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加工貿易業務に対する各種支援策について

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今回の金融危機による実体経済への深刻な影響が各地で聞かれるようになった今、国と各地の加工貿易政策において、厳しい経営環境にある加工貿易業を支援するために取られている様々な措置について紹介したいと思います。

保証金積立の暫時停止と一部商品の還付率引き上げ

12月1日より、加工貿易の制限類品目に対する保証金台帳の“実転”と呼ばれる、保証金積立義務が暫定的に停止されています。具体的には、07年44号公告において制限類輸出商品1853品目と、制限類輸入商品272品目に対する保証金積立義務について、税関企業分類A及びB類企業は、保証金台帳を開設するものの実際には積立の不要な“空転”手続きを暫定的に実施すること、また同44号公告の制限類輸入商品122品目に対しては、A類企業が“空転”を実施、B類企業は50%の“実転”管理を暫定実施することとなっています。いずれの商品についてもC類企業は依然として100%の実転管理が継続されます。この通知では同時に、家具商品17品目が制限目録の対象から今回除外されたことも明記されました。

一方、一部の「労働密集型」と言われる製品で、輸出時の増値税の還付率を引き上げる通知:財税[2008]144号も、12月1日より実施されています。製品の範囲はタイヤなどゴム製品、一部の木製品、金型、水産品、靴・帽子・家具・寝具など雑貨、一部の化学工業品、石・金属材と機械・電気類などに渡り、これまでの還付率をそれぞれ引き上げます。なお、11月19日に行われた国務院の常務会議では紡績品・衣類及び一部の軽工業品の輸出還付率を引き上げることが確定され、通知の発表が待たれるとの報道が行われています。

深セン市による産業発展支援策

深セン市政府による産業発展支援策をまとめた深府[2008]149号によると、ビジネスモデルの改善により、開発設計業務やコア業務の従事、ブランド構築などによる産業構造の変換を促進する主旨で、次のような支援策を講じるとしています。

  • 加工貿易企業が今後国内販売を拡大できるよう、専門の支援基金を設立し、一定条件を満たす企業に奨励金として支給する。
  • 加工貿易企業の台帳保証金の負担を軽減する。保証金担保専門機構を設立し、仲介機構が、市の産業発展指導方針に沿った、保証金納付義務のある進料加工企業に対し保証状担保を提供する。
  • 来料加工の操業を止めない、同一場所での法人化モデルを促進する。

*但し、一方では、法人が来料加工業務に従事することを規範化し、厳しく制限するという記載があり、同市の関連部門では、この規定に基づき、転換後の法人に対し来料加工業務を認可することはできないとしています。

深セン税関の支援策

深?の加工貿易企業が直面している厳しい経営環境を鑑み、深?税関では輸出入業務を行う企業に対し取り組む12項目の業務支援策を掲げています。その中でも、加工貿易業務を支援する以下のような具体策があります。

  • 加工貿易企業の資金繰り等の問題を鑑み、企業の分類、遵法状況などを基に、保証金の範囲を適度に縮小し、現金以外の担保形式を認めるようにしていく。
  • 外注加工の認可に関し、一括認可・分割登記、有効期間中の事後報告など手続きを簡略化していく。
  • 同一場所或いは深?税関区内での移転による加工廠法人化に対し、企業の信用記録や管理分類資格を維持できるようにする。保税設備・材料の移管手続きを速やかに取り扱う。
  • 金融危機に伴う不況により海外に輸出できなくなった加工貿易製品に対する国内販売手続きについて、手続き手順を簡素化し、HSコード分類、価格審査、通関審査、課税、くず材処理などの業務効率を高める。

政府の各関連部門による、加工貿易業務に対する支援策の効果が現れることが期待されます。
(以上)