香港 お知らせ
[広東Whenever] 日系企業が香港地区を活用するメリットとは…?
日系企業が香港地区を活用するメリットとは…?
「香港のよさは、数字では表せません」
実務のスムーズさと大陸との関係性が魅力
ミズノコンサルタンシーホールディングス
代表取締役社長 水野真澄 氏
香港地区を拠点に華南、さらに現在では華東でもビジネスコンサルティングを手がける水野真澄氏。進出日系企業の「バイブル」となる多くの著作を持つことでも名高い。今秋、丸紅から独立、新会社を立ち上げ、さらに精力的に活動する同氏に、ずばり、日系企業にとっての香港地区の活用法をうかがった。
—日系企業にとって、香港地区を活用するメリットは?
水野 実はこの質問を、この1週間で日系企業の方から何度も聞かれました。それだけ、注目されているということなのだといえます。
04年末に中国国内で外資メーカー100%投資の販売会社設立が認められる前には、多くのメーカーが香港地区に販社を設立、ここから華南地区を統括していました。
しかし、04年12月から大陸内での外資メーカー独資の販社設立が認められたため、普通に考えれば、当然、香港地区の法人の商売はなくなってしまいますよね。
でも、ここで興味深いのが、多くの企業の方が「香港地区の法人もこのまま残したい」と強く考えられていることなのです。つまり、やはりそれだけこの地でのビジネスに魅力を感じられている、ということの現れだといえます。
香港地区といえば、一般的に税務のメリットが大きいと期待しますが、実は独立起業し、香港地区に納税拠点を置くのではなく、日本本社から出資した持ち株会社を置き、そこから中国現地法人へ投資するということであれば、メリットはあまりないんです。これは、日本のタックスヘブン対策税制で、香港持ち株会社から出資した中国現法の利益に対して「みなし課税」がしっかりかけられてしまうからです。
では、香港地区のメリットはなくなってしまったか、というとそんなことはまったくないのは、先に述べたように多くの企業の方が「香港法人を残したい」と思われていることでも明らかですよね。
実は香港地区の良さというのは、具体的な数字で出てくるもの、というよりも、この地で実務をやることで出てくるものが大きいと思うんです。
—実務で感じるメリットとは?
水野 あらゆる制度や金融、そしてインフラなど、ビジネスに関するあらゆる事柄が、香港地区はある意味日本以上に効率よくできています。
例えば、会社設立。私も今回独立し、香港地区で会社を作ってみてつくづく実感したのですが、大陸であれば2ヶ月以上かかる会社設立が、2週間ほどでできてしまうのです。さらに、既存の会社を買い取るかたちを採れば、1週間ですべての手続きが終わります(この会社設立はNACで対応しました)。通信などインフラサービス設置の速度・質ともにとても優れていて、私のように「とにかく早く商売を始めたい」という人には、とてもありがたいところです。
その他、外貨管理もなく、銀行も便利で送金も自由…などなど、実務面でものすごくスムーズに物事が運びます。日本企業はどうしても係数でメリットを見がちですが、こうした日常手続きが半分以下の手間ですむというメリットは、ひいては効率よい経営につながってくるといえるでしょう。
—華南の日系企業にとっての香港活用法は?
水野 新しいビジネスを始めるにあたって、香港地区を足がかりにするのは非常に有効です。
現在、中国の状況も大きく変っており、この1、2年はベトナムやインドネシアなどの「プラスワン」拠点の設立が注目を集めていますね。こうしたプラスワン拠点と中国を結ぶためのアクセス拠点として、香港地区はインフラと地の利などからみても非常に優れています。
例えば、広州の現地法人からベトナムへ直接投資をするのはとても難しいですが、香港から広州、ベトナムそれぞれ投資する形態をとれば、非常にスムーズ。大陸内では難しい出資比率の変更もやりやすく、小回りのきくビジネス展開が可能です。
また、実は税制でも香港地区の現法を活用する魅力はあるのです。
08年1月の中国企業所得税の改定後、以前は無税だった配当課税に関する源泉徴収が10%かかるようになりました。しかし、中国大陸と香港地区には06年に租税条約が結ばれ、同税率は5%になっています。ですから、中国でプロジェクトを動かし、会社は香港地区、とすればこの5%差のメリットを享受できます。
台湾企業などはよく、ケイマンやBVIなどのタックスヘイブン経由で中国に投資を行っています。
これらの国は法人税が課税されず、一方、香港地区は16.5%の事業所得税率となりますが、香港地区は配当所得に対しては課税されないこと、さらに、配当に関する源泉徴収も5%に軽減されることから、実は香港地区の活用が有利な点が多いのです。
—今後もこうした香港地区のメリットは続きますか?
水野 例えば税制上のこうした動きは、中国政府の香港地区のメリットを守る現れであると考えられます。
「香港地区は、制度的に特殊な環境にある中国」です。私は07年に上海の外高橋保税区から年間優秀コンサルタントに選ばれましたが、国内の規制が緩和されるなかで、こうした保税区の存在意義もかわってきており、今後は為替管理の自由化など、さらに香港地区に近い位置づけが求められているようです。
こうしたなかで、中国政府はこれだけ自由な経済活動ができる香港地区にCEPAなどの優遇策を打ち出すことで、「実験」を試みている、という見方もできます。この実験がうまくいくと、2年ぐらいで国内でも外高橋などでその考え方が採用される、などという動きが、今後も進むでしょう。
そうした意味で、香港地区をしっかりウオッチしていくことは、これからの中国の方向性を読むのに欠かせませんし、香港地区のメリットが失われることはないのだと思います。
水野真澄 氏
ミズノコンサルタンシーホールディングス
中国ビジネスコンサルタントの水野真澄氏が9月に設立したミズノコンサルタンシーホールディングスは、日本、香港地区、中国の公認会計士を有する「NAC Global」や総合通関・物流企業の「EH」などと提携、コンサルタントだけでなく実務のアウトソーシングまで請け負う体制で日系企業の中国ビジネスをサポートする。
住所:Suite 2408, Tower2, Lippo Centre, Tower2, 89 Queensway, Hong Kong TEL:+852-2522-0078 HP:http://www.mizuno-ch.com
(広東Whenever 2008年12月号)
