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[ジェトロ広州ニューズレター] 中国の原価管理と日系企業に頻出する問題点
中国の原価管理と日系企業に頻出する問題点
深センナックマイツコンサルティング
2007年5月24日
中国では日本の『原価計算基準』のような原価計算に関する基準はありません。米国や日本の原価計算方法を参考にしながら、一般的な方法を採用しているのが現状のようです。
ですから、会計や税務のように中国特有の事情が多い分野に比べて、日本と共通のシステム導入や標準化をしやすい面があります。もっとも管理人員の不足によるものか、中国の日系工場は全体的に見てまだ遅れており、原価計算の導入に着手したばかり、もしくは検討中といった段階の工場が多いように見受けられます。
原価計算を正確にできていない原因として、基礎準備作業が整っていないことがあります。特に在庫管理は基礎データを収集するための重要なポイントですが、多くの工場で問題をかかえている点でもあります。まずは以下のポイントに注意して在庫管理を見直してみてはいかがでしょうか。
① 在庫の受取・払出・在庫明細帳を作成する
「受取・払出・在庫明細帳」とは中国語で「存货进销存明细账」といい、材料・仕掛品・製品すべてに対して作成すべき、在庫を管理するための表です。在庫管理担当者は在庫の移動があるごとに、この明細表に記入して実物と常に一致させる必要があります。
【受取・払出・在庫明細帳の例】
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日付 |
名称 |
期首在庫 |
当期購入 |
当期払出 |
期末在庫 |
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07/**/01 |
AA |
単価×数量=金額 |
単価×数量=金額 |
– |
単価×数量=金額 |
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07/**/10 |
AA |
単価×数量=金額 |
– |
単価×数量=金額 |
単価×数量=金額 |
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まずは在庫管理担当者を決めて在庫管理の責任を持たせます。そして購買部門の発行した仕入伝票と入庫した財貨の量の一致を確認し、入庫伝票をもとにして購買部門に連絡して支払処理、財務部門に連絡して会計処理をそれぞれ行うなど、購買部門・在庫管理部門・財務部門の間の連携がスムーズにいくように社内的に業務フローを整えることが必要です。
このとき特に保税材料と一般材料の両方を扱っている工場であれば、倉庫をそれぞれ区分し受取・払出・在庫明細帳を別々に管理するなど、保税材料が中国国内に流出してしまわないよう厳しく管理することが求められます。
定期的な棚卸を、可能であれば毎月、それに加えて四半期・半年・年度末ごとに行います。在庫管理担当者とともに財務担当者を同席させて客観的にチェックすることが必要です。
財務担当者と在庫管理担当者の意思疎通が充分にいかず、月次決算の帳簿金額が実際の在庫金額と一致しないことがよく見られますが、両者のコミュニケーションをよくするためにも棚卸の作業は非常に重要です。
在庫管理が充分にできて帳簿の数値が実態を確実に反映できるようになれば、原価計算に必要な準備は整ったことになります。
しかし原価計算を導入すると言っても、工場の管理上のニーズとそれにかけられるコストを勘案して、最適な方針を決定するのがベストです。そこで下記に大きく3つの段階に分けて原価計算のレベルを分類してみました。
上記「①会計基準に沿った期間損益計算」を目的とする原価計算レベルは、とりあえず会計監査や税務申告をクリアーすればよい、といったニーズに合致するものです。中国に進出して間もない企業では、間接業務にコストを割く余裕がないことが通常であるため、法制度に合致する最低限の会計・原価計算を当面採用することは致し方のないことです。
生産が軌道に乗り出すと「②製品種別採算性評価」を目的とする原価計算レベルのニーズが生じます。
貴社にて生産している製品が、1単位当たりどのくらいのコストでできているのか、売価を下げるとすればどの程度まで下げることができるのか、という情報を製品種類別に集計・把握することが目的になります。このレベルになりますと、本格的な原価計算制度を構築する必要が生じます。
最後の「③部門別業績評価」を目的とする原価計算レベルは、日本でも上場企業等で取り入れられているレベルです。日本親会社の綿密な原価計算・管理会計レベルを中国現地法人においても導入しようとする事例も見受けられますが、中国においては未だ浸透していないレベルであるため、なかなか困難のようです。
【原価計算レベルの3区分】
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目的 |
①会計基準に沿った期間損益計算 |
②製品種別採算性評価 |
③部門別業績評価 |
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内容 |
・月次及び、年度における適切な損益計算、課税所得計算に資することを原価計算の目的とする | ・製品種類ごとの売上、売上原価、粗利益を算定することによって、製品種類ごとの採算性を明らかにすることを原価計算の目的とする | ・原価又は利益の目標を設定し、目標と実績の乖離度合い及び乖離の原因を明確にすることを原価計算の目的とする
・目標と実績の乖離原因によって、各部門責任者の業績評価を行う |
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求められる要件 |
・各原価要素データの適切な把握、 計上 | ・原価計算単位(製品種類別、部門別)
の設定 ・直接費と間接費の分化 ・原価計算単位ごとの直接費の把握方法の設定 ・実態に即した間接費配賦基準の設定 |
・責任体系と組織体系の整合化
・コストセンター、プロフィットセンターごとの原価 計算ロジック確立 ・予算から演繹される標準原価設定 ・原価差額の分析体制の構築 ・業績評価指標の確立 ・人事評価体系との整合化 ・業績評価制度に関する従業員の合意 |
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期待される効果 |
・財務会計上の期間損益計算の 適正化
・課税所得の適正計算 |
・製品種類ごとの採算性把握
・取引先との仕入価格交渉、販売価格交渉に際しての基礎データ提供 ・製品種類ごとの生産計画、販売計画策定に際しての基礎データ提供 |
・目標原価、目標利益遵守に関する従業員の意識向上
・生産活動の効率性の可視化 ・経営戦略策定に際しての基礎データ提供 ・従業員の合意に基づく人事評価体系の確立 |
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負担 |
低 |
中 |
高 |
方針が決まりましたら、具体的に原価計算の方法を決めていきます。以下では特に基本的な原価計算に必要な方法を、中国での呼称とともに見てみたいと思います。
材料を消費したとき、中国では「永続盤存制」と「実地盤存制」の2種類の方法のどちらかで払出計算を行いますが、一般的には「永続盤存制」を採用することが奨励されています。同じ材料を複数の製品で使用する場合、製品ごとの消費量が把握でき、正確な原価計算が可能となるからです。
「永続盤存制」を採用した場合、先入先出法・後入先出法・平均法・加重平均法などの方法からひとつを選択して払出金額を決定します。日本と全く同様です。
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実地盤存制 |
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| 内容 | 入出庫のつど記録を行い、記録された払出数量をもって消費数量とする方法。 | 月末に実地棚卸を行い、月初棚卸数量と当月購入数量の合計から月末実地棚卸数量を差引いた数量を払出したものとみなして消費数量とする方法 |
| メリット | 製品ごとの払出数量を正確に記録できる。 | 計算が簡単。 |
| デメリット | 記録に手間がかかる。 | 製品ごとの払出数量を正確に把握できず、また減損を把握できない。 |
| 日本での呼称 |
継続記録法 |
棚卸計算法 |
中国の原価計算における標準的な配賦方法として、品種法、工程法(分歩法)、ロット法(分批法)の3つがあります。呼び名は違いますが、日本の原価計算方法と変わりありません。それぞれ自社の生産形態に適した方法を採用します。
【3種類の費用配賦方法】
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品種法 |
工程法(分歩法) |
ロット法(分批法) |
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| 適合する形態 |
少品種多量、単一工程 |
少品種多量、複数工程 |
多品種少量 |
| 日本での呼称 |
単純総合原価計算 |
工程別総合原価計算 |
個別原価計算 |
「製品種別採算性評価」をより厳密にすすめていきたい場合、実際原価法を基礎として、中国でも「標準原価法」や「作業原価法」を適用することが可能です。
もっとも標準原価計算を行うには、標準消費量、標準価格、標準作業時間などを細かく定めていかなければならず、管理コストがメリットに見合わない恐れがあります。そうした場合に簡便的な方法として「目標原価法」を適用することが考えられます。
「目標原価法」は標準原価法が下からの積み上げであるのに対し、製品の市場価格から目標利益を控除したものを目標原価とし、各費用にブレークダウンしていく方法です。
【原価計算の種類】
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実際原価法 |
標準原価法 |
目標原価法 |
作業原価法 |
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原価の定義 |
実際にかかった材料費、労務費、経費に基づいて算出した原価 | 材料消費量、作業量、間接費用にそれぞれ標準を定めて合わせたものを標準原価とする | 市場価格から目標利益を控除したものを目標原価とする | 直接労務費と製造間接費を作業の種類に応じて配賦して計算した原価 |
| 日本での呼称 |
実際原価計算 |
標準原価計算 |
(簡易的な) 原価企画 |
活動基準原価計算(ABC) |
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負担 |
低 |
高 |
中 |
高 |