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前回に続いて一般事業会社の法人の所得に対する課税について比較します。会計上の費用の税務における取り扱いは様々で、税率だけでなく税務上の利益である課税所得の大小が税額に大きく影響することが分かるかと思います。



1.調整項目の比較

前回に引続き一般的な事業会社が課税所得を算出する際の調整項目のうち加算項目について解説します。加算項目とは、会計上は費用とされますが税務上は費用とされないため課税所得を増額させる項目などをいいます。表1は代表的な加算項目の比較です。

減価償却費は、日本、中国、香港とも税法の償却限度額を超えた金額が加算されます。中国は、日本と比較して法定償却方法が定額法であること、法定耐用年数が5区分(建物20年、機械10年、備品5年、一般車両4年、パソコンなど電子設備3年)とシンプルであることが特徴的です。香港は、税法上の減価償却資産が、産業用建物、商業用建物及び機械設備の3つに区分されており、それ以外の資産の償却費は原則税務上の費用とは認められません。機械設備の税法上の定義はありませんが、備品や車両、パソコンなどの事業活動を行うための資産も含まれます。また、香港には初年度特別償却の制度があり、機械設備の場合は、取得価額の60%が取得年度の償却費として通常の償却費に加算されます。表2は香港の減価償却制度をまとめたものです。

次に引当金ですが、日本の法人税では貸倒引当金と返品調整引当金以外の引当金は税務上費用としては認められません。これに対し中国及び香港は、税務上の費用として認められる引当金は明記されておらず、中国の場合は実務上如何なる引当金も税務上の費用とするのは困難で、香港の場合は金額をほぼ正確に見積もることができるなどの要件を満たせば税務上の費用とできる可能性はありますが、税務局の判断に拠ることになります。

交際費は、日本及び中国は支出をすれば必ず一定額は税務上費用として認められないのに対し、香港は原則全てが費用として認められます。

福利費は中国のみ限度額が設定されており、限度額を超える部分は課税となります。

以上の調整項目のほかに、中国では税務局指定の領収書(発票)のない費用は税務上の費用として認められません。

2.欠損金の繰越

各課税年度で発生した税務上の欠損は、日本、中国、香港とも以後の年度に繰越し、以後の年度で発生した税務上の所得と相殺することが出来ます。繰越すことが出来る年数は、日本は7年間、中国は5年間、香港は永久に繰越すことができます。

表1-加算調整項目及び欠損金繰越年数の比較
masuda200903-01
表2-香港の減価償却
資産区分 初年度償却 年次償却 年次償却方法
産業用建物 建築原価×20% 建築原価×4% 定額法
商業用建物 - 建築原価×4% 定額法
機械設備 取得価額×60% 未償却残額×償却率
(10%,20%,30%)
定率法
*「特定固定資産」として定義された、工場設備及び機械装置並びにコンピュータ関連資産は支出した課税年度において全額税務上の費用とすることができます。

3.税額控除

税額の計算は、会計上の税引前利益に税務上の調整を加減算し求めた税務上の利益である課税所得に税率を乗じて行いますが、この税額から更に控除できるものがあります。

日本では、預金の利子などにかかる所得税額の控除、試験研究費にかかる税額控除或いは海外支店での所得など海外で生じた所得について外国税額が課された場合の外国税額控除など、中国や香港に比べ様々な税額控除の制度があります。

4.税額の計算

表3は、課税所得と税額の比較です。日本、中国、香港がどのように異なるかイメージとして感じてもらうため単純化した例としています。日本は、期末資本金額が1億円以下の中小法人と大法人で交際費などの調整項目の取り扱いが異なっていたり、税額の計算も、中小法人は800万円までの所得については法人税率が22%であるなど区分されています。日本の税率は、法人税のほか、法人住民税及び法人事業税を含んだ税率で、中小法人については、課税所得により法人税及び法人事業税の税率が異なるため、大体の税率を用いています。

売上原価のうちの減価償却費は、取得価額1,000の機械設備の2年目の費用で、日本の税務上費用とできる金額200を会計上の費用とした場合を想定しています。香港の税務上の減価償却費が84と少ないですが、これは取得年に一時償却60%と通常償却30%を行っているため2年目以降の税務上認められる減価償却費が少なくなるためです。

次に貸倒引当金ですが、中国、香港では実務上税務上の費用とするのは難しいですが、日本は一定の計算方法で計算した金額までは税務上の費用とすることができます。ここでは日本の税務上全額認められる金額を会計上計上しています。交際費は日本の大法人は全額税務上加算調整が行われます。銀行預金の受取利息は香港では課税対象外です。こうして計算した結果、日本の中小法人の課税所得が最も少ないこととなりました。税額はやはり税率の低い香港が1番少ない結果です。こうした比較をするまでもないですが、同じ事業活動を行った場合でも最終利益である税引後利益には大分差がでることが分かります。

表3-課税所得と税額の比較
masuda200903-02

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