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前号で、近年まで投資先として日の目を見ることがなかったカンボジアの注目度が上がっていることを取り上げ、メリットとみられる点を列挙した。しかしまさに前号を発行した昨年 12 月ごろからカンボジアは最低賃金をめぐって大きく揺れ、ついには犠牲者まで出てしまった。スペースの関係でごく簡単になってしまうが、何が起きたかの要点と現状を紹介する。

カンボジアの最低賃金が昨年5月、縫製・製靴業で最低賃金がそれまでの月 61 米ドルから同 80 米ドルへと大幅に引き上げられたことは前号でお伝えした。背景として、総選挙を控えたフン・セン首相率いるカンボジア人民党政権が、同150 米ドルへの引き上げを公約した野党のカンボジア救国党(サム・レンシー党首)に縫製労働者などの票が流れるのを少しでも食い止めようとした側面もあるようだ。

だが7月の総選挙で大きな躍進を遂げた救国党は「不正選挙が行われた」と主張し、人民党の勝利を認めず新議会をボイコット。選挙のやり直しを求めて抗議運動を展開した。昨秋以降、同党と縫製業などの労働団体が 160 米ドルへの最低賃金引き上げ要求で共闘する形に発展。昨年 12 月には賃上げ要求ストライキ、再選挙要求集会といった運動がエスカレートした。

政府譲歩も流血の惨事に

カンボジア政府は同月 24 日、事態打開に向けて 18 年までに段階的に 160 米ドルに引き上げると発表。続いて、当初は95 米ドルとしていた今年4月からの新最低賃金を5米ドル上積みし、100 米ドルに修正した。しかし労働側は政府の譲歩を評価せず、あくまでも最低賃金月 160 米ドルの即時実現を主張してストを続け、影響は、プノンペン経済特区(SEZ)で操業する一部日系工場にまで一時波及した。ついに今月3日、プノンペンで一部暴徒化したとされる労働者のデモ隊に治安部隊が発砲し、5人が死亡する事態に至った。

現地から得た情報では、プノンペンの情勢は取りあえず落ち着いてきており、街中は平穏という。政府と野党・労働団体は今のところ、双方とも一時的に一歩退いた状況のようだ。工場にも労働者は戻ってきているとの話。しかし完全とはいえず、戻ったのは8~9割との情報が届いている。

日系の進出機運に冷や水か

一連の事件が、せっかく盛り上がりを見せ始めた日系企業のカンボジア投資ムードにある程度の冷や水を浴びせる結果になりそうなのは、現地からの話を聞いても、どうやら避けられそうにないようだ。与野党の権力闘争に最低賃金問題がリンクしてしまった以上、速やかに円満な解決を図ることは非常に難しそうに見える。

前回も言及したが、約 30 年の長きにわたったフン・セン政権の終わりがいよいよ見えてきたのかもしれない。カンボジアを見るに当たり、今後はポスト・フン・センを視野に入れることが望ましいだろう。同時にカンボジアの事件は、人件費が安いと言われる国・地域も、いずれは上がるということを改めて教えてくれているように感じる。まさしく、中国がそうだったように。(NNA香港

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