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労働契約法の制定、最低賃金の上昇、出稼ぎ労働者の社会保険加入…企業の人件費コストが上がっている中国ですが、日本と比べてコストの低い労働力を確保することができる中国は現在でも魅力的な生産拠点ではあります。但し、低い人件費を上手に活用するためには、労働関係の規定をきちんと把握して、労使関係が順調である必要があります。

今月は、給与や経済補償金(退職補償金)の未払いを提起された事例を基に、企業として如何なる対策が必要かを考えたいと思います。


事例1.契約期間満了での退職に経済補償金は必要?

契約期間満了に伴い退職した職員から、経済補償金の請求に関する連絡が入る。契約期間の一ヶ月前には労働契約の更新を行わない旨を労働者と確認した上で、円満に労働契約を終始したつもりであったため、企業側は経済補償金の支払いを実施していない。

労働契約法では、期間を定めた労働契約の終止に対して、原則として、企業側に経済補償金支払義務を規定しています。今回のケースでは、元従業員に対して規定に従った経済補償金を支払うことで解決に至りました。

※ 労働契約期間の満了にあたり、企業側が契約条件の維持、或いは契約条件の向上を提示して労働契約の更新を提示したにも関わらず、労働者側が同意しないため契約が終止する場合には、経済補償金の支払義務はありません(労働契約法第46条5項)

◇ 経済補償金の支払義務

労働契約法では、企業に経済補償金支払義務がある事例を七つ列挙していますが、企業経営に当たっては、従業員の自発的退職以外は経済補償金の支払義務があると考え、支払義務のない退職事由を例外と考えた方が容易に理解できるかと思われます。

経済補償金の支払義務がないケース
  • 労働者側からの契約解除提起
  • 企業による即時契約解除
    職務怠慢等の従業員に過失がある際の契約解除条項に従う
  • 契約期間満了時に企業が契約更新を希望するが、従業員がそれに同意しない場合
    但し、企業が提示する更新後の契約条項が、従前の契約内容と比べて労働者に不利な条件へ変更(給与の減額等)される場合には、従業員の契約更新不同意に対しても経済補償金の支払い義務が発生します。

◇ 労働契約期間満了時の事前通知義務

労働者や企業が労働契約の解除を望む場合、労働契約法等関連規定に基づき、原則として30日前に相手方へ書面での通知を行う必要があります。

但し、労働契約期間が満了となる場合、相手方に契約継続か否かの意思表示をする義務に関しては、何らの規定も示されていません。労働契約法においては、労働契約期間の満了を以て労働契約の終止とする旨が規定されておりますので、労働者と企業が何らの意志も示さない場合には、当該労働契約は期間満了後に効力がなくなることになります。通常の企業経営では、労働契約期間の満了30日程度前に、従業員に対して継続の意思確認を行っていることが多いと思われます。

対策

労働法規を再度確認した上で、労働契約の終止を企業側が望む場合には、経済補償金の支払額を確認した上で、相当の資金繰りを考えておかれた方が宜しいでしょう。

事例2.退職後に賞与を請求される

ある企業では、毎年12月に給与1ヵ月分を賞与として従業員へ支給している。契約満了に伴い2009年10月末日を以て退職した従業員から、12月末に支給する予定の年間賞与として勤務相当日数で計算した金額を請求される。

当該従業員が労働局へも相談へ行っていることが分かったため、労働仲裁等に入ることを避けるため、請求された金額を支給した。

◇ 退職者への賞与支給義務

退職者へ、在職時の勤務分に対する賞与を支給するか否かに関しては、明確な規定が存在しておりません。そのため、賞与の支給時期や支給方法、或いは支給の有無に関しては企業側に裁量権が存在するものと考えるのが一般的です。

但し、労働法では、(賞与を含む)給与配分は労働量に比例して行い、同等の労働に対しては同等の報酬を支給することが原則である、と定められています。従業員側に立って考えると、当該賞与計算対象期間に労働実績があるため、在職者と同様に賞与を受け取る権利があると解釈することができます。

過去の判例では、企業側に賞与支給の裁量権が認められたものの、労働法の上記規定を持ち出されて、企業側に賞与支給が指示された事例もあります。

対策

法律に規定がないため、労働仲裁等となる場合には、社内の賃金給与規定や労働契約内容が焦点となるかと思われます。例えば、「賞与は企業の経営実績や経済状況、及び従業員の勤務実態や勤務環境等を総合的に考慮した上で、支給実施や支給金額を企業管理者が決定し、支給を行う場合には○月に実施する」等の内容があれば、企業の裁量権が大きくなり企業側に有利な判断が行われる可能性はあります。

一度、お時間のある時に、自社の労働契約書や賃金給与規定を見直してみては如何でしょうか。労働契約法等に反した規定は当然無効ですが、労働部門が作成した労働契約書の様式では明確に規定されない事項に関して、労働者との間で追加契約を締結することも可能です。

事例3.未消化有給休暇の買い取り

退職した従業員より、未消化有給休暇日数分の給与補填(有給休暇の買取)を請求される。当該企業の休暇規定には、有給休暇の買い取りに関する条項が存在しないため、企業側は給与支給を断る。

2008年1月1日より施行されている≪従業員有給休暇条例≫には、有給休暇の未消化が存在する場合、企業側に買い取り義務があることが記されています。企業は、法律で規定された計算公式を以て、後日に当該従業員へ追加の給与支払いを実施しました。

◇ 有給休暇の買い取り

企業は、従業員の年次有給休暇取得を保証(手配)する義務があります。但し、生産状況等により従業員が有給休暇を取得することが出来ない場合、従業員の同意を得た上で、企業は有給休暇の買い取りを行わなければなりません。有給休暇の買い取り金額は、当該従業員の一日当たり給与額の三倍(一日分の休暇買い取りに3日分の給与)となります。

なお、企業が従業員に休暇を手配しようとするものの、従業員本人が休暇を取得する意思がない場合、有給休暇取得が不要である旨を書面で提出させることにより、買い取り時には給与額相当のみを支払うこととなります。

対策

有給休暇取得を、従業員からの申請に委ねるのではなく、業務の閑散期等を見計らい率先して取得させることが重要となります。これは、有給休暇の買い取りに係る問題だけでなく、従業員退職時の引き継ぎにも関係してくる場合があります。中国労働法では、従業員の退職希望時には30日前の報告が義務付けられていますが、未消化有給休暇を多く残している場合、退職意思表明後、一週間程度で有給休暇の消化に入ってしまい、業務の引き継ぎに支障をきたすことが考えられます。

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