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[労働契約法] 労働契約法各論 ~労務問題Q&A~

労働契約法が公布されてから、弊社へ多くの質問が寄せられました。今回は、労働契約法が公布・施行されてから労働契約法の運用に関し弊社へ寄せられた質問についてQ&A方式で回答致します。

Q1 2007年度中に就業規則を改定した場合には「公示」する必要はない、という理解は正しいでしょうか?

A1 誤りです。2007年度中に就業規則を改定した場合でも、2008年度に改定した場合でも労働者への「公示」(第4条第4項)義務はあります。2007年度中に就業規則の改定をしても「公示」していない場合にはその就業規則は無効ということになります。
 
Q2 試用期間中でも会社は従業員のために社会保険に加入する必要はありますか?
A2 試用期間も労働契約期間ですので、社会保険への加入義務はあります。社会保険に加入しない場合には、雇用単位は経済補償金を支払わなければならない(法第46条、第38条第1項(1))という不利益を蒙ります。その他、労働行政部門はその雇用単位に対して社会保険の追徴納付と滞納金の支払いを命じることができます。この労働行政部門の雇用単位への権利は、従業員がその会社に在籍しているかどうかに関わらず発生します。
 
Q3 試用期間内に会社の都合で従業員を採用しない場合、経済補償金を支払う必要はありますか?
A3 雇用単位が本採用しない場合に経済補償金を支払う必要がないのは、「採用条件を満たさないこと」(法第39条)という条件に当てはまらなければなりません。そうでない場合、すなわち、会社の都合で採用しない場合には、経済補償金を支払う義務が生じ(法第87条)、この場合には、経済補償金の支払額は労働契約法第47条で定める賠償金額(契約解除または終了前の12ヶ月間の平均賃金)の倍額を支払わなければなりません。
 
Q4 以前の会社(同一グループ会社)の成績を根拠に現在の会社で契約を解除することができますか?
A4 できません。同一グループとはいえ、違う法人のためです。
 
Q5 経済補償金を支払い、契約解除通知書に署名をもらった場合には、その後労働仲裁で会社側に不利な決定が出る可能性はありますか?
A5 契約を解除した理由にもよりますが、第39条、40条、41条[1]を理由に契約を解除した場合には、会社側に不利な決定が出る可能性は否定できません。こういった場合にもっとも良い方法は第36条を理由に合意解除し、「労働契約合意解除協議書」を作成し、これに署名をもらうことです。この場合には、双方で合意の結果、解除したことになるため、その後の労働仲裁で当該解除が違法かどうかは問題にならないからです。
 
Q6 賞与の支払時に在籍していない従業員に対してもその対象期間に応じた賞与を支払う必要はありますか?
A6 この点に関する規定はございません。従って、どのように支払うかは会社が決定することができます。もし、賞与の支払基準に関し内部規定がない場合には、その労働者の当該雇用単位での在籍期間に応じて支払うのが最も問題が生じない方法といえます。今後、就業規則などにこの点を盛り込む場合には、「支給日に在籍する者に限り支給する」、「賞与支給日に在籍しない場合には、以前の分に応じた賞与を享受することはできない」などの規定をおき、対処されるのが望ましいです。
 
Q7 労働契約法第42条第4号の「妊娠期間、出産期間、授乳期間」に法定休暇日、公休日を含んでいても構いませんか?
A7 構いません。例えば、出産期間は通常分娩で90日と規定されていますが、この期間に法定休暇日、公休日を含んでいても合計で90日間の休暇を与えれば十分です。
 
Q8 試用期間中に、妊娠している女性従業員を「採用条件を満たさないこと」(第39条第1号)を理由に契約解除することは可能ですか?
A8 可能です。妊娠期間中の女性に対する雇用単位の解除が制限される場合は、第40条、第41条の場合についてのみです。雇用単位の解除制限事由が規定されている第42条に「試用期間において採用条件を満たさないことが証明されたとき」(法第39条)が含まれていないため、妊娠している女性従業員を解除することは可能です。
 
Q9 弊社は住宅積立金を従業員のために積み立てておりませんが、問題ありませんか?
A9 住宅積立金は法で積立が強制されております。従って、住宅積立金を積み立てていない場合には、違法ということになります。しかし、現在のところ、社会保険に比べ政府部門が厳格に介入していないため、大きな問題になっていないだけです。
 
Q10 弊社就業規則には第1年目に10日間の有給休暇を与えると規定しています。従業員が有給休暇10日間すべてを消化しなかった場合には、未消化有給休暇の300%での買取義務は10日間でしょうか、それとも法定休暇分である5日間でしょうか。
A10 2008年1月1日に施行された《従業員年次有給休暇条例》(职工带薪年休假条列)では、従業員の未消化分の有給休暇につき、「雇用単位は従業員の日収の300%の賃金を支払わなければならない」(第5条第3項)と規定されています。しかし、現段階でこの有給休暇条例をどのように運用するかに関し、詳細な規定は出されていません。従って、就業規則で規定している10日間分を買い取らなければならないという必然性はなく、当面は、法定有給休暇日数[2]の5日間分を買い取る、という運用をされるとよいと思います。
 
11 2007年度分の未消化有給休暇を買取る必要はあるのでしょうか。
11 この点に関しても、どのように運用すべきか規定はございません。従って、現段階で過年度分の未消化有給休暇分を300%で買取らなくても違法とはいえません。
 
12 法定休暇日[3]が変更されましたが、例えば今年の春節は2月6日から12日までですが、この7日間について300%の支払いが必要になるのでしょうか?
12 300%の給与補償は法定休日に関してのみ必要になりますので、今年の春節の場合には、2月6日、7日、8日に出勤させた場合のみ300%の賃金支払いが必要になります。


[1]39条は雇用単位の懲戒解雇による契約解除。第40条は従業員の疾病・業務外での負傷・能力不足・契約締結時とは異なる客観的な重大な変化の発生による契約解除。第41条は人員削減による契約解除が規定されています。
[2]2008年1月1日、労働契約法の施行にあわせて《従業員年次有給休暇条例》(职工带薪年休假条列)が施行されました。その中で、法定有給休暇付与日数は次のように規定されました。1年以上10年未満の従業員は5日間、10年以上20年未満の従業員は10日間、20年以上の従業員は15日間の年次有給休暇を享受することができる。
 
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