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前回は法人の所得に対する税の比較でしたが、今回は一般事業会社が行う資産の譲渡や貸付、サービスの提供などに対する税の比較です。
流通課税とも言いますが、その内、日本の消費税とこれに相当する中国の増値税と営業税について解説します。中国には他に、貴金属やお酒など特定品目に対して課税する消費税がありますが、日本の消費税と性格が異なるため省略します。また、香港には日本の消費税に相当する税金がないため2カ国での比較となります。


1.基本項目の比較

表1は基本項目の比較です。日本の消費税に相当するものは、中国では増値税と営業税の2つの税目に分かれており税率や税額の計算方法などが異なります。①の課税対象の範囲からも想像できますが、中国の場合、設備の販売と据付サービスなど1つの取引のうちに増値税と営業税の課税対象取引が含まれていることがあります。こうした取引を混合販売といいますが、増値税及び営業税の規定により、原則として、その会社が生産、卸売、小売に従事している場合にはその混合販売取引を物品の販売とみなして増値税のみが課税されます。また、1つの会社が増値税の課税対象となる物品の販売と営業税の課税対象となるサービスを提供していることもあります。これを兼営といいますが、この場合、それぞれの売上額を区分して増値税額及び営業税額を計算し納税するのが原則です。区分計算しない場合は、税務局により売上額を査定されることになります。課税の対象とならない取引についても日本と中国では異なるものがあります。日本の場合、土地の譲渡及び貸付、貸付金の利子などについては原則消費税の課税対象にはなりませんが、中国では、土地使用権の譲渡及び貸付、貸付金の利子は営業税の課税対象となります。

次に②納税義務者ですが、中国の増値税は納税義務者を一般納税者と小規模納税者に区分しています。小規模納税者の基準は、製造業などは年間の課税売上高が50万元以下、卸売業や小売業などは同80万元以下です。一般納税者は税務局より一般納税者としての認定を受ける必要があるため、税務局に申請をする必要があります。日本には課税事業者についてこうした区分はありませんが、免税事業者というものがあります。これは前々事業年度の消費税の課税売上高が1,000万円以下の会社は、当事業年度の消費税の納税が免除されるというものです。但し、免税事業者となる場合でも、課税事業者の選択の届出をすることにより課税事業者となることも出来ます。(免税事業者は課税されないかわりに還付も行われないため、固定資産の購入などで消費税の還付が見込まれる場合に課税事業者を選択することも考えられます。)

③税率と④税額の計算方法ですが、消費税と増値税は売上にかかる税額から仕入等にかかる税額を控除した差額を納税し、申告及び納税は事業者、税金の負担は消費者となります。但し、増値税の納税義務者のうち小規模納税者は税率が低い反面、仕入等にかかる税額を控除することは出来ません。営業税は表2のとおり業種などにより税率が異なります。

営業税には仕入控除の制度がなく、納税義務者が税金の負担者となります。支払った営業税はその企業のコスト(費用)となるため、例えば100を売上げて営業税が5発生した場合、実質の収入額は95となります。

日本の消費税額の計算方法には、課税売上高から納付する税額を求める簡易課税制度というものがあります。これは、仕入等にかかる消費税額を、実際の仕入等の金額から計算するのではなく、売上にかかる消費税額にみなしの仕入率を乗じた金額を、仕入等にかかる消費税額として税額を求めるものです。このみなしの仕入率は、卸売業は90%、製造業は70%など事業区分によって異なります。簡易課税方式を選択した場合、税額の計算は簡便になりますが、みなし仕入率を用いて税額を計算するので還付ということはなく、輸出売上の割合が大きかったり、多額の固定資産の購入などにより還付が発生する状況となった場合には不利となります。この簡易課税制度を選択適用できる事業者は、前々事業年度の消費税の課税売上高が5,000万円以下の者です。

⑤仕入控除の方式は、日本の消費税では帳簿方式、中国の増値税ではインボイス方式を採っています。帳簿方式は、帳簿及び請求書等の保存を仕入控除の要件とし、基本的に会計帳簿に計上された仕入等にかかる消費税額が控除されます。これに対し増値税のインボイス方式では、増値税の専用領収書に記載された増値税額のみ控除できます。そのためこの専用領収書でなく市販の領収書などを取得した場合には仕入税額控除ができないこととなります。帳簿方式はインボイス方式に比べ事務処理の負担が軽い反面、食料品には軽減税率を導入するなどといった複数税率の採用が難しいと言えます。

⑥申告・納税は、中国の増値税及び営業税には中間申告の制度がありません。増値税及び営業税の課税期間は、制度上は1ヶ月未満や四半期もありますが、通常1ヶ月の課税期間で申告及び納税は翌月15日以内です。
上記①から⑥の項目以外に、中国の増値税の還付制度は日本の消費税と比較して特徴があります。消費税、増値税とも、輸出売上に税金は発生せず、輸出物品に関連した国内で発生した仕入等にかかる税額は還付を受けることができます。(増値税の還付制度の対象となるのは輸出入権を持つ一般納税者です。)この税額は全額還付されるのが基本ですが、
増値税は輸出物品ごとに還付率が定められており、還付率が基本税率17%より低い場合には、17%と還付率の差が実質課税となる仕組みになっています。そのため、原材料の100%を免税で輸入し、製品の全量を輸出するような進料加工企業でも、輸出製品の還付率が17%未満の場合は、増値税が課されることになります。

表1:基本項目の比較
日本 中国
税目 消費税 増値税 営業税
①課税対象の範囲 国内における資産の譲渡、資産の貸付及び役務(サービス)の提供 国内における物品の販売又は加工、修理、補修役務の提供及び物品の輸入取引 国内における役務(サービス)の提供、無形資産の譲渡及び不動産の販売
②納税義務者の種類 - 一般納税者 小規模納税者 -
③基本税率 5% (輸出は0%) 17% (輸出は0%) 3% (輸出は0%) 3%,5%,娯楽業は5-20%
④税額の計算方法 売上に係る税額-仕入等に係る税額 売上に係る税額-仕入等に係る税額 売上高×3% 営業額×税率 (*1)
⑤仕入控除の方式 帳簿方式 インボイス方式 仕入控除不可 仕入控除不可
⑥申告・納税
確定申告 課税期間末日の翌日から2ヶ月以内 基本的に毎月申告(当月分を翌月15日まで) 増値税と同様
中間申告 直前課税期間の消費税額の金額に応じて0から11回 - - -
*1:営業額とは、相手から受け取る全ての代金と、相手から受け取る手数料、立替金額(1部立替運送費を除く)などの価格外費用を含んだ金額。

表2:営業税の税目・税率表
税目 税率
交通運輸業 3%
建築業 3%
金融保険業 5%
郵便通信業 3%
文化・体育業 3%
娯楽業 5%-20%
サービス業 5%
無形資産の譲渡 5%
不動産の売却 5%