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[労働契約法] 労働契約法各論 ~労務問題Q&A第2弾~

労働契約法が公布されてから、弊社へ多くの質問が寄せられました。今回も前回に引き続き、労働契約法が公布・施行されてから労働契約法の運用に関し弊社へ寄せられた質問についてQ&A方式で回答致します。

Q1 経済補償金支給分については、個人所得税を納税する必要があるのでしょうか?

A1 この点は、各地域によって様々です。国の規定を紹介しますと、「雇用単位が労働契約を解除したことによって個人が取得した一括の補償収入が、当地の昨年度平均給与の3倍以内の部分は、個人所得税を免除する。超過部分は、給与と合算して個人所得税を計算、納税する」[1]と規定されています。
一方、来料加工工場の閉鎖問題で話題にあがることが多い東莞市の規定は、「当地の昨年度平均給与の3倍以内」という免除基準は同じですが、納税額に関しては、次のように具体的な計算過程が規定されています。
個人所得税納税額={[(一括の補償収入-昨年度当地平均給与総額×3)÷ 勤務年数- 費用控除額 ] × 適用税率 - 速算控除額}× 勤務年数
例えば、Aさんが○会社に10年間勤務し、2008年4月に労働契約を解除された際、Aさんに経済補償金140,000元が支払われた。この場合のAさんの個人所得税納税額は、次の通りです(なお、2007年度の東莞市平均給与額は35,284元)。
{(140,000-35,284×3)÷ 10 - 2,000 ] × 10%-25 } × 10 = 1,164.80元
従って、納税額は1,164.80元になります。
ここでは、東莞の規定を取り上げましたが、個人所得税の計算方法は各地域により異なりますので、当地の規定を確認することをお勧めします。

Q2 現在の労働法では法定労働日に残業させた場合には、補充休暇を与えることができないと規定されていますが、労働者から申し出てきた場合には300%の支払いをせず、補充休暇を与えることは可能でしょうか?もし、可能である場合の休暇支給基準はどういったものでしょうか?

A2 確かに規定上は法定休暇日には会社はその人の日給の300%の給与を支給しなければならず(労働法第44条第3号)、休暇を与えることはできないと規定されています。しかし、従業員から300%分の給与支払いではなく、その分の休暇がほしい旨の申し出があった場合に、会社がこれに同意した場合には認められます。この場合には、300%分の休暇、つまり、3日間の休暇を与えなければなりません。

Q3 土曜日、日曜日にQ2と同様の従業員からの申し出があった場合には、その従業員に与えなければならない休暇日数は何日間でしょうか?

A3 公休日である土曜日、日曜日は法定休暇日と違い、規定上、会社は従業員に対して補充休暇を与えることが可能です。すなわち、もともと会社が代休を手配することが可能なわけですから、休暇支給日数も、200%に対応する2日間ではなく、1日の休暇を与えればよいということになります。

Q4 秘密保持契約を締結したいと考えていますが、社員全員と無期限の秘密保持契約を締結するということは可能ですか?また、秘密保持契約に違反した場合に違約金を設定したいと考えていますが、可能でしょうか?

A4 秘密保持契約に関しては、競業制限規定と違い、役職の制限、期限の制限はありません。従って、どの従業員とも無期限の秘密保持契約を結ぶことができます。また、違約金の設定金額についても規定はありません。従って、契約違反の場合に固定金額とすることも、例えば「前年度年間給与の何か月分」とすることも可能ということになります。

Q5 従業員から「e-mail」で辞職したい旨の通知がありましたが、労働契約法では「書面での通知」となっています。この辞職通知は認められるのでしょうか?

A5 通知手段に関しては、規定では「書面での通知」と規定されているのみで、特に限定されていません。「書面」に「e-mail」も含まれると理解しても問題はありません。従って、e-mailでの辞職通知も認められるということになります。これは会社から契約解除通知を出す場合も同様、認められるということになります。しかし、会社がe-mailで契約解除通知を出した場合、従業員に「届いてない」などと言い張られては面倒です。従って、就業規則などに「e-mailでの辞職通知は認めない」などと規定し、正式な書面で通知を要求することをお勧めします。

Q6 従業員を懲戒解雇したいのですが、弊社ではまだ就業規則を公布しておりません。この場合、この従業員を解雇することはできるでしょうか?

A6 就業規則を公布していない以上、その就業規則は無効のため、就業規則に基づいて解雇することはできません。しかし、労働契約法に基づいて解雇することは可能です。もっとも、後に争議に発展しないためにも早めに「公布」することをお勧めします。

Q7 出産後3ヶ月の女性従業員の業務パフォーマンスが出産後明らかに落ちたため、職場の異動を行おうと考えています。この異動は認められますか?また、この場合、以前この女性に与えていた職務給を与えず、給与が減ったとしても問題ございませんでしょうか?

A7 その女性従業員が現在従事している業務の遂行能力がない、ということを会社が証明できる場合には、会社が行おうとしている職場異動は認められます[2]。この場合の給与に関しては、原則的には新しい職場の給与体系に基づいて支払われることになり、新しい職場では職務給を与えず、結果として給与が減ったとしても問題ございません。いずれの場合にもリスクを避けるため、この女性従業員の同意を得ておくことをお勧めします。

以上


[1]《財政部、国家税務総局の個人が雇用単位と労働関係を解除する際に取得する一括の補償収入の個人所得税の免除問題に関する通知》(財政[2001]157号)、《国家税務総局の労働契約の解除に伴い個人が取得する経済補償金の個人所得税の徴収問題に関する通知》(国税発[1999]178号)。
[2]《关于职工因岗位变更与企业发生争议等有关问题的复函》第1条。