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[実務入門] (12) 固定資産 その4

前回は、個人所得税修正案の草案について解説しましたが、今回は、前々回に引き続き会計処理マニュアルの減損会計のポイントについて説明したいと思います。減損会計の基本的な手続きは、「資産グループの識別(グルーピング)」、「減損の可能性がある資産の識別」、「資産の回収可能価額の測定」、「資産の減損損失の確定」という順に行います。今回は「減損の可能性がある資産の識別」から説明します。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

減損の可能性がある資産の識別

貸借対照表日において、資産が固定資産の減損している可能性を示す兆候があるか否かを判断しなければなりません。また、日本における上場会社等の中国子会社等は、親会社より四半期ごとに判断が求められることもあるので注意が必要です。以下の兆候がある場合、資産に減損が生じている可能性を示しています。

  • 当期、資産の市場価値が大幅に下落している
  • 当期、企業を取り巻く環境および資産がおかれている市場において、企業に悪影響を及ぼす著しい変化が生じる、または、近いうちに生じる見込みである
  • 資産の陳腐化または資産自体が破損されていることを示す証拠がある
  • 資産が遊休状態にある、または、使用が中止されている、または、将来的に遊休状態となるもしくは使用が中止される見込みである
  • 企業の内部報告より入手した証拠が資産の経済的成果が予想より低下している、または、低下する見込みであることを示している場合

上記のような兆候が生じていない場合、減損が生じていないと判断され、それ以上の手続を実施する必要はありません。

資産の回収可能価額の測定

資産に減損の兆候があった場合、回収可能価額を見積もらなければなりません。ここで回収可能価額とは、その資産の公正価値から処分費用を差し引いた後の純額と資産の見積将来キャッシュフローの現在価値のいずれか大きい方となります。見積キャッシュフローの対象期間は、最大5年間であり、経営者がさらに長い期間の合理性を証明できる場合のみ、5年を超える期間を対象とすることができると規定されているため、注意が必要です。
資産の公正価値から処分費用を差し引いた後の純額と見積将来キャッシュフローの現在価値のいずれか一方が資産の帳簿価額を上回る場合、当該資産には減損が生じていないことを示しており、減損損失を計上する必要はありません。

資産の減損損失の確定

回収可能価額の測定結果により、資産の回収可能価額がその帳簿価額を下回ることが明らかになった場合、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額計上しなければなりません。減額計上した金額は資産の減損損失として認識し当期損益に計上し、対応する資産減損引当金を計上することになります。
減損損失認識後は、減損後の帳簿価額を残存耐用年数内に規則的に配分するため、減価償却費について将来の会計期間において調整が必要となってきます。

減損会計は会社の損益に大きなインパクトを与える可能性があります。よって、会計事務所・監査法人と相談したうえで、4つのステップに分けて、会計処理マニュアルに詳細に手続きを記載しておく必要があります。

次回は、無形資産のポイントについての説明を予定しています。