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輸出を中心とする経済政策により発展を遂げてきた中国は、2006年に世界一の外貨保有国となりました。以来、豊富な外貨を利用した米国国債購入など貿易黒字を緩和する政策が採られておりますが、それでも人民元切り上げの圧力は日増しに強くなっています。

2008年7月に始まった貿易信用(輸入ユーザンスや輸出前払など)に対する外貨管理の強化は、こうした政策転換の流れの一つとしてとらえることができます。

そこで貿易信用の中身をもう一度きちんと整理し、人民元に対する影響を踏まえて政策を理解していきたいと思います。


1. 貿易信用と元高圧力の関係

貿易信用は、支払を先延ばしする「輸入延払(輸入ユーザンス)」と「輸出延払回収(輸出ユーザンス)」、及び支払を前倒しする「輸入前払」と「輸出前受」に分けられます。

これを中国全体のバランスシートへの影響から考えると、輸入延払と輸出前受は「対外債務」、輸入前払と輸出延払回収は「対外債権」、ということになります。

元高圧力となるのはこのうち対外債務の方です。
対外債務 対外債権
輸入 輸入延払(輸入ユーザンス) 輸入前払
輸出 輸出前受 輸出延払回収(輸出ユーザンス)

2. 2008年の貿易信用規制

2008年7月に対外債務に関する外貨管理の規定が相次いで交付されました(汇发[2008]29号、30号)。その内容は、
  • 輸入延払:90日以上は登記が必要、かつ累計登記可能額は前年の10%まで
  • 輸出前受:登記が必要
というもので、明らかに元高圧力を緩和することが狙いでした。

一方で累計登記可能額の制限は企業の資金繰りに大きな影響を与えるものであり、しかも2008年後半には国際的な金融危機により輸出が急減速したため、当局は逆に登記可能金額を数回に渡り緩和し、2009年6月には「登記残高(以前は累計登記可能額)は前12ヶ月の30%(以前は10%)」となりました。尚、登記の残高規制は5万米ドル以下の場合は対象となりません。

また2008年11月には対外債権に対しても同様の規制が出されています。

3. まとめ

以上をまとめると次の表のようになります。
条件 登記 登記残高規制
対外債務 輸入延払 90日以上 必要 前12ヶ月の30%まで
輸出前受 - 必要 前12ヶ月の30%まで
対外債権 輸入前払 - 必要 前12ヶ月の30%まで
輸出延払回収 90日以上 必要 -
また、最近相次いで出されている短期対外債務の削減や輸入支払手続簡略化の規定は、同様に元高圧力緩和の文脈から理解することができます。

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