中国

[実務入門] (21) 外貨建取引の会計 (1)

今回は、外貨建取引の会計の基本についてみていきます。

(1)為替レート

中国人民銀行(中央銀行)は毎日為替レート[人民币汇率中间价]を公表しています。(上海外為市場における銀行間取引終値とは異なり、日本語では基準値と呼ばれるものになります。)
http://www.pbc.gov.cn/publish/main/536/index.html
帳簿上の外貨の換算に当たっては、当該レートを使っていきます。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

(2)取引発生時の処理

外貨建取引は、原則として当該取引発生時の為替相場による人民元換算額をもって記録します。その「取引発生時の為替相場」とは、具体的には以下のいずれかの時点での為替レートであり、これを継続適用します。

  • 取引発生時
  • 取引が発生した月の最初の日

[例] A社は、2011年11月30日に製品をドル建てで1百万ドル輸出した。A社は取引発生時の為替相場を使用して継続的に記帳しており、取引実行日11月30日時点での直物為替相場は以下の通りであった。
 取引実行日(11月30日) 1ドル=6.4元

会計処理
取引実行日 売上取引を直物為替相場により計上する。
借方; 売掛金 6,400,000 貸方; 売上 6,400,000 (元)

(3)為替予約

為替予約、通貨先物、通貨スワップ、通貨オプション(キャップなど)の取引をした場合、これは金融派生商品(デリバティブ)の取引の1つとなります。外商投資企業の多くが採用する「旧」企業会計準則では事業会社におけるこれらの取引に関する会計処理が定められておらず、実務上は一般的に簿外で処理されています。

[例]  A社は、2011年11月30日に予定されている製品のドル建輸出に関して、元高による決済金額の増加を懸念して、この取引をヘッジするための為替予約を11月15日に行った。A社は取引発生時の為替相場を使用して継続的に記帳している。取引量及び価格の予想に基づいて、2月末を決済期日とする為替予約を1百万ドル行い、為替予約相場は1ドル=6.37元であった。直物為替相場の推移は次の通りである。11月30日に2月末を決済日とする、1百万ドルの輸出取引が行われた。
 為替予約締結日(11月15日) 1ドル=6.405元
 取引実行日(11月30日) 1ドル=6.4元

会計処理

  1. 為替予約締結日 (11月15日)
    仕訳なし
  2. 取引実行日(11月30日) 売上取引を直物為替相場により計上する。
    借方; 売掛金 6,400,000 貸方; 売上 6,400,000 (元)

なお、日本企業(親会社)の多くが採用している振当処理は中国で一般的な会計処理方法とはいえません。
[例]上記の例ですと
2. 取引実行日(11月30日) 売上取引を為替予約相場により計上する。
借方; 売掛金 6,370,000 貸方; 売上 6,370,000 (元)
→中国では認められた会計処理とはいえません。

次回も引き続き外貨建取引の会計についてみていきます。上記の例について、12月末に行うべき会計処理、2月末に行うべき会計処理について考えます。