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個人所得税の2回目は、給与所得にかかる個人所得税の比較をします。1つの会社に勤め、その会社から給与を毎月支給されている一般の会社員の場合を想定し基本的な項目を比較します。



まずは、申告及び納税の大まかな流れです。日本及び中国は、会社が毎月給与や賞与の支払い時にその給与或いは賞与にかかる個人所得税を源泉徴収し、翌月会社が個人に代わって納税をします。

日本の所得税の課税期間は暦年1年間ですが、毎月の源泉徴収による納税額と1年間の給与及び賞与の総額に対する所得税額は通常一致せず、その年最後に給与を支払う際に年末調整により納税額を精算します。(給与収入額が2,000万円超の人その他一定の人は年末調整ではなく確定申告による精算となります。)

これに対し中国は、給与や賞与にかかる個人所得税の課税期間は各月1ヶ月間であり、会社が毎月の源泉徴収による納税とともに個人所得税の申告書を税務局に提出し申告と納税が毎月完結するため日本の年末調整や確定申告に相当する制度はありません。

香港の場合、給与や賞与にかかる個人所得税の課税期間は3月31日までの1年間で、毎月の給与支払い時に源泉徴収などによる納税も申告も行われません。通常毎年5月にIRD(内国歳入庁)より発行される税務申告書に納税者が給与額や扶養家族の状況等などを記載し1ヶ月以内に提出した後、IRDが課税対象となる給与所得を査定し、8月から10月頃に納税すべき税額が記載された賦課決定通知書が納税者に送付されます。

この賦課決定通知書にはその課税年度の確定税額のほかに、翌課税年度の見積査定所得額と予定納税額及び納付期限も記載されており、[当課税年度の確定税額-既予定納税額+翌課税年度の予定納税額]を2回の納付期限にそれぞれ所定の税額を納付します。

次は個人所得税額の計算方法です。表1は、給与所得のみを有する場合の個人所得税額の計算式で表2はその税率表です。

表1:税額計算式
日本 課税所得金額×税率-速算控除額=税額
(課税所得金額 = 年収 – 給与所得控除 – 各種所得控除)
中国
  1. 個人負担方式課税所得金額×税率-速算控除額=税額
    (課税所得金額 = 税込給与額 – 基礎控除 – その他控除)
  2. 会社負担方式
    A÷(1-税率)×税率-速算控除額=税額
    (A = 手取給与額 – 基礎控除 – その他控除 – 速算控除額)
香港
  1. 標準課税方式 : 課税所得金額 × 15% = 税額
  2. 累進課税方式 :純課税所得金額 × 税率 = 税額
    (純課税所得金額 = 課税所得 – 所得控除)
まず日本ですが、年収は、給料、賃金、賞与、役員報酬、役員賞与のほかこれらの性質を有する収入金額です。但し、合理的な金額の通勤手当など一定のものは課税されません。給与所得控除は、収入から控除する必要経費の意味を持ちますが、年収に応じ一定の算式で求め最低控除額は65万円です。各種所得控除は、基礎控除、扶養控除、配偶者控除など15種類の所得控除があり、個人的な事情を加味して税負担を調整するものです。所得控除の種類が多いのは日本の所得税の特徴の1つと言えます。因みに、日本国内に住所などがない非居住者は、15種類の所得控除のうち、雑損控除、寄付金控除、基礎控除のみ差し引くことができます。また、個人の所得に対し所得税のほか、地方税である住民税が課されることも日本だけの特徴です。住民税のうち、所得の金額に応じて課される所得割額の税率は10%であり、表2-1の住民税込みの税率を用いて計算した税額が、給与所得に対して課される所得税と住民税の合計額となります。
表2-1 日本:所得税額及び所得税額+住民税額速算表
課税所得金額 所得税税率 住民税込税率 速算控除額
195万円以下 5% 15%
195万円超 330万円以下 10% 20% 97,500円
330万円超 695万円以下 20% 30% 427,500円
695万円超 900万円以下 23% 33% 636,000円
900万円超 1,800万円以下 33% 43% 1,536,000円
1,800万円超 40% 50% 2,796,000円
次に中国ですが、税額を日本のように税込の給与総額から求める計算式と、税額控除後の手取額から求める計算式の2通りがあります。駐在員など手取りの給与額が保証され会社が個人所得税を負担する場合は、会社負担方式により、手取りの給与額を税込の給与額にグロスアップし税額を計算します。計算式のうち、’(1-税率)’の税率は、手取りの給与額に対応する税率を適用し、’×税率’の税率は、この計算により求めた税込の給与額に対応する税率を適用します。給与には給与、賃金、賞与、ダブルペイ、手当その他の職務や雇用に関係する所得を含みます。但し外国籍の人の場合は、住宅手当に相当するもののうち、会社が住宅を無償で提供した場合や家賃にかかる正式な領収書(発票)により会社で精算したもの、また、合理的な範囲(年2回が目安)と認められるホームリーブ費用などは課税されません。給与額から控除できる基礎控除額は2,000元ですが、外国籍の人の場合は2,800元加算され4,800元となっています。その他、給与額から控除できるものに寄付金控除がありますが、これ以外に控除できる所得控除はなく、扶養控除などの人的控除項目が多くある日本や香港に比べ、一般的に課税所得金額が高くなると言えます。(国が規定する中国の基本養老保険、基本医療保険などの社会保険料のうち個人負担分は給与額から控除できます。)
表2-2 中国:個人所得税額速算表
(1)個人負担方式(=税込) (2)会社負担方式(=手取り) 税率 速算控除額
500元以下 475元以下 5% 0
500元超 2千元以下 475元超 1,825元以下 10% 25
2千元超 5千元以下 1,825元超 4,375元以下 15% 125
5千元超 2万元以下 4,375元超 16,375元以下 20% 375
2万元超 4万元以下 16,375元超 31,375元以下 25% 1,375
4万元超 6万元以下 31,375元超 45,375元以下 30% 3,375
6万元超 8万元以下 45,375元超 58,375元以下 35% 6,375
8万元超 10万元以下 58,375元超 70,375元以下 40% 10,375
10万元超 70,375元超 45% 15,375
香港の給与所得税の税額は、標準課税方式と累進課税方式で計算した金額のいずれか少ない金額となります。給与収入等から経費を控除したものが課税所得金額となりますが、控除できる経費の要件が厳しいため、殆どの場合、給与収入等の給与所得が課税所得金額となります。香港の所得控除には、寄付金控除と扶養控除などの人的控除がありますが、標準課税方式は所得控除前である課税所得金額に15%の税率(2008/09年度)を適用し、累進課税方式では、所得控除後の純課税所得金額に累進税率を適用します。
表2-3 香港:給与所得税累進税率表(2008/09年度)
純課税所得金額 税率
4万HKD以下 2%
4万HKD超 8万HKD以下 7%
8万HKD超 12万HKD以下 12%
12万HKD超 17%
課税対象は香港を源泉とする給与所得で、給与、賃金、休暇手当、コミッション、賞与、手当など、雇用主に限らず他の者から収受したものも含みます。また、雇用主が住宅を無償貸与、或いは従業員自身が家賃を支払い会社で実費精算をする場合は、課税所得金額の10%(ホテルの場合は4%或いは8%)を給与所得に含め、従業員が1部家賃を負担する場合は、この10%の金額から個人負担家賃分を差し引いた金額を給与所得に含めます。住宅手当として現金支給した場合には支給額全額が給与所得となります。

このほか、中国では賞与に対する課税方法に特徴があります。年間一回性の賞与については、その賞与額を12ヶ月で割った金額に対応する税率及び速算控除額を適用して税額を求めることが出来ます。そのため、その賞与額に対応する通常の税率を適用するのに比べ大分税額が少なくなります。年間一回性の賞与以外の半期賞与などにはこの優遇計算は適用出来ず、当月の給与に合算して税額を計算します。

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[日本中国香港 税制比較] 第6回 個人所得税その2 from 香港・中国・東南アジア法令情報サイト NAC Global .NET