国際会計税務・相続

[クロスボーダー’s TAX] 第13回 日本本社からの質問

クロスボーダー’s TAX ~港・中・日の個人所得税を解説~

第13回 日本本社からの質問

先日、東京で開催されたセミナー 「中国・香港進出成功の秘訣」(香港特別行政区政府投資推進局後援)で講師をさせて頂きましたが、そこで個人所得税に関する質問も多数受け付けました。や はり出向元としての日本本社サイドからみた疑問や案件が多かったのですが、香港中国に勤務されている方にも参考になると思いますので、今回は、そのうち代 表的なものについてQ&Aとしてご紹介致します。

Q1.中国の現地法人への出向者に対しては、日本親会社からも給与の一部を日本で支給したいと考えていますが、日本の親会社ではその給与分は損金処理が可能でしょうか。

《A1》 個人所得税の観点からみると、給与がどこで支払われるかにかかわらず、勤務している地で税金を納める必要があるということは、これまでも説明してきたとお りです。一方、支給する日本本社での法人税上の取扱いですが、結論からいうと合理的な理由と金額の範囲で損金参入が認められています(法人税法基本通達 9-2-35)。この通達では、損金処理が認められる前提として、出向元法人が出向先との給与条件の較差を補てんするために支給した給与とされており、例 示として次のケースを挙げています。

  • 出向先が経営不振等で賞与を支給できないため、出向元が代わりに支給する場合
  • 出向先が海外にあり、出向元が留守宅手当てを支給する場合

したがって、留守宅手当ての範囲を超えるような金額であったり、出向先法人が十分な利益を出している場合には、現地法人に付け替える必要があるといえるでしょう。

Q2. 数年前に香港法人を設立しました。日本法人からの出資だと問題になるという当時の設立業者のアドバイスで、社長個人名義での出資としました。ところが、今回、税務署から「タックスヘイブン対策税制」で指摘を受けています。個人の出資でも問題となりますか。

《A2》 タックスヘイブン対策税制は、租税特別措置法にて規定されていますが、その納税義務者には、日本の法人のみならず日本の居住者である個人も該当します。こ の税制が適用されると、一般には香港子会社の留保所得が日本の親会社の所得に合算されることになりますが、個人出資の本ケースでは、社長個人の所得に合算 されて、雑所得扱いで所得税や住民税が課税されます。
この税制は複雑な規定となっていますので、香港法人を設立する際には、安易に考えずに、日本の国際税務専門家のアドバイスを受けることが望まれます。

Q3. 中国に工場をもっていますが、その技術支援のために日本本社のスタッフもかなりの日数中国に出張に行きます。ちょうど中国で免税となる年間183日前後になっていますが、正確な日数のカウントの方法を教えてください。

《A3》今年7月に公布された中国非居住者に関する通達(国税発〔2004〕97号) にて、カウントの方法が明確にされています。まず「納税義務を判定」する際の滞在日数の計算方法ですが、出入国日の当日は中国での滞在を1日としてカウン トします。従来は、入国日をカウントして出国日はカウントしないやり方が一般的でしたので留意してください。次に実際に「税金を計算」する際の日数のカウ ント方法は、出入国日の当日をそれぞれ半日として中国での滞在日数を算出します。
したがって、質問の免税基準に該当するかどうかの判定にあたっては、前者の方法である出国日も入国日も1日としてカウントしなければなりません。

Q4. 年内に中国駐在員の交替を予定しています。新たな赴任者と日本への帰国者の住民税の取扱いはどうなりますか。

《A4》住民税はその年の1月1日現在で日本国内にある住所において課税され、対象となる所得は、前年の1月1日から12月31日までの1年間となります。
年内に交替ということですので、新たに赴任される方は、来年1月1日現在で日本に住所がありませんので来年から帰国年までは課税されません(給与所得のみの場合)。帰国される方は、今年分は課税されずに来年より納税義務が生じます。

以上
文・中小田聖一(NAC代表)