帰属等が調査される。
(5)評価の妥当性
 資産や負債の評価金額が適当であるか否かを確認する。当該評価は、伝票や契約書に記録され照合するものではないので、会社管理者と監査人による意見の相違で問題となることもある。

① 売掛金
 回収の可能性が疑われる売上債権について、貸倒引当金を計上して資産としての評価額を減少させる。例えば、数年前に発生した売掛金があり、当該得意先とは売買取引が行われていない状況では、監査人は引当金の計上を要求することがあります。
② 棚卸資産
 長期間滞留している原材料、生産した製品の長期保有在庫等について、使用や販売見込みが確認出来ない場合には、棚卸資産に対して評価損を計上する。会計帳簿上だけでなく、例えば実地棚卸立ち会いで、埃を被った材料等があれば指摘を受けます。
③ 固定資産、無形資産
 当該資産が会社の生産管理活動に利用されていない場合、評価損を計上する必要がある。減価償却期間が終了しても、残存価額として10%程度の資産価値が認識されている資産もあるため、やはり評価は必要である。昨年度からは、固定資産の加速度償却が認められているが、会計上での認識と異なることもあり、今年度は比較的重視される項目となる可能性もある。

 中国の企業所得税法では、売掛金の貸倒引当金や資産の評価損引当金が損金として認められないため、企業で評価を重要視されないこともあります。また、中国では引当金が存在しないという誤解を聞くこともありますが、あくまでも企業所得税計算の問題であり、会計決算においては資産の評価を行う義務があります。
 また、評価手続には負債の評価もあり、例えば、長期間に渡って支払いが滞っている買掛金や未払金がある場合、当該債務を評価して、負債が減少していると判断する場合には、営業外収入等で収益として処理することもあります。引当金や評価損は企業所得税の損金にならないことが多いと上記で説明しましたが、負債に対する評価で発生した収益に関しては企業所得税が課されます。
(6)正確性
 当該項目は抽象的な監査手続となるが、とにかく全体として正確な記帳処理が行われているかを確認する。発票との照合、外国通貨建ての換算、関係会社との取引等、過誤が発生すると想定される会計処理を個別に確認する。

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