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[実務入門] (24) 記帳本位通貨 (1)

前回までで外貨建取引の取引発生時、月末、決済時の会計処理についてみていきました。今回は、「記帳本位通貨」についてみていきます。

(1) 記帳本位通貨とは

そもそも、これまで話しの前提としてきている「外貨建取引」とは何でしょうか?

その回答は、「企業会計制度」第117条にこう記されています。
「外貨取引とは、記帳本位通貨以外の通貨により行われた金銭の収支、債権債務の決済等の取引を指す。」

そこで出てくるのが、では「記帳本位通貨」とは何かという疑問です。記帳本位通貨は文字通り帳簿をつけるに当たって基本となる通貨のことですが、「会計法」第12条にはこのように規定されています。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

「会計処理は人民元を記帳本位通貨とする。取引の収支が人民元以外の通貨を主とする単位は、そのうち一種類の通貨を記帳本位通貨として選定することができるが、作成する財務会計報告書は人民元に換算しなければならない。」
 
この規定にしたがって、外貨(日本円やアメリカドルなど)で帳簿をつけている場合であっても、年度決算においては当該外貨建での財務諸表を作ると同時に、その外貨建財務諸表を換算して人民元建財務諸表を作成する必要があります。

例: A有限公司においては、以下のような取引が毎月行われています。

B商品の販売とCサービスの提供は独立に行われており、取引口座もバラバラに開設され管理されているものと考えます。

簡便のため、月中の取引は3件。仕入の決済は即時に行われ、売上と役務提供の決済は未済であると仮定します。

  • B商品の仕入 900,000元
  • B商品の売上 1,200,000元
  • Cサービスの提供 7,500,000円 (役務提供時1元=12.5円)
  • 月末為替レート 1元=15円

<仕訳>

B商品の仕入
仕入 900,000 現預金 900,000 記帳通貨RMB
B商品の売上
売掛金 1,200,000 売上 1,200,000 記帳通貨RMB
Cサービスの提供
売掛金 600,000
(=7,500,000÷12.5)
売上 600,000 記帳通貨RMB
月末換算
為替差損 100,000
(=7,500,000÷15-600,000)
売掛金 100,000 記帳通貨RMB

ところで、ここで中国の会計の前提となっている考え方として、帳簿は単一の通貨で記録すべきである、という考え方ですが、これは会計の世界で普遍的なコンセプトでは必ずしもなく、日本の会計基準やIFRSの財務諸表の作成プロセスとは取り扱いに違いが出てくる場合があります。

これらについては次回に引き続きみていくことにします。