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輸出を中心に経済成長をしていた中国は世界の最大の市場へと移り変わり、独資形態での進出のしやすさや金融危機後の更なる中国進出による生産販売拡大等、経済環境の変化、規制緩和等により、近年組織再編を検討している会社が増加しています。さらに円高が恒常的に続く中、円高を有効活用するため、日本政府は日系企業による海外企業のM&Aのための融資枠を確保するという動きがあり、組織再編は今後さらに加速していくと思われます。
今回から、中国の組織再編をテーマとして数回にわたって解説します。

第一回は、駐在員事務所から現地法人への組織変更についてです。駐在員事務所に対する規制強化や、実態として営業活動をしていることに対するコンプライアンス面の考慮から、駐在員事務所から他の形態へと組織変更をする動きがこの数年活発です。実務上、駐在員事務所から販社への組織変更という形態が多いため、以下、駐在員事務所から現地法人(販社)設立という流れを前提として解説します。



駐在員事務所から現地法人への組織変更


1.手続きについて

駐在員事務所から現地法人への変更とはいえ、手続きとしては、直接変更を行なうことはできず、現地法人設立と駐在員事務所の閉鎖の手続きを実施することになります。現地法人の設立と駐在員事務所の抹消のいずれを先に行うことも可能ですが、駐在員事務所の人員を現地法人に移行させる場合、駐在員事務所を清算してから現地法人を設立する流れとすると、一定期間活動資金が途絶えることとなり、また清算手続きは時間がどの程度かかるか予測が難しいため、一般的には、現地法人を設立して、資本金が投入され、資金が利用出来る状態になった段階にて、駐在員事務所を閉鎖します。

以下、手続きの一般的な流れについて見ていきましょう。(実際の手続きは地域により異なることがあります)

設立手続(現地法人設立)
  1. 法人名称重複確認及び法人申請手続き(工商行政管理部門)
  2. 臨時ID取得(質量監督部門)
  3. 法人設立申請(商務部門)
  4. 営業許可申請(工商行政管理部門)
  5. 会社印等作成(公安指定場所)
  6. 法人ID番号登録(質量監督部門)
  7. 外貨登記申請(外貨管理部門)
  8. 税務登記申請(税務部門)
  9. 口座開設(銀行)
  10. 資本金の験資(会計師事務所)
  11. 税関登記申請(税関部門)
  12. 財政・統計登記申請(財政・統計部門)
  13. 営業許可証の書換え(工商行政管理部門)

清算手続(駐在員事務所)
  1. 清算報告書作成(税務師事務所)
  2. 税務登記抹消申請(地税国税部門)
  3. 銀行口座抹消(銀行)
  4. 未決済事項の確認(外貨管理部門及び税関)
  5. 残余金国外送金申請(外貨管理部門)
  6. 登記抹消申請(工商行政管理部門)
  7. 組織代表番号抹消申請(質量監督部門)
  8. 社印抹消手続き(公安)

2.手続きの注意点について


1)同じ住所で現地法人を設立できるか?
会社のコスト負担を抑えるためにも、駐在員事務所が賃借している場所に現地法人を設立したいと考える会社は少なくないと思います。しかし中国では1住所1登記が原則で、同じ住所で2つの組織を登記することはできません。そのため1住所を2住所に分けて、駐在員事務所の賃借場所を利用して現地法人を設立するということが実務上行われるケースは少なくありません。これはその地域でそもそもこの方法を実務上認めていなかったり、認めていたとしても、一定面積が必要であったり、現地法人設立後、駐在員事務所をただちに清算することが前提であったりと、ケースバイケースのため、具体的に実務上可能か否かは事前に個別確認をする必要があります。以下、駐在員事務所登記住所を利用して、同じ住所で現地法人を登記可能である場合のその実務事例を紹介します。
  1. 駐在員事務所が賃借しているオフィス番号1801室を1801A室と1801B室に分けて、賃貸者と賃貸契約を再締結(このとき賃貸者より賃借期間の延長要求や、家賃の再交渉があることも多いようです)
  2. 駐在員事務所の住所を1801号から、1801A号に住所変更手続き実施
  3. 1801Bを新法人として登記
  4. 1801Aの駐在員事務所の清算手続きを開始し、税務抹消申請書類を当局が受理した段階で駐在員事務所の賃貸契約を解除
  5. 賃貸者と新法人は新たに1801室として賃貸契約を結びなおし、新法人の住所を1801Aから1801へ変更
なお、上記のような方法ではなく、新たに場所を賃借してその場所を賃借した場合、駐在員事務所の賃借期間は清算手続きが全て完了するまで待つ必要はありません。実務上は税務抹消申請を当局が受理した段階をひとつの目処として賃貸契約が終了できるように交渉していけばよいでしょう。さらに、金融危機の影響で、登記抹消をしないままいなくなってしまった会社の後に、その状況を知らずに新たに賃借してしまうことが考えられますが、その場合であっても、当局に事情を説明し、当局の担当者が現場を実地確認することで、新たにその場所を登記できることが一般的ですので、焦らずに対処すべきです。

2)税務
駐在員事務所清算時の注意点は、これまでの納税がきちんとなされてきたかがポイントです。税務師事務所による清算報告書は、通常直近3年間分の納税状況について実施します。清算報告書の提出は本来強制ではありませんが、実務上税務局により清算報告書の提出が要求されます。過去の納税に不安がある場合、専門家を通じてリスク調査を実施し、清算においてどのくらいの追徴リスクがあるか、事前に把握するのは有効だと思います。

また現地法人設立後、仕入販売を行うに際して、増値税一般納税人資格申請を行い、批准を得たうえで発票の自社発行や仕入控除が可能となりますが、資格取得のための税務局内部要件はその市ごとに特徴が出やすい(例:財務室を要する等)ため、設立後の取引に影響を及ぼさないように、事前に専門家に相談して確認しておくとよいと思われます。

3)手続き期間
現地法人の設立は、特殊なライセンス等の取得を除き、当局への申請を開始してから3~4カ月ほどですが、駐在員事務所の清算はケースバイケースで3カ月~1年程度(それ以上も)要することもあります。最も時間を要するのは税務部門の登記抹消です。

4)口座残余金
銀行口座の残余金は、手続きを経て海外親会社へ送金手続きが可能ですが、金額が僅少の場合は、現金で引出すことも実務上は多いです。

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