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今回は、製造型企業の中で、生産加工工程の内製化を代表するM&Aケースをご紹介します。A社はプラスチック成型用金型製作を専門に行う中小企業です。顧客のニーズに応えて中国へ現地法人として進出しまし たが、海外での事業のノウハウがなかったため税金など予想外のコストがかかったり、一定の周期で設備投資が必要であったりして、事業規模に比して資金需要 が大きくなっていました。この企業では最終製品を自社で製作することはやっておらず、自動車や家電製品などの部品メーカーのニーズに合わせて金型を受注製 造していました。

専門技術企業の悩み

自動車や家電製品、情報通信機器などの製造工程の中で、金型製造やプレス、メッキ、研磨加工など、共通し且つ専門技術を必要とするような工程があります。これらは技術産業であり、日本の無数の中小企業が支えてきた分野です。これらの製品の専門メーカーは、川下工程の部品メーカーや組み立てメーカーのニーズに応えるため決済条件が悪くなりがちであったり、また、最終製品を直接製作するのではなく、部品や製品全体のコストの中では金型やメッキ部分のみの工程の付加価値を上げにくい状況であったりします。そして、技術導入コストなどがかかる一方、資金繰りに苦しくなってくる会社もあり、また創業者の子供達がモノづくりから離れていくという後継者難にも直面しています。こういった場合に、川上或いは川下の工程に携わる企業の傘下に入ることは、最もスムーズなM&Aの選択になると言えます。

川下業種による内製化

この金型製作企業は、1工場では採算の取りにくくなった中国現地法人を、日本でも従来取引のあった成型メーカーの中国現地法人に売却することとしました。技術開発には一定の設備投資が必要であり投資回収を短期に見積もらなければならないこと、川下業種が買い手であることと現地法人では最終製品の製造開発を行っていないため、企業価値には営業権を主張しにくく、売却金額は純資産価値相当額程度となりました。

買収の効果

金型工程を内製化する買収は、金型工程を含めた製品化の採算が全体的によくなれば成功と言えるわけですが、金型工程の担当者は成型品の付加価値を上げられるように、一体となって技術開発を行いました。また成型メーカーの人材やノウハウを活用して、材料調達コストの削減などにも取りくむことができました。一方、売り手の本社では不採算の工場を改善し活用してくれる顧客に売却することができたことが一番のメリットで、本社自身は、加工精度や品質、特殊技術によるビジネスチャンスを求めて、最終製品の開発に取り組むことになりました。買い手企業は技術の内製化により市場の競争力強化につながりました。商品サイクルが短く、競争の激しい製品分野では特に効率の改善に役立ったと言えます。

(この連載で紹介するM&Aのケースは、M&A体験者から伺ったケースを基にした架空のストーリーです。M&Aの実務に対し何ら保証するものではありません。)

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