国際会計税務・相続

[MR] 税務上の「住所」をめぐる最近の判例 その2

本レポート第一回で、武富士ファミリー贈与税の控訴審判決(日本国内に住所を認め課税処分)について取り上げましたが、

住所の判定を争点とする別の類似事案において、結論の異なる興味深い判決もでていますので紹介します。
 
これは、シンガポールに居住する日本人A氏が、香港において日本法人株式を譲渡し、
「日本国内に住所を有していない」ので納税義務がないものとして申告をしていなかったところ、
国税当局から「住所あり」として追徴処分を受けていたもので、
第一審につづき第二審(東京高裁、08年2月28日)でもA氏サイドの主張を支持し課税処分を取り消しました。
 
判決では、「住所」「生活の本拠」の一般的な判断基準として、以下のような客観的事実:
 ①住居(A氏は日本出国後、国内には何ら拠点らしきものをもたずに来日のたびに異なるホテルを利用していた)
 ②職業(シンガポールで株取引、日本国内では職業を有していない)
 ③親族(日本に生計を一にする家族や親族を有していない)
 ④資産(日本の預金や不動産は国外から管理可能なレベル)
等を総合的に判定するのが相当として、
A氏については株式譲渡期日当時、日本国内に住所を有していたとは認めることはできないとしています。
 
武富士ケースと異なり、住所の有無の判断にあたって、
「主観的な居住意思」や「租税回避の目的」の位置づけが後退している点は注目されるところです。